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アランと闇と光の救世主  作者: 水鳥 いつき


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第17章 憎悪

人間王国第二の都市は阿鼻叫喚の有様だった。  

アルコが戦わないと判断したエヴァンは後方に留めていた魔王軍をさらに突入させた。人間側もゴーレムによって下がっていた軍がなんとか引き返し激しい戦いが起こった。戦場になった街の民衆はその中で次々と犠牲になっていった。


燃えさかる街を背にアルコはエヴァンと対峙し戦いが始まる。アランは街を救いに行くか迷って動けず、ただ二人の戦いを見守るだけだった。魔将軍エヴァンがアルコを睨みつける。


◇


「魔少佐ダニエル……聞こえるか? 私はこれからアルコに戦いを挑む。どうやらアルコは人間に味方する気がないようだ、私が負けるようなことがあったら後は頼んだ」


「エヴァン将軍。 わかった、健闘を祈る」


南方面で軍を率いているダニエルが応えた。


戦いの前に私は最後の説得を試みる。私の指輪が黒く輝いた。


「アルコよ、我々の王となり人間を滅ぼさないか?魔族の星を作ろう、我々の仲間になれ、そうすれば寿命を伸ばす方法も見つかるかもしれない。私がお前を殺す必要も無くなるのだ」


「僕はどっちの味方にもならないよ。でも魔族だけになっちゃうとアランが生きづらいからダメだよ。僕は頼まれてゴーレムを倒しに来たんだ、全部倒したから帰るよ」


「アルコよ、お前の選択肢は仲間になるか、今ここで死ぬかだ。そこの従者が大事なら消してやろう」


私は無数の黒い剣を魔法で作り出し、奴の従者に一斉に襲わせた。従者がアテナ・シールドを出し、アルコもアスタロト・シールドを出して従者を守った。


「ゴーレムを倒したから、早く帰ってローゼのお揃いのパジャマを作りたいんだ。急がないと……ローゼをびっくりさせたいんだ、帰ってくる前に完成させなきゃ。ショウゴも手伝ってくれるって言ってた」


「アルコ! そのショウゴさんが危ないよ!」奴の従者が叫ぶ。


アルコが街へ振り向くと、魔軍隊アリに囲まれた傷だらけの一人の騎士に目を向け、奴が手をかざし、「フェニックス・ブレイズ」と叫ぶと数十羽の光の不死鳥がその騎士の周りの魔軍隊アリやゴブリンを倒してゆく。そして、その不死鳥は騎士の周りを飛び交い守り始めた。


私はその隙に、二体の闇の骸骨騎士を召喚しアルコに襲いかからせた。

奴は剣を抜き骸骨騎士の剣を受け止める。奴の剣技は素晴らしく、あの骸骨騎士二人を相手に全く怯むことなく戦っている。剣と剣が弾ける金属音が激しく鳴ると、骸骨騎士が光の軌跡にバラバラにされる。 次に、私は五匹の魔黒虎を召喚しケルベロスと一緒に一斉に噛み付かせた。今度は、奴の剣が赤く燃え上がり、「ゼノン・ドラゴン斬り」と叫ぶと六匹の燃えさかる赤と光のドラゴンを剣からはなち、ケルベロスと魔黒虎は簡単に噛み殺されてしまった。


やはり奴は強すぎる。召喚魔法で私もだいぶ消耗してきた、やはり最上位の邪神ヨグソードとクトゥを召喚しよう、制御出来ないかもしれないが奴を倒すにはこれしかない。

地面にから黒い煙が立ち上り、嫌な匂いがすると二体の邪神が現れた。私は腕を傷つけて血を出すと呪文を唱えアルコに向かって投げつける、飛び散った血の一部が奴にかかった、上手く行った。邪神はアルコに向かって行った。

奴は剣を振り下ろし光の軌跡でヨグソードを切り刻むが、全てすり抜けた。ヨグソードは煙のような体なので切ることが出来ない。クトゥが奴に取り憑くと無数のミミズのような虫が全身に噛み付いた。

ヨグソードは沢山の紅光線を空中からアルコに向かって発射した。奴に致命的なダメージを与えたようにみえたが、クトゥのミミズが凍りついてバラバラに砕けていった。紅光線は奴の服を焼いたがあまり効いていないようだ。アルコの目が燃えるように赤くなった。

アルコは空中に黒い球体を召喚するとヨグソードとクトゥが吸い込まれた。「サターナ・ファイナル」と叫び声と共に奴の剣が眩い光を放ち球体に突き刺すと爆発し二体の邪神は消え去った。


やはり、私の一か八か命をかけて倒すしかない。残った私のエネルギーを使って、私は黒い巨大ドラゴンに変身する。この魔法は十分しか使えないし、その後は一ヶ月は魔法が使えなくなるが仕方がない。そして、この姿の最高の技、究極火炎砲を撃ち込む。この技を使うと最悪エネルギーを使い果たして死んでしまうかもしれない。だが私が死ぬかアルコが死ぬかやってみよう。


黒い雲を呼び込み、大空に巨大な黒い三本首の龍が飛ぶ。

私は口を大きく開け、残った全てエネルギーを込めて究極火炎砲をアルコに向かって放った。ゴォーと言う物凄い音と共に究極火炎砲が奴を焼き尽くす。

奴がアスタロト・シールドを出すと大きな衝突音がする、奴の背中から飛び出したフェニックス・ブレイズの光の不死鳥が私の三本の首に向かって飛んでくる。もう少しで奴を焼き尽くすと思った時、私の三本の首は全て切り落とされてしまった。さらに光の不死鳥は私の胴体を切り刻む。私は地面に墜落し、元の体に戻った。


動けない私の前に奴が立っている。


「アルコ……人間は強すぎるお前を仲間と認めないぞ。早く正気になれ……」


「よいしょ」と言葉が聞こえたとき、私は石にされてしまった。


◇


魔将軍エヴァンがアルコに倒され、激しい戦いの後、第二の都市はなんとか人間軍の勝利になった。戦いの最中、アルコはお菓子を食べながら見ていただけで、たまに僕たちに向かってくるゴブリンや魔軍隊アリだけを倒していた。なので、兵士や街の人たちは複雑な顔をしていた。

ショウゴさんは傷だらけで病院へ運ばれてしまったのでアルコのパジャマ作りを手伝うことが出来ず、アルコは泣いていた。仕方がないので僕たちはゲームもやめて何とか作り上げた。


そしてやはり僕の首から下げた護符の黒い宝石が小さな黒い光を放ち始めた。



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