その62~試験前夜~
スタジオの空気が、明らかに違っていた。
静かすぎる。
音楽が止まる一瞬の“無音”が、こんなにも重く感じるのかと思うくらいに。
——明日。
パフォーマンス試験。
その現実が、この空間全体に、自然と緊張感を作っていく。
鏡の前に立つ。
自分の顔を見る。
でも——
どこか、他人みたいに見える。
振りを確認する。
何度もやってきた動き。
体は動く。
でも。
どれだけトレーニングしても「まだ足りない」
そう思ってしまう。
横を見る。
カノンくんは、歌いながら同じフレーズを繰り返している。
その表情は、いつもより硬い。
まほろは、
イヤホンを外したりつけたりしながら、
音の取り方を何度も確認している。
小さなミスすら許さない空気。
ちづるは、
鏡の前で動きを止めたまま固まっていた。
自分の中の“正解”をギリギリまで探ってる。
たつきは、逆に、動きを止めない。
とにかく動き続ける。
「止まるのが怖い・・・)そう言ってるみたいに。
雪雄さんは、
一人だけ少し離れて、全体を何度も見ている。
個じゃなくて、“全体の中の自分”を考えているのがわかる。
なおとくんは、
いつも通りの顔で立っている。
でも。指先だけ、わずかに動いている。
表には出さないだけで、頭の中ではしっかり動いている。
ダズは。
——やけに静かだ。
「……」
何も言わない。
ただ、同じ動きを、無駄なく繰り返している。
……研ぎ澄ませてる
余計なものを、削っている感じ。
全員が。
“自分なりの限界に挑戦している”
その空間に、ぼくも立っている。
「ぼくも限界を挑戦できているのか……」
心の中で、何度も問いかける。
——そのとき。
「翔太」の声。
振り向くと颯太がいた。
間を置いて。
「翔太ならまだいける」
一瞬、何も言えなかった。
「出し切れ」
それだけ言って、離れていく。
ここで、出し切れなかったら…。
一歩、前に出る。
もう一度、音を流す。
今度はすべてを出し切る。
体を、動かす。歌う。ぶつける。
終わったとき、
呼吸が一気に崩れる。
「……いいじゃん」ダズの声。
視線を感じる。
他のメンバーも、見ていた。
当たり前なのに、今さらそれを強く感じる。
全員、仲間だけど、ライバルでもある。
「ライバル…」
その距離が、今日だけは、やけに感じられた。
時間が過ぎる。
誰も、やめない。
誰も、「帰る」と言わない。
体が止まらない。
止めて終わるのが怖い。
結局。全員、閉館ギリギリまでトレーニングをした。
外に出る。
夜の空気。少し冷たい。
深く息を吸う。
「……やるしかない」ダズが横で言う。
「うん」それだけ。
もう。言葉はいらない。
ライブ小説【CHARALAND RISE!(キャラランド・ライズ!)】
567人から選ばれた、8人。
でも、それはゴールじゃない。
迷いながら、ぶつかりながら、それでも前に進む。
そして――その先へ。
chapter2(完結):https://ncode.syosetu.com/n4020ky/
chapter1(完結):https://ncode.syosetu.com/n3725kb/
*キャラクター原案者*
英賀田 雪雄 :日花子
根古島 カノン :日花子
京極 真秀 :茶ばんだライス
折原 千鶴 :夏也 すみ
狭山 那音 :ギフカデ
Daz・Garcia :HUNGRY
赤河 辰煌 :ウニヲ
佐藤 翔太 :niko
*キャラランドスタッフキャラクター原案*
岡 歩 :サバ缶
猫沢 ゆう :茶ばんだライス




