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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第三十一話(志摩女護島編)
226/404

226部:女護島

女護にょうご島。


安宅船から島を見下ろす奇妙丸一行。人の気配はない。

「姫様、上陸しますか?」

島の現状が分からないので心配する奇妙丸。

「はい、女護おのごろ島が私の居るべき場所ですから。奇妙丸様も私について来てください」

玉色姫だけはオノゴロ島と発音する。

「島は男子禁制なのでは?」

聖なる島に足を踏み入れてよいものか、問い返す奇妙丸。

「今日は丁度満月にあたります。満月の日は、私が神託を授ける為に特別に許した者は、上陸することが出来ます。島で奇妙丸様に神託を授けましょう」

「それでは、お供します」

玉色姫、そして奇妙丸と桜の三人を見て、頷く弁天。

弁天の指揮の下、海女達が姫が入っている神輿を小船に積む。

安宅船から小船を降ろし、三人を小舟で島へと連れてゆく。


女護島の砂浜に上陸した一行。

ついてきた海女達はここで見張るという。

島の高台にある森の中の社殿へ、玉色姫と奇妙丸に桜の三人で向かう事になった。

「では、行きましょう」

玉色姫の後ろをついてゆく奇妙丸に桜。

月の光を受けて、黄金色に光る竹林の中に社殿がある。

姫はそこで、翁と老婆により育てられたという。

社殿を通り抜け、更に竹林の奥に進むと、そこには丘の上に巨岩が折り重なる祭壇の様な場所があった。


「此処に来ると、私は本来の力を発揮することが出来ます。約束通り奇妙丸様に神託を授けましょう」

姫が目を閉じて、手で奇妙な所作をして、集中している。

振り返って奇妙丸に手をかざす玉色姫。

「見えてきました」

玉色姫に後光が差している様に見える。

「姫、姫の身体がなにか輝いてみえるのだが・・」

思わず驚きを口に出してしまう。

「私も玉色姫の背後に後光が見えます」

桜が呟く。

「桜もか」

奇妙丸の問いに頷く桜。

「貴方は前世で高い徳を積まれた方のようですね。成るべくして、織田剣神社神職の末裔家の嫡男としてお生まれになったのでしょう」

「前世がわかるのですか?」

「貴方は破壊を司る剣神の星を持って生まれています。この世の多くのものを破壊する宿命と言えるでしょう」

「ええ?! 私にその様な力が?」


「はい、貴方は破壊ノ神(布都主)の星をお持ちです。壊すと決断したものは全て破壊されます。しかし、破壊からは創造が生まれます。新しい世へと民を導く星です」

(そうか、新しい世・・)

「貴方なら、古く澱んだものを取り払い、日本の統一を成し遂げる事ができるでしょう。ただ、御祖・玉依姫が造られた国の基礎を、貴方が壊すことになった時は、玉依姫の加護が消えて悪い方向に運命が移るかもしれません・・」

不安そうな表情の玉色姫。

「国の基礎・・、安心して下さい。私はこの日本国を守りたいし、民を愛している」

「貴方の御父上の、天道を司る大きな星(建御雷)の業に、巻き込まれるおそれがありますね・・・。

大きな星の周りに居る小さな星の羨望や我欲が、積み重なって行き貴方を苦しめるかもしれません。

お二人の宿星にとって、都は鬼門にありますから、用の無い時は長く逗留しない様に」

「わかりました」

「海では、この御守りが、貴方を守りましょう。持っていて下さい」

「このお守り袋は? 模様も不思議な形をしている」

奇妙丸が星明りに翳して刺繍してある模様を見る。

「模様は、星と格子です」

姫が、一呼吸おいて話を続ける。

「この地に伝わる神聖な紋です。それぞれ、セーマンとドーマンと言います」

「セーマン(☆星紋)、ドーマン(道紋)」

復唱する奇妙丸。

「今の世を御祖・玉依姫も憂えています。貴方の志を成し遂げて下さい」

「玉色姫・・」

奇妙丸は、玉色姫に神秘的なものを感じずにはいられなかった。

「帰りは、海路を進んでください。きっと神様のご加護があります」

姫から出ていた光が収まってゆく。御信託は終わりの様だ。

「姫は、これから先はどうされるのですか? この島にずっと?」

「はい。運命ですから。いつか領地争いに巻き込まれて社殿が無くなる時は、他の所に移っても島に向かって祈り続けます」

「寂しくはないのですか?」

「海女達が支えてくれますから。これからも海女達の為に海神に祈りを捧げます」

海女達が神宮に御贄を捧げ、姫が海女達の安全を祈る。共存共栄の関係が成り立っているのだろう。

玉色姫との出会いで、父・信長とは別の役割を得て自分が居る事と、自分が織田家の嫡男であることを認めて貰えた事に、心の定まる思いがする。

「姫に会えて良かった」

奇妙丸の感謝の気持ちが籠る言葉に、玉色姫も役割を果たせたと思う。

「私もです」


「桜さん」そして、奇妙丸の隣にいる桜にも伝える事が姫にはあった。

「はい?」

「貴方の星は奇妙丸様と共にあります。しっかりね」

「はいっ」

しっかりと奇妙丸の護衛を勤めあげようと思う桜には、嬉しい言葉だった。


*****


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