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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第三十話(伊勢編)『奇妙丸道中記』第三部 織田冬姫
215/404

215部:伊勢内宮御師

「そこの一行、待てい!!」

伴兄弟次男・二郎左衛門が代行で率いる伴ノ衆が、勢田川の橋を渡って神輿の様に長持ちを運んでくる来る怪しい浪人衆を呼び止めた。

声をかけられて殺気立つ浪人衆。

両者が睨み合い、刀槍を構える。


勢田川の自然堤防に居た近江衆が、橋の上の騒ぎに気付いて橋の方へと集まりだす。

「くそ、渡れぬか」

行く手を阻まれ、宇治に向かうことを諦める弾正。

「どうする?」

「長持を川に放り込む。身軽になって、外宮正殿へ」

「はっ!」

「姫、許せよ!」

弾正が叫び、

「「そいやっ!」」

長持を勢いよく橋から川へ落とす。

バッシャーーーーン!!

長持は川の流れに乗って船のように流れてゆく。

落ちてゆく箱の中で冬姫は弾正の声が聞こえた。あれは天の千奈姫に向けた言葉だろうか?と頭の中をかすめる。

浪人衆は振り返ることなく、橋を引き返し外宮の森の中へ逃走する。

伴ノ兄弟は、弾正の「姫」という言葉を聞いていたので、箱の中身を確かめるべく川へと飛び込んだ。


*****


勢田川から、伴兄弟によって川から引き揚げられる長持。於勝と於八も膝まで水に浸かって運び上げるのを手伝う。

河原に運ばれて、蓋がそっと開けられる。

「兄上様っ!」

「冬姫!」

奇妙丸に抱き着く冬姫。

「「冬姫様!!」」

完全武装した女中隊が、冬姫に駆け寄る。

「冬姫が、生きていてよかった」

冬姫を抱きしめ返す奇妙丸。そっと抱え上げて長持から姫を外に出した。

「冬姫―」

冬姫の姿を見て安心する於八に於勝。それに鶴千代。

奇妙丸に抱きかかえられ、泣きだす冬姫。

「私はもう死にたい。兄上様に合わせる顔がありませぬ」

「なにをいう冬姫」

「私はもう、汚れてしまいました」

「冬姫、怖かった事は忘れるのだ。私は、無事で生きていてくれただけで良いのだ」

「兄上様・・」

冬姫をそっと立たせて、池田お仙とお久の双子姉妹に介護を任せる。


「二郎、一郎左に冬姫が救出できた事を伝えてくれぬか」

「はい。三郎頼む!」

「承知!」

二郎に選ばれた三郎が、駆け出してゆく。


「冬姫・・」

保護された冬姫をみて、鶴千代の握りしめる手から血が滴っていた。


*****


伊勢内宮、宇治。

・・・・内宮のお膝元にある門前町が宇治である。ここにも内宮に仕える御師達が居て、大名権力が及ばない自治勢力を形成している。


丹羽五郎左衛門長秀等の尾張軍が、宇治の町内に兵を配置し、福井の邸宅を囲んでいる。

「堤大夫の密告で事は露見しておるぞ」

慌てる福井大夫。

「首謀者は、伊勢内宮の御師・福井大夫であろう!」

「むう、ならば冬姫を助けたくば、私の言う事を聞け、信長!」

福井大夫が開き直った。

「なんだと?」

「伊勢外宮の惣官は福島御師を、内宮の惣官には私の息子・福井勘左衛門尉を任じ、各家永代職として保証せよ。そうでなければ冬姫の未来はないぞ!!」

「それが望みか・・」

福井の要求に苦笑いする信長。

そこへ三郎が駆け付ける。

「冬姫様は無事で御座います!」

「おお、三郎!」信長に身内であることを示す一郎。


「冬姫は救出したそうだぞ」

「何を?! 嘘を申すな」

「嘘ではありませぬ! 町の者達が確かめています」

「貴方は、慶光院周養殿」

・・・・織田家は、信秀の代から伊勢慶光院との付き合いがある。信秀が伊勢神宮に多大な寄進をしたのも周養尼の先代である清順尼の説得によるものだった。伊勢神宮の遷宮の復興に深く関わって来た尼寺の門主だ。


尼僧は嘘をつく人ではない。

「福井大夫お主は御師剥奪、内宮の惣官には美濃東家の東大夫に命じ、渡会を両宮の権大夫とするぞ!」

信長が宣言する。

「お・・、おのれ!」


「腹を切れ!」

信長が扇で福井大夫を指す。


*****


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