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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第四十話(南近江編)
347/404

347部:狂武者

太尾山尾根、堀切り内。

「これでよし」

「若様、いつこのような技術を?」

梶原家の従者・伝蔵が、火薬を仕掛ける主・於八の手際の良さに驚く。

自分達の若がこれほど器用だったのかと感心する。


「白武者の楽呂に教えを請うたのだ」

「あの、奇妙丸様お気に入りの南蛮武者ですか」

異国人のその存在は、織田家中の中でもいろいろと噂が広まっている。

「すごいぞ、彼は」

「南蛮の軍隊は強いということですね」

漠然と、南蛮に対して恐れを抱く伝蔵達。


「そうだな・・・。ま、彼は仲間だ、心配ない」

鉄砲を生み出し、遠く航海できる船や、それに載せる大砲も作り出している。

たしかに日本よりもあちらの文化の方が進んでいるのではないかと、国威を比べた時の心配はある。

「はい・・・」

伝蔵達の不安そうな表情は、南蛮人を近くでみたことのない者の普通の反応だろう。ゆくゆく、楽呂左衛門の人柄が織田家中に広まって行けば良いと思う。


導火線を準備し、火打石を袋から取り出す。

「点火する。走れよ!」

「「はっ!」」

梶原主従は一目散に山の中に逃げ込んだ。



“ドゴォーーーーーーン!!”


爆音とともに火炎が高く上り、連絡橋が吹き飛ぶ衝撃で、出丸番場所の出丸櫓がぐらりと揺れる。

「何事だっ?!」

兜が爆風で横にずれて、支えようとして軍配を落としてしまった宗左衛門尉。

「太尾山への橋が壊されました!」

「おのれぇー」

「これでは城内に引き上げられません!」

「くっ、俺は城を捨て退却するぞ、磯野の磯山城に逃げる。私は生き延びねばならん」

「我々は?」

「ここで、時間をかせげ。命令だ!」

「・・・」

浅井は最初から我々を見捨てるつもりなのだと、旧今井家臣たちは直感する。

(所詮、外様か・・)

急速に忠誠心を失う兵士たち。

「お主の家族は私が面倒を見てやる!」

「はぁ」

中嶋は部下の返事も聞かずに、厩へと走っていった。


*****

森軍


「出丸の防御が緩んだぞ。今だ、突撃!」

前線を心配する副将・於九が全軍に指示を出す。


「うおおおおおー!」

於勝がついに門を突破し、出丸の中になだれ込む。森弥五八郎親子も於勝に続いて突入した。

「ひゃっほーーーーい!」

「おらおらおらぁ!」

新参の親子は、その武力は味方にとって頼もしいのだが、無茶をしそうなほど好戦的な傾向だ。


「若に続いて、このまま本丸まで行ってしまえー!」

「「おーーーう!」」

大将・森勝法師(於勝)の勇猛果敢な戦いぶりに興奮して、森軍の士気は異常に高い。於八の壊した橋も気にせず、切掘りの障害も乗り越えて、必死に逃げる敗残兵を追いかけ、次々と山頂を目指して行った。


*******

太尾山、出丸番所。


平八郎(於八)の戻った梶原軍が出丸の番所を抑え、あっけなく降服した中嶋軍(旧今井家家臣団)の武装解除を進めている。


続々と後続軍が到着し、本隊の奇妙丸達もやって来た。

「於勝たちが出丸を落としたのだな」

「ええ、森軍が圧倒的な勢いで制圧してしまったようです」

平八郎が、奇妙丸を出迎えて戦いの経過を話す。


「そのまま太尾山に?」

「はい」

「母御前を人質に取られた時もそうだったが、於勝は分別が無くなるのだな・」

「張飛か、許褚きょちょのようですね」

「うまいこというな」

“ハッハッハッハッー・・・・・は~“ 

笑いながらも於勝のことが心配になり、笑い声が尻すぼむ。


「ところで、降服してきました捕虜はどういたしますか?」

山田勝盛が、奇妙丸に捕虜の扱いを尋ねる。

「出自を調べ、織田家に仕えるというものは召し抱えよ。 そうでない者は、堀秀村殿のところへ送ろう」

「ははっ」

奇妙丸の言葉を聞いて、縄をかけられた者たちは安堵した表情だ。


相手の大将は織田信長の息子だと知り、打ち首も覚悟していた。

がしかし、話の分かる若者のようなので、これからは織田に出仕してみようかと思う、旧今井家の面々だった。



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