第二十話:革命前夜 ~天穂捜査官~
「馬鹿馬鹿しい。大いなる矛盾は、あなたたちじゃないの。
優秀で善良な人間が、放火したり、人を拘束したりするのかしら」
天穂の耳に響いた、質問に対する答えは、予想したどのようなものとも、違っていた。
「いいえ。矛盾していません」
ヒグチの右隣りにいる女性が、初めて喋った。
「組織および組織の人間は、為すべき役割のために放火や監禁といった犯罪行為を行い、そののち、細胞がアポトーシスを起こすように自壊します。
こうして、組織は常に健全に保たれる。何ら矛盾を含んでいません。 」
天穂は、女性を睨み、開こうとした口をつぐんだ。
女性の口は、一切動いていなかった。
「だれ……?」
「ほら、お示ししてあげなさい」
ヒグチが言うと、女性は、ノートパソコンの画面をこちらに向けた。
そこに、以前大例会の司会をしていたコウサカという女性の姿を認めた。
「あなたが、この教団の、幹部……」
「はい。私はダアトと言います。
コウサカとは、宗教法人『テオスゲノスの民』の信徒であり、同時に革命組織『エツ・ハダアト』の統領、エリシャの半身です」
「革命組織……? はんしん?」
天穂は、うわごとを呟くように喘いだ。
「エリシャ。後は、私から説明します」
「ありがとう。ヒグチさん」
ヒグチは、悦に入った顔をして、語り始めた。
「テオスゲノスの民は、我々の組織『エツ・ハダアト』の前身だった。
それを語るためには、御統領、神宮司乃那を語らなくてはならない……」




