第13章 魔王
凶隕石ゲロウ衝突まであとわずか。
魔王の部屋に二人だけ……
「ごめんねバカルくん、私じゃ王様を説得出来なかった……」
女勇者リベットは肩を落とした。
「いいんだ、仕方がないよ。リベットちゃんは良くやったよ」
魔王バカルがリベットを抱きしめる。
「マカラちゃんがアルコを連れて行ってくれて安心だよ。人間と魔族はいつか仲良くできる、アルコはその象徴だ。アルコがいる限り必ずその日は訪れる。だから僕たちで未来を作ろう、この星を無くすわけにはいかない」
「うん、私頑張るね……フィディックちゃんも手伝ってくれるし」
「それじゃあ行こうか! 人間と魔族の大仕事だよ」
「愛してるよ、僕の命が尽きても永遠に」
「私も愛してる……永遠に」
二人が見つめ合う、
「約束のキスよ」
そう言うと、リベットはバカルの唇にキスをした。
「君は約束するとき、いつもキスをする。アルコがママの真似をしてるよ」
バカルが笑うとリベットも恥ずかしそうに微笑んだ。
◇
一千年後に話を戻す。
刑務所からローゼを救出したアランとアルコの前に大魔姫バボンが現れた。
僕の目の前に杉風と歳を取った女の魔族が立っている。アルコは隣でローゼを抱っこしたまま現れた二人を見つめた。僕は光の盾を出す準備をしていた。
「私の名前はバボン。ローゼの母じゃ」
ローゼはアルコの腕の中で気を失ったままだった。バボンはアルコを見ると「おぉ!」と声を上げた。
「に、似ている魔王様に……だがあの女にも……」
どうやら、戦うわけではなさそうなので僕はホッとした。
「血は争えないわけだな、好みは一緒というわけだ。アルコと言ったな、ローゼを返してもらおう」
「嫌だよ、ローゼは僕と一緒に住むんだ」
「ローゼの姿を見ろ。人間の所へ預けたらまたそんな目にあってしまうぞ」
「そんなことはさせないよ」
たしかにローゼを屋敷に連れていくのは危険だと僕は思った。それに、アルコがまたキレて暴れてしまうかもしれない。
「アルコ、一回ローゼはお母さんの所へ返そうよ。多分、お母さんは心配なんだよ」
「ローゼのママは心配なの?」 アルコがバボンに問いかける、
「声までそっくりなんて……まぁ、そんな感じだけど」
「それじゃあ、一度返すけど、ローゼが元気になったら屋敷に連れて来てね」
「まあいいだろう、ローゼがお前を守ってしまったわけがわかるよ」
アルコがバボンの元へローゼを抱いて歩いてゆく。
年老いたバボンがアルコを近くで見ると、やはり魔王と似ていたので頬を赤くしてしまった。
杉風がローゼを受け取り、アルコはバボンのすぐ目の前に立つ。しばらく二人が見つめ合い、静かな時間がしばし流れた。アルコはさらに一歩バボンに近づくと、
「約束だよ」と言って唇にキスをした。バボンが膝から崩れ落ちて気絶しそうになった。
「バボン様!」 杉風が心配する。
「ゆ、夢がかなったみたい……もう死んでもいいかも……」
バボンはしばらく呆然としていたが、我に返ると、
「待たね、魔王様♡……」と言って杉風を連れて氷の雲に乗って飛んでいった。
◇
屋敷に戻るとショウゴさんが来ていた。
王様のお城ではアルコが暴れたので大変な騒ぎになっているらしい。
僕はこれまでの経緯を話すと父の騎士団長様に伝えてくれるとショウゴさんは言った。丸く収まってくれるといいんだけど。しかし、アルコが人間にキレるとは思わなかった、もしアルコが敵になったらと思うと恐ろしかった。
「アラン~! 門番に殴られて怖かったよ~! 一緒に寝ようよ~!」
僕は一緒に寝たが、アルコが寝ぼけて恐ろしい魔法を撃ちまくる夢を見てうなされてしまった。




