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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第四十一話(野村姉川の合戦編)『奇妙丸道中記』第五部
367/404

367部:出航

時間のある時に書きたしていきます。超絶遅筆ご容赦を。

岐阜城本丸御殿。


「遠藤盛枝、一門衆と共に郡上軍を率いて参りました」

岐阜城の想像以上の壮麗さに、肝を抜かれ畏まる盛枝。

(これは、相手が悪かったかもしれない。忠誠心を見せておかねば、やられる)

義父・安藤守就に付き添われて信長の御前に出頭する様子は哀れなものだった。

「ようきた」

「郡上には朝倉に備えて半数の兵力を残しておりますが、動員できる限界まで揃えて参陣致しました」

畳に頭を擦り付けて申告する盛枝。


信長は、飛騨国司の姉小路家は将軍に従っているので不穏なことはしないだろう、とは思う。しかし、戦国の世なれば、乗っ取りを企てるという最悪の事態は想定しておくべきかもしれない。武田家との同盟のお陰で、姉小路と椎名の対決は小康状態となり飛騨は平穏なはず。

越後上杉は武田に備えて、関東の北条家との同盟を模索している様子だ。しばらく動くことは無いだろう。

また、郡上国境北西側の朝倉は、全兵力をもって小谷に集結していると考えられるが、義景に唆された寺社の僧兵が郡上に乱入しないとも限らない。


「幸い高賀山の僧兵達は織田家によって討伐されました故、南側の心配はしておりません」

と盛枝は言う。

高賀討滅は、斎藤利三がやってしまったことだ。不名誉な部分もあるので奇妙丸の「具足始め」と宣伝するわけにはいかない。奇妙丸の初陣に相応しい名誉ある戦場は、父である自分がしっかりと用意しようと思う。


盛枝に対しては、先鋒の旗頭・森可成軍に従軍させ、先陣で槍働きをさせる。遠藤家一門は西美濃三人衆の安藤軍に所属させることにした。


*******

岐阜城、奥御殿。


「お良姫、息災であったか」

奇妙丸がお良姫を出迎える。姫の表情は明るさを取り戻していた。

「奇妙丸様お久しぶりです」

「郡上では、お辛くありませんでしたか」

姉のお慶姫と一緒に出迎えた濃姫が心配して声をかける。お慶姫は再び会えた嬉し涙を袖で拭っている。

「予想外に盛枝殿は良くしてくれました。安藤殿の後室として嫁いでくれるなら高賀山の本宮神社の御神殿も再築して良いと盛枝殿に言われました。私は正式な室として迎えられるなら、嫁いでも良いと思います」

「高良山の為に、そのような人柱のようなこと」

「盛枝殿に嘘のない証として、東家から遠藤家に代々伝わってきた秘宝を頂きました、これを奇妙丸様にご献上します」

「これは・・。(この尋常ならざる霊威は)」

「沼河姫の勾玉です」

「奇妙丸様が、越・刺ノ国を旅する時、必ずや沼河姫の御霊魂みたまがお力を貸して下さるでしょう」

「お良姫、忝い」

「お役に立てたことが幸せです」


「織田信長の娘として遠藤家に嫁ぐのは難しいかもしれませんが、飛騨の姉小路頼綱の室は私の姉妹です。姉小路から遠藤家に嫁ぐのならば殿もご許可下さいますかもしれませんね。殿に相談してみましょう」

奇蝶御前の心配と、信長の心配事が一致して、この後、織田家が仲介した姉小路家と遠藤家の縁談話が進み、三者の同盟が成立することになる。


自分には、今の時点で人の命運を左右する働きは出来ないが、お良姫のこれからが幸福であることを願う。自分自身も父の命に従い、武田家との同盟を強固にする為に一刻も早く出立しなければならない。

自分が人を幸せに出来るようになるには、まだまだ足りないものだらけだ。


「私はこれから甲斐に向かうが、ここを我が家だと思って、しばらく岐阜に滞在して、お慶姫とゆっくり過ごせばよい」

「有難うございます」


こうして、沼河姫の勾玉を手にした奇妙丸は、松姫と共に武田入道信玄の待つ甲斐国へと向かう。


*****


************

尾張国、熱田湊。


奇妙丸は、身辺を傍衆。その周りをものものしく武装した白武者衆部隊に囲まれ、行列の前後は黒武者衆部隊に守らせながら、熱田武家屋敷町の中心道を移動する。この街道は、信長の元居城だった那古野城から熱田神宮さらに熱田湊町へと延びる。かつて信秀・信長が二代で整備した街道だ。


「奇妙丸様が来たぞ! 全艦、織田家の幟をあげよ!1」

船上天主台から、望遠鏡で街道を見ていた服部政友。

その号令に応え手旗が振られる。

湊に停泊する5隻の巨大安宅船と、数百隻の護衛船から「紫地に金色の永楽銭」・「紫地に織田木瓜」・「白地に平家蝶」と所属を表す織田家の幟が次々と立ち上がった。


「ここからでも見える!あのお城の様な船が新造艦か!!」

奇妙丸の問いに、白武者衆指揮官・山科楽呂左衛門が不敵な笑みを浮かべる。

「若、あれがお望みのものです」

「おおおおおおおおお!!! 全軍急げ!」

「ははー!」


軍団の進軍速度がぐんと早まる。

誰もが世情の不安を忘れ、心底からの好奇心に気持ちが昂ぶる。

奇妙丸も久々に感じた高揚感だ。今は一刻も早く湊に駆け付け、あの山のようにそびえる巨大船を近くから見たい。


「松姫! ついてこれますか?!」

「私は武田の者ですよ! 問題ありません!」

甲州武田と言えば騎馬軍団だ。

「そうでした(笑)」

前方に向き直り戦艦を目指す。

今は一刻も早く、姫にも織田水軍を披露したかった。


*********


奇妙丸達の乗り込んだ戦艦の艦名は「雪風丸」、船体は西洋風、後部の艦橋は純和風の帆船だ。

他の四艦船は、志摩の弁天により「磯風丸」・「浜風丸」・「初風丸」・「谷風丸」と名付けられた。

一隻に兵五百人(最大八百人漕ぎ手二百人含む)が乗り込める大型船なので、今回は雪風・初風・浜風の三隻が稼働する。


艦首には、伊勢の海女神・女御おのごろ島のセーマン・ドーマンの守護印が描かれた旗と、伊勢湾の日ノ出を現した旭光旗が風にはためく。

「素晴らしい旭光旗だ、陽光の御加護の下に進もう」

東征に向かった日本武尊やまとたけるのみことを思い気持ちが引き締まる。熱田から出航する時はいつも頭の中をよぎる。

そういえば「草薙ノ剣」は明智十兵衛によって無事に熱田神宮に戻されたそうだ。

(明智光秀・・。不思議な御仁だ。)

何故か斎藤利三と明智光秀の顔が交互に思い浮かぶ。


「姫、浜松に向かいますね」

「一緒に来て下さって、頼もしいです」

神話の様に海が荒れようとも、この船なら大丈夫だ。

「うん」と頷いて松姫と熱田神宮の方を眺める。

「無事に航海できましたら灯台を寄進します」

二人は航海の無事を神宮の神に祈った。


*********


「汐は鉄を錆びさせる。皆、油紙に巻いておき扱いはこころせよ!」

「ハはぁー」

白武者の軍団長・楽呂左衛門勝成が船慣れしていない武者たちに指示をとばす。

「甲斐にて錆び武者と笑われるなよー」

副官の森九郎左衛門高次が場を和ます。

「ハはぁー」

息子の森兵橘重政と甚八友重、一門の一郎左衛門吉成が、隊士から纏められた武具を受け取り、長櫃の中に整然と手際よくしまっていったのだった。


「船内に防水の長櫃があってよかった、流石、服部殿だ」

津田御坊丸が服部政友に駆け寄る。

「光栄です」

「このような伝統ある海賊衆の新造艦に乗る機会を頂けた、信長様には感謝しかない。服部殿と航海ができて嬉しい。しっかり船乗りの技術を学ばせてほしい」

「船乗りの道は厳しいですぞ」

「覚悟の上だ」

ニイと笑顔をみせる御坊丸。


*********


「久々の海、いいー潮風だ!」

松姫御付きの駒井昌直が、呂左衛門に気安く話しかける。

「楽呂左衛門殿、いや、山科殿でしたな」

「呼びやすい呼び方で良いでござるよ」

「フハッハッハ、大和言葉もお上手だ」

「結のおかげですよ」

呂座衛門の隣で白武者隊の副隊長姿をしていた武士が、頬当てを取り外し笑顔になる。

「お役に立てて嬉しいです」

お結姫は、父・言継の命で岐阜へと向かい織田方の情勢を確認し、父に岐阜周辺の情勢と織田家の内情を申しおくった。

その後帰還した信長に拝謁し、本人の希望で信長公認の楽呂左衛門の妻となった。

更に、奇妙丸の甲斐行きにも呂左衛門に同行すると言い出したが、これも信長は許し、白武者衆に加わることになる。

お結姫の目的は、言継に東国の情勢を見極め報告するためだったのだが、信長は奇妙丸の為には利する事が多く問題ないと考えた。

白武者衆の中では呂左衛門の副官となり「山科の姉御」と呼ばれている。


「岐阜に残っても良かったのだぞ」

異国にて縁あって妻を娶ることになったが、家族の一員となった姫をこれからずっと自分の行くところにつき合わせていて良いのか、近くに居れば守れる安心もあるが、激しい戦場に出ることもあるかもしれない。どちらが良いのか呂左衛門にも答えが見えない。

「いいえ、甲斐に行くのであれば、山科の私が居ることで何かご協力できることがあるかもしれませんし」

「忝い」

二人のやり取りを興味深げに見守る駒井。

異国人はどのような感情を抱いているのか、その価値観や行動を知りたい。

「ん?」

ふと観察の対象である楽呂左衛門と目が合うと、頭をかいて笑って誤魔化した。


*********


黒武者衆は信長の護衛と分割され、奇妙丸に付いてきたのは浅野左近盛久率いる二番隊、桜木伝七の四番隊、山口半四郎の五番隊だ。

三番隊の篠川兵庫と、六番隊の山田弥太郎は、山田勝盛に従い近江に向かう信長軍に従軍するため岐阜に残った。

「おい左近!半四郎!大将が居ない間、誰が奇妙丸様に上申するか決めよう」

「そうだな」

「三人でもいいんじゃない?」


「雁首揃えていくのか、迷惑じゃないか?」

「うーむ、それもあるかもな」


「お困りですか?」

「伴の!」

「聞いていたのか?」

「いや、たまたま耳に入ったので」

伴ノ二郎左衛門が傍にやってくる。


「どうでしょう、この話は私が預かって奇妙丸様に報告しますので、奇妙丸様に決めて頂くというのは?」

「そうだな」

「まかせた!」


「兄上、どういうおつもりですか?」

「桜か、 いやー船の上は暇だから、あの三人をみていたら、なんか面白そうだと思って」

「ふーん・・・」


桜も、進軍の時から感じていたのだが、黒武者衆は、大将の勝盛が抜けたことで、普段のような統率感がない気がする。

甲斐入りの前に黒武者衆がいつもの結束力を取り戻せれば良いが・・。

桜は兄と共に奇妙丸と松姫のいる後部艦橋に向かった。


**********




いろいろある人生です。

まあ、再び歩き始めないとな。ですね。

たまにPCにむかい、、奇妙丸さんたちと会話したいと思います。

リハビリにお付き合いください。

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