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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第三十六話(関・安桜山編)
294/404

294部:星宮

刀匠街。


ふいごの炎が室内を赤々と照らす。炎が揺れるたびに人影が位置を変える。

「えい!」

カーン!

「やあ!」

キィーン!

「はっ!」

カーン!

若者達の掛け声とともに、響き渡る鉄槌の音。

そして、赤黄色の光を発する塊が、叩かれる度に勢いよく火花を発する。


「ここだ。ここだ」

森一郎左衛門が先頭を切って、鍛冶場に入って来た楽呂左衛門を初めとする白武者衆幹部達。


「ここで刀が造られて!! って?!!」

戸を屈んで入ってきた呂左衛門が、鍛冶の様子を見て驚く。

「於八殿!?」

なんと、一目散に鍛冶場に向かい、先に到着していた於八が相槌打ちの一員となって、刀造りに加わっていた。

「どうして其方が?!」

「いやー。相槌の様子があまりに見事だったので、無理を言ってお仲間に加わらせて頂きました」


於八と共に大槌を打ち振るっていた二人のうち一人が振り返り

汗を拭きながら言葉を添える。

「秘伝を教えてくれと言われたが門外不出の為断ったのです。それでも、どうしてもとおっしゃるので実際にやって頂き身体で覚えてもらうことにしました」


ハッハッハッと頭をかく於八。

「そうなのか」

何でも探求しようという貪欲さは、何処へ行っても相変わらずだ。

鯰江森の兄弟も於八の積極性に驚いている。


「初心者にしては素晴らしく筋が良いですぞ!」

若者達とその師匠である鍛冶師・孫八は、短時間ながら於八に鍛冶師の才能を見出していた様子だ。

「有難うございます、いや、しかし熱い」

額の汗を拭う於八。

「私の苗字は梶原、その昔は鍛冶でもしていたのかも知れませぬ」

「梶原で御座るか、坂東の武者で御座るな。頼朝公の頃から刀剣を扱っていたのかもしれませぬな」

と笑う鍛冶刀工達。


・・・・鎌倉以前は、美濃不破関以西の西国が刀剣の主要な生産地だった。刀工達が不破の関を越えて、美濃関に集うようになったのも坂東の刀剣需要に応える為だったとも伝わる。


「呂左衛門殿も、ひとつどうですか?」

「これが、日本の剣造りか、ひとつ私もやってみるかな」

人相を隠している覆面を外し、更に上半身を脱いで軽装になり、大槌を受け取る呂左衛門。

「おおっ?!」

呂左衛門の容姿に驚く鍛冶衆。

「よろしく頼む」

青い目の南蛮人に驚く鍛冶師達だが、人相や出自に対して拘らない鍛冶師達は呂左衛門の存在を受け入れた。

「では、準備は宜しいですかな?」

「おう!」

威勢のいい呂左衛門の返事。

見守る白武者幹部の鯰江森一族。

「我々に続いて槌を降ろして下さい」弟子頭の若者が声をかける。

「おう!」

呂座衛門は上段に槌を振りかぶった。


******

春日神社に戻ってきた一行。


「之定殿は安桜山にて保護していただけるのだな」

「はい。大島家で預かりますのでご安心を」

「うむ」

頷く奇妙丸。


「之定殿が旅の途中だったものを引き留めたのだ。我々も早く見つけねばな」

半兵衛が於勝に向って諭すように言う。

「星の欠片を見つけるとは、言ったものの、どうするのだ?」

於勝に方策を問う、新太郎。

「半兵衛殿に心当たりはありますか?」

黙り込んだ於勝に代わり、奇妙丸が竹中半兵衛に情報を聞く。

「私も夜空を駆ける星に興味がありましたが、その核を実際には見たことはありませぬ。いにしえの人々ならば、それを御神体に崇めている神社があるかもしれませんね」

「そういえば、星宮神社などありそうな名だな」

と新太郎。

「北の高賀山六社の中に星宮神社があります。星宮と言っても本尊は虚空蔵菩薩だと聞きますが・・」

半兵衛は美濃国内のその他の神社にも詳しい。

「人智を越えたものであるならば、巫者に占ってもらうのがよかろう」

金森甚七郎が、提案する。


丁度そこへ、生駒三吉に池田正九郎が町内見物から戻ってきた。

「どうされましたか皆さま?そうそう、この先に妙なお札が貼ってある地区が沢山ありましたので、何かと思って茶屋で聞いてみれば、不思議な法力を持つと噂になっている巫女殿の出身町だったとかで」

「なんと!?」

「その方が雨乞いを願うと、数日のうちには雨が降るらしいです」

於勝が目を見開き、光成の両肩を掴む。

「本当なのか?」

於勝の圧力に驚きながら答える光成。


「して、その方は何処に?」

奇妙丸が三吉に、巫女の居場所を確認する。

「天王山の山麓にある大矢田神社」

三吉に続き、正九郎が答える。

「長良川の上流。北東の方角です」


「よし、それでは皆の集合を待って、大矢田を目指そう!」

奇妙丸が次の目的地を宣言する。

「ははっ!!」

一斉に片膝をつき、奇妙丸に応える傍衆達。

「私も参ります!」

ひと足遅れて、傍衆達と同じように片膝をつき、奇妙丸に進言する大島新八郎光成だった。

「うむ。では道案内を頼んだぞ、光成!」

嬉しそうに頷き返事をする光成。


傍衆を通じて、休息している武者達に、郡上に向かう途中に立ち寄る目的地が定まった事が伝えられた。


*****


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