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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第四十一話(野村姉川の合戦編)『奇妙丸道中記』第五部
379/404

379部:野村姉川合戦、開戦

超絶遅筆、ご容赦ください。

******

敵方の見張りを任されていた織田軍の足軽が警告の鐘を乱打する。

「姉川向こうに浅井軍が現れました、第一派の突撃まもなく来ます!」

「殿様の言う通り、浅井軍が来たか、迎え撃つぞ!!」


「見つかったか!」

全速力で姉川を渡る磯野・遠藤軍。


坂井軍の撃った鉄砲の轟音が谷間に木霊し、何か異変が起きたことが全軍に知れ渡った。

磯野軍を迎え撃った第壱陣は、旗頭:坂井政尚、尚恒親子の軍団だった。与力は東美濃衆(遠山衆)等である。

織田軍の主力を担う森・坂井軍は、尾張時代からの百戦錬磨の兵士たちがおり、織田家の中でも積み上げた勲功が壱・弐を争う軍団だが、決死の覚悟の磯野軍の第一波の猛攻を果敢に立ち向かい凌いだが、続けてくる第二波、三波の波状攻撃に序所に押され始め、第四波の来る頃には姉川河原を奪われ、自然堤防を越えたところまで、じりじりと後退しつつある。


第弐陣・池田恒興・尾張衆・岐阜衆(奇妙丸陣代:塚本)の部隊が、坂井軍を抜けてきた敵を迎えうつ準備をし、前線の戦況を見守っている。


「朝倉軍は何処だぁー!」

単騎にて、第弐陣の横を走っていく森勝蔵長可の姿を見つける池田勝九郎之助。

「ん? 長可? どうしてあいつが? あいつ何処に行くんだ?」長可の行方を目を凝らしてみる。

「どうした之助?」

勝九郎の戸惑いに気付いた父である第弐陣大将:恒興。

「於勝の奴が勝手に前線に」

「なんだと、供も連れずにか?」

「そのようです」

「死なせるわけにはいかん。お前、行ってあれを止めてこい!」

「わかった!」返事の前に勝九郎が飛び出し、その郎党も慌てて追いかける。


第弐陣の中で勝蔵長可の動きに気付いたもう一人の人物がいた。

「あの十字槍は、長可か? どうしてこんな前線まで?」

「鬼三左の息子か?」息子に聞いたのは、第弐陣与力の侍大将:生駒親正だった。

「一人で敵に立ち向かうようです」事情を知るゆえに心配する三吉。

「んー、それは不味い。死んだら森家の跡取りが・・」織田家重臣の家に続けて不幸が起きるのは良くないと思う生駒親正。

「お主の戦友だったな。あれを連れ帰って来い」

「はいっ!」

慌てて駆け出していく生駒三吉一正と、その傍衆。


第参陣・丹羽長秀・木下秀吉・西美濃衆(市橋・丸毛)

「一度、本陣を守りに行くと見せかけて、引き返す。城からの追っ手に注意せよ」

「偽装の撤退とはいえ、下手をうつと相手の勢いに崩されるからな」

<横山城搦手門>

「長政様が来た! 戦況を見て城門を開き、長政様に合流するぞ!」

主:大野木土佐守の軍勢がこちらを救援に来てくれると信じたい高坂だ。


第四陣・柴田勝家・蒲生賢秀・西美濃衆(稲葉・安藤・氏家・不破)

「大手門から、恐らく野村直隆・三田村国定等の主力が、長政軍に合流しようと突撃してくるだろう、構わず通して良いが、被害を最小限に留めよ!」

柴田軍の作戦も難しい。油断すれば流れ弾にでも当たって死ぬかもしれない。気の抜けない重要任務だ

<横山城大手門>

「長政様が後詰に来て下さった! 戦況を見てこちらも討ってでるぞ!!」

太手門大将:野村直隆は、後詰があると信じていた。浅井家を信じ浅井方に残って間違いなかったと自分の判断を喜ぶ。

後詰軍と協力して、織田軍を混乱の渦に追い込める唯一の機会がまもなく来ると信じる。


第五陣・森可成、長可・遠藤盛枝・東美濃衆(斎藤・佐藤・飯沼)、野村村付近に在陣する森軍の陣地は、姉川河原付近の他の軍団に比べて敵から遠いが、外様の小笠原軍・水野軍・徳川軍を監視する位置にある。外様衆の裏切りは無いと思うが、それでも注意を忘れるわけにはいかない。そして、もし徳川・小笠原・水野の軍団が危機に陥れば、後詰をする役割も可成軍団にはある。

「バカ息子がっ」

苦虫を噛み潰した表情をしたあと、反対に嬉しそうな表情もする可成。

(俺も、信長様も、あのような頃があったな・・)

昔の自分達を思い出して、奇妙丸世代も同じような青春を迎えようとしているのだな、と父親的感情を思い出す自分に気付いて可笑しくなってもいた。

(あれの好きにさせよう)

「俺たちはここから戦況を見て、劣勢の処に救援にいくぞ!!」

「「「おおぅ!」」」

大将に応える部下達の返事が響く。


第六陣・佐久間信盛・南尾張、西三河、南近江衆。柴田軍と同じく城から討って出てくるであろう、野村直隆・三田村国定の部隊から、信長の本陣を守る最後の砦の役割を果たすのが佐久間軍団だ。

佐久間軍団にも隙はない。


佐久間軍団の後方には、他の陣所より見晴らしの良い、竜ケ鼻の尾根には、本陣・織田信長とその馬廻衆(親衛隊)と軍師:半兵衛の率いる竹中党(奇妙丸与力)が戦況を見守っている。


<横山城本丸>

城主:三田村国定は、大手・搦手から討って出る味方の動きを見ながら、長政軍がそのまま横山城に入城するかもしれないので、城を維持する必要がある。恐らく味方と合わせて攻勢に出る野村直隆は討ってでるであろうから、大手門が手薄になっては困るので大手門の増援に向かうつもりだ。


******

姉川河原の戦場。

敦賀衆の旗頭:朝倉景紀の軍団が対岸に現れ、鉄砲を撃ちかけはじめる。


「朝倉軍は大依山から出て、国友要害村に奇襲をかける所存かと思われます」

第壱陣・酒井忠次は、目を見開く。

「殿様の言っていた通りだ、朝倉は横山城よりも此方を落とすつもりなのだな」

信長の慧眼に驚きつつ、朝倉軍を迎え撃つ準備をする。

「朝倉方に易々と渡河させてはならん! こちらから押し出すぞ!」

号令一下、朝倉軍に向かって駆け出す徳川軍。


第弐陣・小笠原長忠

「酒井に一番槍の手柄を上げさせるわけにはいかぬ。出陣! 出陣だー!」

「「おう!」」

「本当の今川侍の実力を、みせつけてくれるわ!」

織田家・武田家に連続で敗北し続け、最弱の汚名を被せられたと尊厳を傷つけられた旧今川侍達は多い。今こそその汚名を晴らし、天下に一目置かれる時だ。浪人身分の者は、この先の仕官口の拡大にも繋げたい。


続いて旗頭:石川家成の率いる軍団や、石川数正が旗頭の岡崎軍が、家康本陣防御の為、本陣前に動き始めた。

「一乗谷の越前衆は、いか程の実力であろうか?」

本陣では大将:徳川家康と、その旗本馬廻衆・大久保忠世、忠佐、本多忠勝、榊原康政が朝倉軍の動きを注視していた。

畿内でも最強だろう、と噂される義景直轄の朝倉主力「一乗谷」軍。軍奉行代理:前波景則率いる一乗谷軍の実力の程を、じっくりとここで見るつもりだ。


*********

野村の戦場。


浅井軍先鋒。磯野丹波守員昌と、遠藤喜右衛門直経が中心となって、両将が二つ巴が回転するように動きながら、織田軍の前線を崩していく。

坂井軍は、常に強風に晒されるような状態の中、頑強に前線を持ちこたえていた。

「おい!お前、お前は森家の、なんで前線に居る?」

闖入者を目撃した久蔵尚恒が、集団戦闘の邪魔だと咎める。

「兄貴を殺した奴は誰だ!?」

質問に、質問で答える闖入者は、義弟の森勝蔵だった。

「可隆は千田采女にやられたのだ、千田は朝倉のお気に入り故に朝倉軍に居るかもしれぬ。ここには居ない!」

千田采女は浅井家の外様で、江北国境の傍に領地があるため朝倉にも通じている。浅井・朝倉同盟の仲介者だ。

「朝倉?! あっちか」

此処に未練無しという切り替えの早さで立ち去る長可。

「待て、オイッ!!」

単騎で朝倉軍の出現する地点に向かうと悟る尚恒。自分が口を滑らせたようで始末が悪い。

「親父、悪いが彼奴を追いかける。義弟を見殺しにはできぬ」

同僚:鬼三左が、嫡男を無くして悲嘆に暮れている姿を政尚も覚えている。

「分った!」

坂井久蔵尚恒が、配下の一隊を引き連れて、勝蔵を追った。


********


浅井軍第二陣旗頭:浅井玄番允政澄。

先鋒軍奮戦のお陰で無事に姉川を渡河し、河原にて軍を再編成し陣容を整え終わった浅井玄蕃允軍。

「磯野に続け、孤立させるな!」

磯野軍の本気の戦いを真近にて目撃し、先程までの員昌織田内通の疑念も解消した玄番允政澄。

このまま先鋒軍を織田軍の中に孤立させて見殺しにする訳にはいかない。

「磯野に続け!  掛かれぇーーーーー!!」

浅井軍の第二軍は、本気の仲間を助けるため、織田軍へ猛然と襲い掛かった。


*********


この画像のURL:https://17453.mitemin.net/i462217/

挿絵(By みてみん)

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