第14章 黒い宝石
ここは魔族軍の領地内の屋敷。
アーリー軍曹とハーパー魔団長が倒れ、大魔姫ローゼが戦場から姿を消してしまい、魔族軍は人間軍に押され始めていた。魔将軍エヴァンの前に一人の魔忍者杉風が神妙な顔をして立っている。
「エヴァン様、ローゼ様とバボン様はすっかりアルコに夢中になってしまいダメです」
「その昔、魔王様が人間にたぶらかされたと言う噂がある、人間はたぶらかすのが得意だな……」
「ローゼ様は人間に見つからぬようアルコの屋敷に夜忍び込んではゲームをしているようです。チェキを撮ってバボン様と眺めたりアルコのアクスタを作って飾っては二人でキャッキャしています。あれではまるで推し活です。お陰でバボン様は最近化粧を始めて若干若返っているみたいですが」
「呆れるな……バボン様の寿命ももうすぐ尽きるから、ほっといてもよかろう。ローゼ殿がアルコの側にいるのなら、上手く使えばアルコを殺すことが出来るかもしれない。アルコが人間を攻撃したという情報も入っているから、我々に危害を加える気もないみたいだ」
魔将軍エヴァンは鋭い目を光らせて、
「まずは人間軍を倒すのだ」
◇
僕とアルコは人里離れた物凄い田舎へ引っ越すことになった。アルコが暴れたため、王様たちはアルコが危険かもしれないと判断し、王都から遠く離れた田舎のお屋敷に住むことになった。
僕たちが住む場所はショウゴさんや騎士団長の他、ほんの一握りの人しか知らない、僕たちのお世話をしてくれる人も人数を絞っていた。
こっそりローゼには場所を教えたので、氷の雲に乗ってやって来た、新しい屋敷のお世話の人たちはローゼの顔を知らなかったので、僕たちが雇ったアルバイトのメイドと言うことにした。ローゼはメイドのカッコをしていればいつでもお屋敷に来ることが出来た。バボンもたまに顔を出しにやって来たが、体調がすぐれないので滅多に来れなかった。
僕たちは平和に暮らしていたが、人間軍と魔族軍の戦争は激化していた。
◇
魔王城があった場所、所々小さな島のようなものがあるが綺麗な浅い海が広がっている。その魔王城跡の近くの小さな陸地から地下に行ける穴が垂直に掘られていた。
魔将軍エヴァンと杉風はそこから地下深くにある地下洞窟のような広い空間にいる。そこには、巨大で不思議な魔法の機械が作られていた。
「遂に完成した。初代が基礎を作り、二代目が魔力炉を……何百年もの間、誰にも知られることなく、我々はこれを作り続けてきた」
エヴァンが静かに目を見開く、
「そして……俺の代でついに完成した、一千年かけてやっと魔王城を浮上させられる」
エヴァンが呟く。魔王城が沈んでから魔族は魔王城を浮かび上がらせ、その地下に眠る古代の兵器を蘇らせようとしていた。
エヴァンが大きなレバーを引くと、魔法の光が巨大な機械を動かし始めた。
ゴゴゴゴ! と大地を揺るがす轟音が響き渡るとエヴァンは外に出た。
海面が大きく波打つ。そして海の底から、巨大な岩盤がゆっくりと持ち上がっていく。その下から建造物の残骸が、次々と姿を現した。
貝やサンゴに混じって魔王城跡が、一千年ぶりに海上へ姿を現した。
「おお!」 エヴァンと杉風が声を上げる。
海水が引き、古代遺跡のような魔王城の跡は巨大なクレーターのようになっていた。もっとも深い中心部、あの凶隕石ゲロウが落ちたであろう場所の近くに向かって二人は歩いて行く。辺りを見渡すと広い範囲で地面が所々光っているのがわかる。杉風は足元でその小さく光る砂粒を見つけた。それは白く時々虹色に輝く綺麗な不思議な砂粒だった。
「これは、サンゴかな、でもちょっと違う気がする」
杉風が首をひねると、
「これは、おそらくオリハルコンだ。遥か昔、伝説の聖剣というのがあってな、その聖剣はこの物質で作られていたそうだ。人間の勇者が持っていたらしいが、失われていた。おそらくゲロウが落ちた衝撃でバラバラになったに違いない、それほど衝撃は凄まじかったのだろう」
エヴァンが答える
隕石が落ちたであろう場所の近くで、分厚い扉を発見し、魔法で開けると地下に続く道を発見した。どうやら扉に遮られ、内部へ海水は入っていなかったようだ。
二人は地下へどんどん降りて行くと、
「あれだ!」エヴァンが指をさす先に、巨大な魔ゴーレムが三十体ほど、静かに眠っていた。
「これで人間に勝てるな」
エヴァンは静かに笑った。その手の黒い指輪がキラリと光った。
◇
アルコが本を読んでいるところにアランが現れた。
「珍しいね、アルコが本を読んでるなんて」
僕が覗き込むとアルコは歴史の本を読んでいた。
「人間て戦争ばっかしだね」
「うん、なんでだろうね……」
無邪気なだけだったアルコの変化に僕は驚いたけど、その後一緒にお風呂に入ろうと言って来たので安心した。断ったけど……




