ぼくは佐藤翔太!その55~集合写真~
その写真が見つかったのは、本当に偶然だった。
キャラランドの倉庫。
颯太と一緒に備品を探していたとき、棚の一番奥から、古い段ボールが出てきた。
アルバイト時代の名残りで颯太ひとりに雑用を任せていられない…。
「……重っ」
颯太が棚から段ボールを下した。
中には、ファイルでも台本でもなく、何冊かのアルバムが入っていた。
表紙は色あせていて、今のキャラランドのロゴより、ずっと昔のマークが押されている。
「これ、なんだろ……」
興味本位で、ぼくは、一冊だけ開いてみた。
ぱら、っと。一枚の写真が落ちた。
——集合写真だ。
スーツ姿の大人たち。
男性が多いが、数人の女性も交じっている。
若かりし、BENの八手社長も写っていた。
写っているスタッフの数を数えた。
一、二、三……十、十一、十二……二十、二十一、二十二……
総勢二十数人。
キャラランドの、ずっと前。
まだ“今の形”になる前のスタッフたちだ。
「あ……」
颯太から思わず、小さな声が出た。
写真の端に、見覚えのある顔があったから。
「……猿田さん?」
今より、少し若い。
でも、姿勢はまっすぐで、表情は鋭い。
写真の中央には、
威圧感のある男性が立っていた。
腕を組み、あごを少し上げて、
周囲を“見渡す”ような目。
(……この人)
直感的に、分かった。
先代の社長。
稗田猿之介。
通称“ボス猿”。
晩年は、親しみを込めてキャラランドスタッフからは「猿社長」と呼ばれていた。
猿社長の隣に立つ数人は、
今は別の事務所にいる名前が浮かぶ。
烏森芸能の創業者の烏森凪…
そして——
写真の、前列。
少しだけ距離を取るように立っている男。
スーツは地味で、ポーズも控えめ。
だけど。
——目だけが、違った。
誰よりも鋭い。
(この人……)
その瞬間。
「何やっているんだね?」
背後から声がして、
颯太とぼくは反射的に振り返った。
「猿田さん……」
猿田さんは、ぼくの手にあるアルバムを見て、一瞬だけ——本当に一瞬だけ、表情を変えた。
「……そんな昔のものを…」
「すみません。勝手に……」
「いや、いいんだ」猿田さんは首を振る。
でも、そう言いながら、アルバムをぼくの手から奪った。
「この頃はね」
「キャラランドは、みんな我武者羅にやっていた。」
「……スタッフもたくさんいたんですね」と颯太
「ああ」
猿田さんは、写真を指で軽く叩く。
「この写真に写っている全員が、芸能界で爪痕を残そうと必死だった。
今でもキャラランドにいるのは、大宮くん、桜子さん、私の3人だけ。
他のスタッフは、他の業界にいった者もいれば、今でもこの業界にいる者も大勢いる…。」
ぼくは、さっきの鋭い目を思い出していた。
前列の、この人。
「……この方は?」
無意識に、聞いてしまっていた。
猿田さんの視線が、写真の“その位置”に止まる。
「雨野・・・AMN-UZMの雨野社長だ」
それだけ。
名前以上の説明は、なかった。
「こちらは・・・」
「あぁ、こちらは、凪さん…烏森芸能の創業者であり、雅くんの御父上だ。」
「烏森芸能の創業者も、キャラランドにいらしたんですか?」
「あぁ、そういうことになるね。」
「先代の猿社長、凪さん、雨野、そして私の4人がキャラランドの創業メンバーだからね。4人とも同郷なんだ。」
颯太とぼくは驚きのあまり顔を見合わせて声を上げた。
「初めて聞きます。」と颯太が言った。
「当時を知っている人もほとんどいないし、敢えて話す話でもないからね・・・」
と、猿田さんは写真を見つめながら呟いた。
そして猿田さんが、アルバムを棚に戻しながら、言う。
「この頃は、キャラランドにとって、
色々な意味で“分岐点”だった」
段ボールが閉まる音が、少しだけ、重く響いた。
それ以上、深く聞ける雰囲気ではなかった。
「翔太くん、颯太くん」
「はい」
「君たちは、もう、当時とは違う新しいキャラランドの中にいる・・・」
ぼくは、ゆっくりとうなずいた。
「過去は振り返らず、前を、未来を、見つづけてほしい。」
猿田さんは最後にそう呟いた。
*キャラクター原案者*
英賀田 雪雄 :日花子
根古島 カノン :日花子
京極 真秀 :茶ばんだライス
折原 千鶴 :夏也 すみ
狭山 那音 :ギフカデ
Daz・Garcia :HUNGRY
赤河 辰煌 :ウニヲ
佐藤 翔太 :niko




