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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第三十話(伊勢編)『奇妙丸道中記』第三部 織田冬姫
204/404

204部:ギアマン

こうして、岩崎城は開城した。

包囲していた諸将は通常通りの勤めに戻るべく城へと帰還する。簗田出羽守は、荒川の守る藤島城の様子が心配でそちらを確認し引き上げる。

「負傷者を宜しく頼む」

「お任せ下され、若様。また、沓掛城にもお越し下され」

「ああ。世話になる」

出羽守の手をがっしり握り、別れの挨拶を交わす。

原田と中條の家来達の取り扱いに関しては、織田家で働く者があれば採用するように申し付け、配属先は出羽守に一任する。水野太郎左衛門の傭兵部隊か、知立の技術者として働く様になれば、生活に苦しむ事もなくなるだろう。


次に、守山城へ島兄弟が引き上げる。

「奇妙丸様、新たな武器を色々見せて頂き勉強になりました」

島兄弟の表情が明るい。

「我らも知恵を凝らして、新しい武器を開発します」

「おおっ頑張ってくれ!」

「それでは、お達者で」

「その方達も、達者でな!」


続けて下社城へは、柴田勝仲と吉田伊助。

「奇妙丸様、次はお正月に挨拶に行きますぞ」

「うん、是非来てくれ、歓迎するぞ」

那古屋城へは、林秀貞が丹羽氏織を伴って帰還する。氏織は岩崎の家臣たちが身の回りの物をあとで持って行くことになった。

「秀貞殿、清州で待っているぞ」

「若様達に戦話を講義する日が楽しみですぞ」

「氏織殿も、よかったら御講義していただけますか」

「ほっほっほ、敗軍の将は兵を語らずです」

「氏織殿の人生談を聞かせて下され」

「では、一族に連なりましたあかつきに」

「そうであったな。楽しみにしているぞ」

岩崎丹羽家との絆が強くなることを願う奇妙丸だ。


末盛城へは、津田坊丸と佐久間理助が帰還する。

その前に津田坊丸が奇妙丸一行の下へやって来た。

「奇妙丸様は、清州へ戻られるのですか?」

「熱田に少し用事があるのだ」

「熱田ですか、それならば途中まで一緒に行って、山崎川を船でふってはどうでしょうか?」

「それは面白い行路だな、そうしようか」

「私もお付き合いします。ところで奇妙丸様、実は、楽呂左衛門殿に南蛮製のギアマンについてもっと話を聞きたいのですが」

「ギアマンとは?坊丸殿」

「これを見て下さい」

坊丸が首から下げる小袋から小さな透明な塊を取り出す。

「これは?」

「父の形見の品なのですが。これはギアマンの鈴です」

「鈴?それが鈴なのか」

「私はギアマンの、この澄んだ色と音がとても好きなのです、これをもっとたくさん手に入れ、生産できるようにしたいのです」

津田坊丸は鈴を大切にしている様子だった。

奇妙丸、楽呂左衛門に回される。手に持って光に透かして見る呂左衛門。坊丸の物なので回し見する訳にはいかないが、於八と於勝、桜に虎松と与平次もギアマンに興味をもつこととなる。


「南蛮の物か?」

「はい。間違い御座いませぬ」

「南蛮国は、このような陶器を作れるのだな。凄い技術だな」

「かつて日ノ本にも製法が伝わったそうですが、貴族のみが重宝したため衰えてしまったようです」

「そこまで調べたのか」

「父の形見ですから」

坊丸殿は寂しかったのだな。一族根切りにしてしまえというのは、残された者に自分の様な寂しい人生を送ってほしくないからかもしれぬ。冷たいように見えるのは坊丸殿の心が何かに覆われているからなのだろう。

「これは織田信行殿が、末盛城主になられた時に交易で入手されたものだろうか」

「きっとそうでしょう」

「呂左衛門、作り方は分るか」

「お任せあれ」

「「おお」」

坊丸と奇妙丸ともに驚く。

楽呂左衛門の底が知れないが、それ以上に、南蛮文化を呂左衛門から学ばねば、とても世界を統べる事は出来ぬと感じる奇妙丸だ。


*****


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