その54~キャラランドスタッフ~
この間、キャラランドのオフィスに顔を出したときのことだ。
特に用事があったわけじゃない。
レッスンの合間、なんとなく寄っただけだった。
オフィスに入ったとき岡さんの声が最初に飛び込んだ。
「猿田さん、大宮さん、桜子さん、生年月日を教えてください」
岡マネージャーが、質問をしていた。
「何? 急に?」
桜子さんが、ちょっとだけ眉を上げる。
「女性に年齢聞く?」
「い、いや、年齢じゃなくて、誕生日です!」
岡マネージャーが慌てて言い直す。
「誕生日ね……」
桜子さんはニヤッと笑った。
「聞くからには、何か期待しちゃうよ?」
「あ……はい……」
岡マネージャーが弱気な返事をした。
「私は6月28日!」
桜子さんが手を上げる。
「年齢は非公開。三重県出身!」
「じゃあ、大宮さんは?」と岡マネージャー。
「私は3月8日です。京都出身の47歳です。」
一瞬、空気が止まった。
「ちょっと!」
桜子さんがすぐに突っ込む。
「和男さんが歳言っちゃったら、私の年齢バレるでしょ!」
「あっ、ごめん……」
大宮さんは悪気なく言う。
「……妻は、私より年下です……」
「年下なのは当たり前でしょ!」
桜子さんが即座に返す。
「見たらわかるでしょ!」
思わず、ぼくは吹き出しそうになった。
すると、少し後ろで聞いていた猿田さんが、静かに口を開いた。
「大宮くんも3月生まれですか」
「奇遇ですねぇ。私も3月生まれ。2日早い3月6日生まれです」
「私は当然、猿田さんの誕生日、存じ上げてましたよ」
そう言ったのは大宮さんだった。
「以前、マネージャー時代は直属の上司でしたから。岡さん、聞いてください」
大宮さんが、たたみかけるように話す。
「猿田さん、昔は今と真逆で、業界でも“怖い”で有名だったんです」
「“鬼猿”ってあだ名がつくくらいで……」
「そうだったんですね」
岡マネージャーが驚いた顔をする。
「今の、仏のような猿田さんからは想像つきません」
「業界で“ボス猿”と呼ばれていた先代の猿之介社長の下で、“鬼猿”こと猿田さんが、チーフマネージャーだった時代が長かったから」
桜子さんが懐かしそうに続ける。
「私がキャラランドにマネージャーとして入社したときはね、猿田さんの部下が10人くらいいたかな」
「先輩に、和夫くんも、美和さんも……」
「あ、美和さんってBENの八手社長のことね」
そう言いながら、桜子さんは、横目で大宮さんをちらっと見る。
「その時は先輩が、格好よく見えちゃったんだよね」
「そういえば……」
桜子さんが、少し首をかしげる。
「和男くんや美和さんが入社したころって、雨野さんもキャラランドにいらしたのよね?」
「雨野さんって?」
岡マネージャーが聞く。
「AMN-UZMの雨野さんよ」
「ねえ、猿田さんも大宮さんも美和さんも、あまり雨野さんの話したがらないよね?」
「……何かあったの?」
「なにもありませんよ」
猿田さんが、少し遠い目をして、ぽつりと呟いた。
「……いい思い出ばかりです」
「いや、絶対なにかある!」
桜子さんが食い気味に言う。
「そういえば、先代の猿社長も、猿田さんも、雨野さんもそれに烏森芸能の先代も、みんな三重県出身よね?」
「私と同郷だから、三重県出身者が目に留まるのよ」
少し間を置いて——
「……何にもないですよ」
猿田さんは、穏やかに言った。
そして、話題を変えるように続ける。
「ところで、岡さんの誕生日は、いつなんですか?」
「私は9月29日です。」
岡マネージャーが、少し誇らしそうに答える。
「『来る(9)福(29)』と覚えてください!」
笑いが起きて、空気がまた和らいだ。
猿田さんは、うまく話を変えた。
でも——
先代の稗田猿之介。
烏森芸能の社長。
AMN-UZMの雨野社長。
そして猿田さん。
この人たちの間に、何か因縁があったとしても、不思議じゃない。
ぼくは、ソファの端でその様子を聞きながら、勝手にいろいろな物語を想像していた。
*キャラクター原案者*
英賀田 雪雄 :日花子
根古島 カノン :日花子
京極 真秀 :茶ばんだライス
折原 千鶴 :夏也 すみ
狭山 那音 :ギフカデ
Daz・Garcia :HUNGRY
赤河 辰煌 :ウニヲ
佐藤 翔太 :niko




