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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第三十二話(志摩鳥羽編)
232/404

232部:武田御親類衆

「姫の守役をしております甘利昌忠、板垣信安、武藤喜兵衛、それに駿河先方衆の朝比奈信良に御座います」

甘利藤蔵昌忠。年齢は30代後半程に見える。

・・・・武田家の宿老で「甲州の猛牛」と讃えられた甘利備前守虎泰の息子で、信玄の奥近習を勤めて「信玄の懐刀」と呼ばれていた。武田家御親類衆として騎馬百騎を従えていた。武蔵松山城の攻城戦に負傷して足が不自由となり、今は戦場には出ずに内政面を担当している。弟の三郎四郎信康が、信玄に従がって騎馬百五十騎を率い戦場に出ている。


板垣左京亮信安。武田家の両職を務める。年齢は甘利と同じ30代後半くらいだろう。

・・・・於曽氏の出身だが、武田家の宿老・板垣信形の娘婿となり家督を継承した。御親類衆百二十騎持ちだ。板垣・甘利の両家は武田家の両職として信玄の父・信虎の代から家中を取りまとめて来た宿老家だ。今回の駿河侵攻の軍功で、駿河国の田中城主に抜擢されている。


武藤喜兵衛(真田昌幸)。信玄の奥近習六人衆のひとり。二十代前半の青年武将だ。

・・・・真田家の三男坊。甲斐国の名門・武藤家に養子入りして武田の親族となる。信玄が「我が両眼」のうちの一人と認めているお気に入り武将である。


朝比奈信良。今川家の重臣・朝比奈一族の系譜で、庵原朝比奈氏の朝比奈信置の嫡子だ。

・・・・父・信置は今川旧臣達の元締めとして、武田家の諸将からも一目置かれている。武田家重臣・跡部勝資の娘婿となった信良も、駿河湾に面する持船城を預かる侍大将となり、武田家の駿河支配の一翼を担っている。


今川の旧臣である朝比奈信良は、織田家に対しては思うところがあるのだろう。奇妙丸を睨んでいる。

「松姫、よろしいかな」

甘利昌忠が奇妙丸の前に立ちお辞儀する。

「奇妙丸様、松姫殿のお気持ちを汲んでいただき有り難い」

次に武藤が言葉を続ける。

「我ら、松姫の手足となるべく志摩まで参上したのです」

「志摩国の抵抗勢力、我らに帰順の説得をさせて頂けないでしょうかな? 海賊行為が無くなった方が、我々も安全な交易航路を確保できます」

最後は板垣が、お互いの損得について話をする。

「なるほど(織田家は嫌でも武田家になら出仕する方も居るだろうな)」

「無理攻めをして損害を出すより、互いに譲歩しあって話し合いで解決する。猶予を与えて、いずれどちらかに落ち着かせる様にする。これでどうでしょうか?」

甘利が道理を説く。

「一理ある」

「松姫様のお気持ち、御察し下され」

武藤が変化球を投げてくる。

「判り申した。反織田の各浦々を回ってみて下さい。武田家の皆様も、海を得て新たな時代を迎えられている様ですね」

奇妙丸としても、無駄な血を流さずに志摩がまとまる事が望ましい。松姫との共同作戦というのも気に入った。

「協力しましょう」

奇妙丸が武田の重臣達に許可を下す。

「流石、姫様の婿になられる方は聡明でおられる」甘利が手を打って喜びを伝える。

「誠、器量の大きい事よ」板垣も満面に笑みを浮かべて褒める。

「松姫様は良いお婿様を得られましたな」と武藤が松姫にも話を振る。

(褒め殺しとはこのことだな)

「それでは、皆に説得を任せたわよ!」と松姫が重臣達を急かす。

「「御意!」」

頭を下げて、各将が安宅船から降りて行った。


*****


武田安宅船の甲板。

「信玄公の本気が見えますね。御家老の方々すべて武田家中で智将と呼ばれる主力の方々ではありませんか」

服部政友が驚きの表情で奇妙丸の傍に来た。

「戦場で出会えば恐ろしそうな方々ばかりだな」

山田勝盛も、各将の武勇の噂を聞いている。

「武田のお歴々の方々のお手並みを拝見するとしようではないか」

奇妙丸はこの決断が吉と出るか、凶と出るか楽しみでもある。

楽呂左衛門は、無言で各将の立ち居振る舞いを観察していた。


波止場で、武田家の軍船から荷駄の積み下ろしが頻繁に行われていた。奇妙丸の一言で自由を得た小浜湊の民と、武田の家臣団が笑顔で交流している。

「お主は出浦殿?!」

伴ノ一郎左衛門が、湊の武田衆の中のある人物に気付いた。

「良く気付いたな、伴ノ。今は武藤殿の与力だ。我らは姫の護衛として、こちらに来たのだ」

出浦を観察する一郎左。

「それだけでは、無いですね」

ニヤリ、と不気味に微笑む出浦出羽守。


*****


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