その64~RISE!再び昇る~
パフォーマンス試験を終えたあと。
スタジオには、さっきまでの緊張感がまだ少し残っていた。
荷物をまとめながら、ぼくは静かに息を吐く。
終わった…。
良かったところも、反省点もたくさんある。
でも、今の自分に出せるものは、全部出せた。そんな清々しい気持ちだった。
「ふぅ……」
試験の重圧から解放されて、ようやく肩の力が抜けた。
そのときだった。
スタジオのドアが開いた。
「翔太、パフォーマンス試験、お疲れさま」
聞き慣れた声。
振り返ると、そこにいたのは――
べにほっぺだった。
「べにほっぺ?」
こんな時間に珍しい。
そう思っていると、べにほっぺは少し照れくさそうに頭をかいた。
「実は本当に偶然だったんだ。翔太のパフォーマンス試験を、たまたま見てた」
「えっ!?」思わず声が出た。
「もしかすると猫太に、ハメられたのかもしれないがな……」
そう言って苦笑する。
全く気づかなかった…。
べにほっぺが見ていたなんて想像もしていなかった。
ぼくが驚いていると、べにほっぺは静かに話し始めた。
「これまで二十年以上、マスコットキャラクターをやってきた」
「いい時もあったし、そうじゃない時もあった」
「俺がマスコットキャラクターとして第一線で活躍することは、もうないのかもしれないとも最近考えていた。」
べにほっぺがそんなことを考えていたなんて。
ぼくは何も言えなかった。
「そんな時だった」
べにほっぺは続ける。
「椿ちゃんが言い出したんだ。キャラランドもLoHiを目指そうってな。そして、お前たちLa♪Ra・RISE!(ララライズ)が結成された」
「このことはな」べにほっぺが少し笑う。
「俺たちマスコットにとっても、大きな転機だったんだ」
「転機……?」
「あぁ」べにほっぺはうなずいた。
「お前たちが挑戦する姿を、ずっと見てた」
「オーディションも」「レッスンも」「LoHiを目指して必死に頑張ってる姿も」
少し照れくさかった。
「新しいことに挑戦する若いやつらを見ているとさ」
「俺たちも負けてられねぇなって思うんだ」
確かに最近、マスコットのみんなも以前より積極的だった。
新しい企画を考えたり。
自分たちから発信をしたり。
仲良しのカメリアも、以前よりずっと自信を持って活動しているように見える。
「そんな中、さっき翔太が歌った『RISE!』を聴いて決心した」
その目は真っすぐだった。
「俺は、もう一回、昇ってみせる」
静かな言葉だった。
試験のどんな評価よりも、胸に響いた。
「べにほっぺ……」
「ベテランだからって終わったつもりでいたらダメだ、人間の年でまだ50歳。俺はまだまだ昇れる」
そして。突然、指を向けてきた。
「翔太!」
「はい!?」
「La♪Ra・RISE!のメンバーは仲間だ!でもライバルでもある!」
「どっちがそれぞれの世界で頂点に立てるか勝負だ!」
突然のライバル宣言。
マスコットのみんなとは、戦う場所も目指すものも違う。
でも、その本気は伝わってきた。
「ぼくらも絶対負けない!」
スタジオの窓の外では、夕日が沈み始めていた。
La♪Ra・RISE!も。
べにほっぺたちマスコットキャラクターたちも。
「それぞれの頂上に昇る!」
今回のエピソードをもって「ぼくは佐藤翔太!」はいったん不定期掲載となります。
その代わりに、次回から始まるのは――
『ベテランマスコット「べにほっぺ」の奮起』がスタート!
主役は、二十年以上キャラランドを支えてきたベテランマスコット。
輝かしい過去と、厳しい現実。
そして、再び頂点を目指す挑戦の物語。
RISE!――再び昇る。
次の物語の幕が、今、上がろうとしていた。
ライブ小説【CHARALAND RISE!(キャラランド・ライズ!)】
567人から選ばれた、8人。
でも、それはゴールじゃない。
迷いながら、ぶつかりながら、それでも前に進む。
そして――その先へ。
chapter2(完結):https://ncode.syosetu.com/n4020ky/
chapter1(完結):https://ncode.syosetu.com/n3725kb/
*キャラクター原案者*
英賀田 雪雄 :日花子
根古島 カノン :日花子
京極 真秀 :茶ばんだライス
折原 千鶴 :夏也 すみ
狭山 那音 :ギフカデ
Daz・Garcia :HUNGRY
赤河 辰煌 :ウニヲ
佐藤 翔太 :niko
*キャラランドスタッフキャラクター原案*
岡 歩 :サバ缶
猫沢 ゆう :茶ばんだライス




