その63~パフォーマンス試験を終えて~
パフォーマンス試験の翌日。
朝、目が覚めた瞬間、最初に思い出したのは昨日のことだった。
試験が終わったはずなのに、まだどこか現実感がない。
十分寝たけど、体はどっと疲れている。
頭の中で何度も昨日の自分のパフォーマンスやその時の想いが繰り返されている。
——パフォーマンス試験。
歌唱、ダンス、演技。そして自由パフォーマンス。
2週間かけて準備してきた試験が、昨日終わった。
今振り返ってみても、あまり細かいことは覚えていない。
それくらい必死だった。
試験はメンバー全員が個別に行われた。
誰がどんなパフォーマンスをしたのか。
何も知らない。
でも。
だからこそ、自分自身と向き合う時間になった気がする。
自分の試験の時間が近づくにつれて、緊張はどんどん強くなっていった。
ぼくの一つ前は那音くんだった。
レッスンスタジオから出てきた那音くんと、スタジオの前ですれ違った。
いつもの那音くんとは、どこか違った。
いつもより、より真剣で。集中していて。声をかけられる雰囲気じゃなかった。
ぼくもたぶん同じ顔をしていたと思う。
「お疲れ様。どうだった?」
そう聞くこともできた。
でも聞かなかった。
那音くんも何も言わなかった。
試験会場のドアの前で深呼吸をした。
何度目かわからないくらい深呼吸をして。
スタジオへ入った。
そこには審査員の先生たちがいた。
歌唱担当のもも先生。
ダンス担当のSARU先生。
KABA先生。
演技担当の太秦先生。
そして猫太P。
一気に緊張した。
これまで何度もレッスンを受けてきた先生たちなのに。昨日は違った。
見られている。評価される。そう思った。
だけど先生たちは、そんなぼくの様子に気づいていたんだと思う。
なるべく普段のレッスンに近い空気を作ってくれた。
緊張を解そうとしてくれていた。
その優しさが嬉しかった。
でも。緊張は消えなかった。
課題パフォーマンスは歌唱から始まった。
次はダンス。颯太に言われたこと。「守らない」「恐れない」ように踊った。
演技も同じだった。
正解なんてわからない。
だけど、自分なりに考えて、自分なりに感情を乗せた。
終わったときには。正直、自分が何をやったのか、ほとんど覚えていなかった。
そして最後。
自由パフォーマンス。
何をやるか、ずっと考えていた。
最後に選んだのは歌だった。
ぼくが一番やりたかったこと。
一番伝えたかったこと。
それが歌だった。
曲は。ONIGASHIMAの『RISE!』。
何度も聴いた曲。
何度も勇気をもらった曲。
そして。
La♪Ra・RISE!として歩き始めた今だからこそ歌いたかった曲だった。
歌っている最中のことは、あまり覚えていない。
でも。
最後の音を出した瞬間だけは覚えている。
試験が終わってスタジオを出たとき。
張りつめていたものが、一気に抜けた。
頭の中は真っ白だった。
達成感なのか。安心なのか。疲れなのか。
自分でもよくわからない。
そのまま廊下を歩いていると。
次に試験を控える辰煌とすれ違った。
目は合った。
でも。何も言わなかった。
というより。
何も言えなかった。
——でも。
一つだけは言える。
心から辰煌をはじめ他のメンバーが自分の全力を出せることを願った。
ぼく自身は、今持てる力を全部出した。
できたこともあった。できなかったこともきっとあった。
だけど。後悔はない。
パフォーマンス試験が、これから何に影響するのかはわからない。
どんな結果になっても受け止めようと思う。
自分の全部を試験でぶつけた。
今のぼくはその事実だけで十分だった。
ライブ小説【CHARALAND RISE!(キャラランド・ライズ!)】
567人から選ばれた、8人。
でも、それはゴールじゃない。
迷いながら、ぶつかりながら、それでも前に進む。
そして――その先へ。
chapter2(完結):https://ncode.syosetu.com/n4020ky/
chapter1(完結):https://ncode.syosetu.com/n3725kb/
*キャラクター原案者*
英賀田 雪雄 :日花子
根古島 カノン :日花子
京極 真秀 :茶ばんだライス
折原 千鶴 :夏也 すみ
狭山 那音 :ギフカデ
Daz・Garcia :HUNGRY
赤河 辰煌 :ウニヲ
佐藤 翔太 :niko
*キャラランドスタッフキャラクター原案*
岡 歩 :サバ缶
猫沢 ゆう :茶ばんだライス




