第16章 反撃
ある日女勇者リベットが王の前に現れ隕石が落ちるので全ての魔法使いを魔王城に派遣して欲しいと言った。
王は隕石が落ちることを疑い要求を拒否した。
まさにリベットが予言した日に魔王帝国に向かって巨大な燃える月のような炎の塊が落ちて行くのを人々は見た。燃える月は空中で一度大爆発を起こした後、魔王城の辺りへ落ちて行き再び大爆発が起き、魔王帝国は海に沈んだ。
王はあれが勇者リベットの語った隕石であり、人間が協力しなかったために魔族帝国に落ちてしまったことを恥じ、魔族を滅ぼし我ら歴史家の口を封じることで自身の落ち度を隠蔽した。
私は歴史家として真実をここに記す。いつか真実が明らかになる日を望む。私自身も偽りの歴史書を出版した罪を負いたい。
宮廷歴史家で「リベットの白い本」の著者の秘密の日記より
◇
騎士団長と息子のショウゴさんがアランとアルコの住む屋敷に訪れた。王都がゴーレムによって破壊され陥落したのだった。騎士団長はアルコにゴーレムと戦って欲しいとお願いに来た。
「嫌だよ、僕は誰とも戦わないよ」
アルコはキッパリと断った。
「あのゴーレムが魔族軍に現れてから沢山の人が犠牲になってるんだ。助けて欲しい」
ショウゴさんも悲痛な訴えをアルコにする。
「ゴーレムは強力すぎる……人類は全滅してしまうかもしれない」
騎士団長も疲れ切った顔をしていた。
「それなら、あのゴーレムだけでも倒してくれないか。後は僕たちの仕事だ。街の人々が沢山犠牲になっているんだ。それに僕はアルコくんの必殺技を見たいよ」
アルコの目が光った。
「何、必殺技って?」僕は目を丸くした。
「ショウゴが魔法や技に名前をつけるとカッコいいって言ってたから二人で名前を考えたんだ。アランの光の盾は『アテナ・シールド』って言うんだよ」
中二病の僕は少しカッコいいと思ってしまった。
「アルコの技は何て言うの?」
アルコは得意気に、
「光の不死鳥は『フェニックス・ブレイズ』、光の槍は『ゼウス・ランス』、得意の黒い盾は『アスタロト・シールド』、大技の三又の槍は『ベリアル・トライデント』って言うんだ。ちなみにショウゴの持っている槍は『愛と栄光の輝きに満ちた、ビッグバン・スーパーノバァ・ゴッドのダイヤモンド・ゴールドからのウルトラ究極槍』って名前だよ。カッコいいね」
「さすがアルコくんの必殺技だ、カッコいいね」ショウゴさんが目を輝かせた。僕は呆れて苦笑いをしたけど、
他の必殺技の名前も気になってしまった。
(せっかくの技の名前を叫びたいかも知れないな……)
アルコは何かを考えているようだ、
「それじゃ、ゴーレムは倒すからそれが終わったらローゼをここに呼ぶよ。僕は結婚したんだ」
「えっ! あ、あの女魔族と! 五魔星の一人の!?」
騎士団長とショウゴさんが驚愕する。僕はなんと言って良いかわからず下を向いた。
「わ、わかった……今はアルコ殿にゴーレムを倒してもらわなければどうにもならない。ここで一緒に住むが良い、だがあの女魔族は我々を恨んでいるのではないか?」
「ローゼは僕と一緒に住むんだ、約束したから大丈夫だよ」
「それじゃ約束の」とアルコがショウゴさんに向かって一歩踏み出したので、僕は急いで割って入った。
「アルコ! い、急いで行こう。街の人たちが大変だから」
◇
王都が陥落して王様はどこかへ逃亡した。
エヴァン魔将軍はゴーレムを引き連れて、人間王国第二の街を攻撃するべく進行していた。三十体のゴーレムはマグマの炎を口から吐きながら進んで行く。ついに街が見えてくると最初に辿り着いたゴーレムが城壁を壊し始めた、エヴァンが不敵に笑う。
「圧倒的じゃないか我が軍は」
私ーー魔将軍エヴァンはケルベロスに乗ってゴーレムを魔法で操っている。城壁の外に陣取る人間軍は簡単に蹴散らされてしまい、街の反対側へ逃げていった。先鋒の二体のゴーレムがついに城壁を破壊しその隙間から街が見えた。ゴブリンが壊された壁の間に向かって行くのが見える。
私はさらに魔軍隊アリを街の破壊に投入する。私の号令で一斉に魔軍隊アリが街の人々に襲いかかるのだ。魔軍隊アリを召喚するための呪文を唱えている最中に、
「フェニックス・ブレイズ!」
技の名前の叫び声が聞こえると、城壁を破壊したゴーレム二体の胴体を黄金の不死鳥が突き抜けるのを目撃した。ゴーレム二体の身体は切り裂かれ粉々になってゆく。こんなことができるのは奴しかいない。
粉々になったゴーレムの後ろにアルコが立っている。
奴が大きく手を横に振り、
「ベルゼバブ・ツイスター!」と叫ぶと、
黒い竜巻が巻き上がりゴブリンたちが巻き上げられ吹き飛んだ。
私は五体のゴーレムに火炎弾を撃たせた。咆哮を上げ、次々と火炎弾がアルコへ向かって放たれるが、今度は
「アスタロト・シールド!」と奴が作った黒い雷を伴ったシールドに全て止められてしまった。さらに、指を一体のゴーレムへ向けると、
「ルシファー・ブラスター!」と叫び、奴の指から発した真っ赤な螺旋の光を伴った黒いビームが命中するとゴーレムは大爆発を起こした。
「ゴーレム相手には黒い魔法が出るんだ」
アルコが自分の手を見ながら言った。私は急いで魔軍隊アリを召喚した。街を襲わせてアルコにどこを守るのか惑わせるのだ。三百匹程の魔軍隊アリがアルコを超えて街を襲う。驚いたことにアルコは飛び上がると魔軍隊アリを無視して、ルシファー・ブラスターを放ち、次々とゴーレムを破壊して行く、そこら中に爆発の黒煙が上がる。
街では魔軍隊アリが人間を食い殺して行く。人間軍の騎士たちが抵抗するが、所詮三十騎ほどでは多勢に無勢だ。アルコが街を無視するなら、さらに吹き飛ばされたゴブリンにも突入させよう。
アルコはゴーレムを破壊して行くが、第二の都市は地獄のようになって行った。民衆はアルコに助けを求め、泣き叫ぶがアルコは振り向くことなくゴーレムと戦っている。
十体のゴーレムが破壊された。このままでは結果は見えている。残りは二十体、私はゴーレムに合体命令を出す。
十五体のゴーレムが空に舞い、空中で人型に整列すると、巨大な巨人ゴーレムになった。地響きを立てて巨人ゴーレムがアルコに向かって行く。アルコがルシファー・ブラスターを放ち爆発が起きるが流石に巨人ゴーレムは平気だった。巨人ゴーレムは拳を硬く握り振り下ろした。恐るべきことに奴は片手で受け止めた、奴のパンチが巨人ゴーレムを吹き飛ばし尻餅をつかせた、私の額に汗が流れる。
こうなったら、巨人ゴーレムの超マグマ砲を撃つしかない、ここにいる魔軍隊アリやゴブリンごと街も消滅してしまうかもしれないがやるしかない。
巨人ゴーレムの体がカミナリを発して口を大きく開ける。唸り声を上げて物凄いエネルギーのマグマのビームが発射された。奴が剣を抜いて天に向かって構えると、邪悪な黒いオーラを纏った。私は奴の後ろに一瞬、氷の悪魔の顔が見えた気がした。
「鬼神闇氷剣!」と叫んだ後に剣を振り下ろすと、黒い雪の結晶が降ってきたと思ったらマグマ砲は凍りつき、粉々にされ巨人ゴーレムもまた凍りついてしまった。次に奴が作り出した「ゼウス・ランス」と呼んだ無数の光の槍が次々と巨人ゴーレムを刺し貫き、ゴーレムは石の山となった。
炎が上がる街から「助けてぇっ!」と悲鳴が聞こえる。騎士たちはゴブリンと魔軍隊アリにやられてあと十騎ほどになっていた。逃げ惑う人間共は涙を流して逃げ惑っていた。
アルコが悲鳴を聞いて一瞬振り返ったが、結局残ったゴーレムを倒し始めた。闇と光の魔法で残った五体のゴーレムは破壊され、遂に全てのゴーレムが石ころに戻った。
私はケルベロスから降りてアルコとの対決を決意した。




