11章 恋
女勇者リベットは、女魔法使いフィディックと女僧侶マカラを連れて魔王城を目指し魔王国に入った。
時が経ち、ある日魔王国に大爆発が起き、魔王とその幹部は大半が死に魔王国は海に沈んだ。
人間軍は魔族を打ち、平和を掴んだが魔族の一部は生き残っている。
千二百年のうちに魔族が害をなすとき、救世主が現れ平和を築くだろう。
その救世主はマカラが守るリベットの里にいる
〜 リベットの白い本より
◇
お昼の時間が終わった頃、アルコとアランが住む屋敷の前に再び現れた大魔姫ローゼと杉風。
「ローゼ様、アランとか言うあの従者を殺すのですね」
「ああ。奴は常にアルコ様の近くにいる。引き離さなければ危険だ」
「まずは、アルコを孤立させて倒すのですね」
「毎日、あんなこと、こんなことをしてしまうかもしれない。止めなければ……」
「どうやって引き離しますか? 暗殺は私の得意なところです、アランごときなら簡単に殺せます」
「せっかくここまで来たんだからアルコ様とまずお話をする、ケーキを買って来たから一緒に食べる、出来たらゲームとか一緒にやりたい、やるならその後だ。アランがいなくなったとわかるとアルコ様が騒ぎ出してしまうかも知れないからな。私が合図するまでアランは生かしておけ」
ローゼは再びメイド服に着替えた。
◇
僕とアルコがゲームをしていると、部屋をノックする音が聞こえた。返事をすると、ローゼがケーキと紅茶セットをワゴンに乗せて入って来た。僕はローゼの顔を見るなり慌てて話しかけた、
「初めましてローゼちゃんだよね。僕はアルコの従者でアランです。聞いたらアルコがローゼちゃんにキスをしちゃったって……大丈夫?……アルコは何か約束をするときにキスをしてしまう癖があって……」
僕に言われて、ローゼはアルコとのキスを思い出してしまった……
「ア、アルコ様ったら急にだったから……言ってくれればいつでもどこでも……いやん……」
「えっ!?」
「あっ……だ、大丈夫です。それよりケーキをお持ちしました、召し上がってください」
「わーい! ケーキ大好き! ローゼ大好き!」アルコがはしゃぐ、
「えっ……わ、私のことがす、好きって……アルコ様……そんないきなり……」
「ローゼも一緒に食べよう!」アルコが微笑む。
「は、はい! それでは用意します」
ローゼがワゴンからケーキを持ち机に置こうと歩き出すと絨毯の切れ間に足を取られて転んでしまった。ケーキが宙を飛ぶ。
「きゃっ!」
アルコが素早くキャッチしたが、箱の中のケーキが崩れてしまった。崩れてしまったケーキを見てローゼは泣き出してしまった。
「せっかくアルコ様と食べようと思ったのに……」
「大丈夫だよ、形は悪いけど味は一緒だよ」
僕とアルコは笑顔でローゼを慰めた。
「あ、ありがとう……」
僕たちはケーキを食べ終えた後、楽しくゲームをして過ごした。
天井の隙間から覗く杉風は暗殺の合図がいつまで経っても来ないので悶々としていた。結局、ローゼは合図を出さないまま屋敷から出て来た。杉風が駆け寄る。
「ローゼ様、合図がなかったです」
「奴らに隙はない……こうなったら夜にまた行くしかないな……楽しかった……」
◇
そして夜が訪れた。
杉風とローゼが屋敷の前に現れた。
「ローゼ様、やはりアルコを狙うべきです。ダニエル魔少佐様からアルコを殺す武器を頂きました。従者などかまっている必要はございません」
「アランはいい奴だった。アルコ様と付き合っているわけではないようだから放っておいて良い」
「かしこまりました」
「今夜、決着がついてしまうかも知れないな……」
「はっ! 今夜こそ倒しましょう」
「でも、こんなに早く付き合っていいのかな……いやん」
「えっ!?」
◇
僕とアルコがゲームをしていると、再び、メイド服のローゼが部屋に入って来た。
「あっ! ローゼだ! 一緒にゲームをしようよ! 王様ゲームをしてるんだ、勝ったらアランと一緒に寝ようと思って……」
「ローゼちゃんと王様ゲームはまずいでしょ、ダメだよアルコ」
僕がアルコをたしなめると、
「わ、私は大丈夫です……」ローゼは顔を赤くした。
(アルコ様と一緒に寝れるの……いやん……恥ずかしい……)
「王様の命令は一個だけになったんだ、アランはケチだよね。とりあえず、勝った人が王様で残った二人に命令出来るんだ。さぁやろう!」
アルコが元気よく王様ゲームを始めた。結果はローゼが王様になった。
「ローゼが王様だ。さぁ王様、命令を僕たちにしてね」
ローゼはしばらく悩んでから、やっと命令を決めた。
「アルコ様は私と結婚……」
バタン!とドアの音がローゼのお願いを遮ると、突然ショウゴさんと衛兵さんたちが勢いよく部屋に入って来た。
「アラン殿、アルコ殿。曲者が侵入しております。監視カメラ魔法に何者かが!」
ショウゴさんが天井に槍をつき刺すと、天井がドタドタと走る音が聞こえる。すると杉風が天井から部屋の真ん中に飛び降りた。
「杉風参上!」
煙幕を床に投げつけると煙が部屋に充満する。ショウゴさんたちが怯むと、杉風は分身の術を使った。
笑い声とともに杉風の姿が見えなくなり、やっと煙が晴れてくるとアルコが倒れていた。
アルコの右腕に猛毒と書かれた吹き矢が刺さっていた、アルコが苦悩の表情を浮かべ顔色が紫色になっていった。
「アルコ!」
僕とローゼが慌ててアルコに駆け寄る。
ショウゴさんは何人かの衛兵を置いて杉風を追ってに外へ走った。
アルコの息が荒くなり、咳をすると口から血を吐いた。ローゼの指輪が青く輝いた。
その時、ガシャーンという窓ガラスの割れる音と共にダニエル魔少佐が現れた。
「杉風良くやった、さすがのアルコも毒には勝てまい」
三人の衛兵たちがダニエルに斬りかかると、赤く燃えさかる小さな隕石のようなものが無数に発せられ、衛兵たちは全て気絶した
ダニエルはさらに手の平から無数の燃える火の玉をアルコに向かって発射した。ドンドンドン!と床に倒れているアルコに命中する音が響くたびに、アルコの服が燃え、体が跳ね上がる。歯を食いしばってアルコが起きあがると光の槍をダニエルに向かって投げつけるがダニエルは簡単にかわした、ダニエルがしている赤い指輪が輝く。
アルコが激しく咳こんで、再び血を吐いてうつ伏せに倒れた。
ダニエルが炎の剣を出し、倒れているアルコに切り掛かる。僕は光の楯をアルコを覆うように出してなんとか防いだ。
「人間共が邪魔をするな!」
ダニエルが剣を横に振り抜くと炎の爆発が起き、僕は吹っ飛ばされた。ダニエルは胸の中のポケットから、猛毒の矢を取り出すとアルコの剥き出しになった背中に投げ刺した、刺さったところがみるみる黒く染まってゆく。ダニエルは次々と毒矢を取り出してはアルコの背中に刺してゆく。アルコは抵抗すら出来ない。
「やめろ!」
飛ばされた僕が、ダニエルの石になった腕に飛びつくが投げ飛ばされてしまった。ダニエルが再び炎の玉をアルコに放つ、アルコは無言で全ての攻撃を受けピクピクと痙攣する。
僕はフラフラになりながらも立ち上がり素手でダニエルに向かって行く。呆れた表情のダニエルが炎の剣を構えて「死ね」と叫ぶと、僕は横からローゼに蹴り飛ばされた。
「ローゼちゃん何で!?」僕は叫んだ。
「おお! ローゼ殿、一緒にアルコを殺そう! なかなかしぶといな、さすが魔王様の息子だ」
ふとダニエルが違和感を感じると自分の足が凍りついていた。ローゼはさらに氷の塊を投げつけるとダニエルの石になった腕も凍りつく。
「ローゼ、何を、魔族を裏切るのか!?」
ダニエルが炎の剣を振り上げ何体もの炎の龍がローゼを襲う、ローゼが無数の雪の結晶を空中に出すと炎の龍とぶつかった、炎の龍はたちまち凍りつき雪の結晶が龍を切り裂きバラバラになった。
ローゼが青い光の稲妻をダニエルに放つとダニエルの炎の剣が凍りついた。
「アルコは私が殺す。お前じゃない……去れ!」
「わかった……ローゼよ、お前に任そう……」
ダニエルは飛び去って行った。
(女の考えることは、よくわからん……)
◇
ダニエルが去ってシーンと部屋が静まったがアルコは虫の息だった。呼吸もほとんどしていない、心臓の音が小さくなっている。 顔や体はどす黒く、紫色になっていた。僕とローゼが側に駆け寄る。
「アルコ!」 僕は叫んだ。
「アルコ様! 目を覚まして! 死んではダメです、死なないで」
ローゼが涙を流してアルコに話しかける。アルコは返事をしない。ローゼの指輪が今までになく青く輝いている。
「アラン、何か方法はないの? アルコ様を助けて!」
「ど、どうすればいいんだ……」
僕は何も出来ずアルコを見守るだけだったが、その時、僕の首から下げた護符の緑色の光が強くなった。ふと、魔法のイメージが湧き、僕はアルコに向け手をかざすと、緑色の光がアルコを包み込んだ。
すると、アルコの体から毒が抜けていき顔色が元に戻っていく。解毒の魔法が発動したのだった。
アルコの顔色が元に戻るとやがて意識を取り戻した。
「アルコ!」
「アルコ様!」
アルコが起きあがると、
「ローゼ王様の命令どおり生き返ったよ。アランも王様の命令に答えたね」と笑って言った。
僕とローゼは喜びの涙を流した。




