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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第四十話(南近江編)
337/404

337部:出、岐阜

岐阜城下町外大路、東山道関所


今回の近江行は、浅井長政夫婦を小谷城まで送ったときとは違い、浅井軍の襲撃に備えつつ中山道を進み、京都の織田軍を迎えねばならない。

各地で世話になった浅井家の諸将が思い浮かぶ。


まさか、彼らと敵対することになろうとは・・・・。

今でも信じられぬ思いだ。

しかし、故郷を遠く離れた、二万の織田の兵士たちを迎えに行かねばならぬ。

尾張や美濃には、残された多くの家族が、安否を気遣いながら、帰還を待ちわびているのだ。


「森軍、行くぞ!」

於勝が率いる森軍は、兼山城から従う家来と、東美濃各地の志願兵からなる。

それに森軍を構成するもう一団は、昔からの斯波家内衆の武士団として名高い、清州の森一族の子弟が多く参加し、純粋な侍身分の者が多い部隊だ。こちらは森於九を旗頭とする。於九は森軍の副将を勤める。


於勝が、兄の仇討あだうちの為、

「どうしても先鋒を!」

と強く願い出たので、梶原平八郎(於八)が於勝の手綱を握って引き留めるように、森・梶原の二軍を奇妙丸軍の先鋒に配置した。

於勝は十文字槍をかざし、兄の敵討かたきうちをなしとげると、近寄りがたい闘気を放っている。


「梶原軍、参る!」

先鋒第二軍は、梶原平八郎が率いる。

美濃領の直臣は父・梶原平次郎景久が率いて上洛しているので、急遽呼び寄せた尾張羽黒本家の梶原一門・家臣の古老と若手の子弟からなる。

平八郎が、常日頃からやりくりして用意した銃火器を多数装備しているので、火力は奇妙丸軍の中でも随一だろう。

主に弓・槍の森軍とは違い、白兵戦よりも中距離支援に適した構成といえるだろう。


「池田軍、出る!」

池田勝九郎之助の軍も同様に、父・池田恒興が主力を率いて信長に従軍しているため、尾張・岐阜に残った子弟が従軍する。池田家は信長と特別な関係にあり、父・恒興は乳兄弟として信長の全ての戦いに従軍し戦い抜いてきたので、信長から優先的に最新の装備を配備されている。それに伊勢国の御目付・瀧川一益が親戚なので、瀧川家からも水軍が交易で得た物資を回してもらっているので、他の部隊と比べて最も華やかで充実した装備だ。


「生駒軍、進め!」

生駒三吉一正の軍は、父・親正が土田家・生駒家の主力を連れて行っているので、家業の運送業関連の下請けから子弟が従軍してくれている。生駒家は陸路の商売の多角化の成功で富裕を誇り、生駒軍には専業の侍身分の者は少ないが、道路整備や架橋の大工仕事などができる特殊技能を持つものが多く、商売道具の小荷駄部隊と共に、工兵的役割を果たす有用な部隊がいる。


「黒武者共!参るぞ!」

山田左衛門佐勝盛の率いる黒武者軍。楽呂左衛門の率いる白武者軍と共に、奇妙丸の本陣を固める精鋭の武士達だ。御曹司・奇妙丸の直属なので優先的に予算と最新鋭の武器武具が回され、すべて黒色で統一されているので、客観的にも近づいて来るだけで圧迫感のある恐ろしい部隊といっても良いだろう。


「奇妙丸、出る!」

今回は実戦となるので、小小姓衆は奇蝶に仕え城に残る。年回りの近い傍衆達が従う。


「白武者よ、続けー!」

隊長の楽呂左衛門の号令の下に出発する。

黒武者衆と同じく、白の装備で統一された部隊だ。

白武者の主体は、尾張の鯰江森家の軍だ。本家の近江鯰江家が六角義治を匿っているので、尾張武士団の中では一番立場が悪くなっている。森高次親子は、例え本家の鯰江家と戦うことになっても、ここで武功を立て、織田家への絶対の忠誠をみせる必要があると考えている。


忠誠心に燃える彼らが奇妙丸の身辺を固め、奇妙丸本陣を聖域的な領域に変え、神聖な雰囲気を醸し出している。

それにも増して、以前と違うところは、山科家のお結姫が率いる山科旅団が、山科の御旗を立てて加わっていることだ。

京都公家が後援する朝廷公認の軍であることが、周囲の城下町や村々を通るときにどれほどの精神的な影響を与えることができるか。朝廷の息がかかっているかもしれないというだけで、田舎武者は敵対すれば大儀を失い面目が潰れることを心配するだろう。

今回の山科言継の計らいは誠に有難いことだ。


「竹中軍、ゆくぞ」

半兵衛は後陣を勤め、各軍の補助を行う役割だ。

戦場では、必要な場合は竹中半兵衛の指示により増援軍として、臨機応変に動くことを任されている。

半兵衛は、坂田堀家の執事・樋口直房には、隠者生活の時に最も世話になり、家族とも親交を深めていたので、敵対して恩を仇で返すようなことは、できるだけしたくは無いと考えていた。

坂田堀家には、織田方につくように一命をかけてでも説得するつもりでいた。


奇妙丸軍が、東美濃関へと遠征した時との違いは、御番薬師・惟宗宗五郎が旗元に加わっていることだろう。

彼は先の遠征で商売用に持っている薬をふんだんに振舞って、負傷者を治療してくれていたため、兵士たちの厚い信頼を得ていた、

本人的には東海道表の高天神城を攻める武田軍に薬を売りに行くつもりであったが、奇妙丸軍の中にあっても商売に困らないので、そのまま織田軍に同行することに決めていた。


武藤喜兵衛率いる美濃武田軍は、今回の遠征の従軍は見合わせる。

喜兵衛自身は美濃を離れ、東海道表で高天神城を睨む武田入道信玄に、畿内で見たことを直接報告するつもりだ。

奇妙丸は、新たに書き上げた松姫への手紙を喜兵衛に託した。


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