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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第三十話(伊勢編)『奇妙丸道中記』第三部 織田冬姫
212/404

212部:窮地

伊勢 細汲ほそくみ湊。

瀧川一益の主力艦隊が駐留している。伊勢木造城を包囲していた国司・北畠軍を撃退し、逆に大河内城に封じ込め、大軍で城を包囲した織田軍は、補給物資を細汲湊から運んでいるため、多くの艦船が往来し、今も周囲には湊警護の織田軍船が停泊していた。


「奇妙丸様の使い伴ノ五郎左衛門と申します。こちらに熱田から伊勢御師・福島の船は来ていませんか?」

伴兄弟の五男、五郎は社交的な性格で情報を掴んでくるのが上手い。本人は不本意だが、見目が良く女装すれば桜と見まがう程である。変装が得意なので女装での潜入捜査もたまに請け負う事がある。忍具の扱いにも長けている。


そして、湊町を管理しているのは赤幌衆の福富平左衛門秀勝である。

福富の陣所を訪ね、身分の証拠に織田木瓜の家紋入りの刀鍔つばを見せる。

「確かに、奇妙丸様のご身内に間違いない」

辺りを圧する威風のある武将だ。五郎は臆することなく上手く受け流している。

「伊勢御師の船ですか?

やって来てはいませんな。現在は織田家が完全に軍港として利用し、民間船は締め出していますから」

流石に町奉行を任されるだけあって、秀勝の物腰は品があり丁寧だ。

北畠氏との和解後も船江城の本田党の動きが怪しいので重点警戒中だという。内陸の四五百日森城へも北畠の侍が集結しつつあり警戒しているという。

「奇妙丸様に道中気を付けるように伝えてくれ」

「有難うございました。伝えます」

退出し埠頭に向かう五郎。

「鳩よ、桜の所まで頼んだぞ!」

パタパタパタッ 鳩が磯風にも負けず飛んでゆく。


・・・・・

「鳩が来ました」

「おお」

「五郎兄からです」

「なんと書かれている?」

「細汲湊は織田軍船の出入りが多く、御師船は来ていないそうです」

「残るは、大湊だな!」

「それから、北畠の侍達に不穏な動きがあり、気をつけて欲しいとの事です」

「そうか、まだまだ気を許せる状況ではなさそうなのだな」

一刻も早く冬姫を救出せねば。


*****


外宮の御師・福島邸。

・・・伊勢神宮外宮・山田三方会合衆

 会合衆に選ばれる有力家には足代、山田、高向、河井、北、村山(榎倉)家がある。中でも足代家は、足利将軍家の御師を長く勤めていた。他にも山田・高向・河井・北家が、伊勢神宮を参拝する大名家や、地方豪族や、有力信者達の御師を勤めている。


内宮から、福井大夫が訪れていた。

長持(和ひつ:道具入れ箱)の箱に閉じ込められた冬姫を酒の肴に、酒宴が開かれている。

「冬姫か、聞きしに勝る美貌よ」

冬姫の縄尻を持って、箱から立ち上がらせる福井大夫。

「やめてください」

「どうだ、私の者にならぬか。可愛がってやるぞ」

「嫌です!」

「悪いことは言わん。結局は巫女たちも最後は喜んで私に従うのだ、のう福島殿」

「そうだぞ、我らの言う事を聞けば、贅沢な暮らしができると喜んで身を任せる女もいるぞ」

「不潔な!」

二人を睨みつける冬姫。

「不潔ではない」

「古来、男女の蜜事は神聖なものなのだぞ」

「私達が、姫に教えて進ぜよう」

福井・福島大夫の一言に、弾正も気分を悪くしていた。神宮の女官たちが御師達により手籠めにされている事を臭わせる物言いだ。

(腐れ神官共が)


弾正が、二人と冬姫の間に割って入った。

「どれ、私も手伝いましょう」

冬姫の手を掴む弾正。

「いやあ!触らないで」

必死に振り解こうとする冬姫。

「おお、いいぞ、弾正殿、もっとやれ」

「いやーーー」

「煩い!」

ビシっ!っと冬姫の頬を打つ。

「キャア」

横に吹き飛ぶ冬姫。

胸座を掴み、立ち上げさせ往復で張り手する弾正。

「だ、弾正殿、そこまでしなくても」

「いやぁ!」


「びぃびぃ泣き喚いてうるさい小娘だ。興冷めだ」

倒れこんで、嗚咽する冬姫。

「福島殿、まだ年端の行かぬ青臭い小娘。抱いても何も面白くは御座いませぬでしょう」

「う、うむ。そうであるな」

弾正に狂気を感じ、怖れる福島大夫。

「で、では、儂は帰るとしよう」

福井大夫も引き上げる事にする。

そそくさと広間から出て行った二人だった。

倒れている冬姫に、無言で着物を掛ける弾正。冬姫の窮地を救ったのは山路弾正だった。


*****


遅くなりましたが、「設定集」に尾張の加藤氏を追加しました。よろしければご参照下さい。

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