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定食屋はじめましたが、お客様はモンスターです  作者: 田井雫
魔王のもとで定食屋はじめました?
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魔王のもとで定食屋はじめます?2

 「…どうもウチの関係者がご迷惑をおかけしました」

これまでの経緯をふたりに説明しつつ、門の破損具合を確認している魔王に頭を下げる。

「気にするな、だが竜がいると報告が無かったので驚いてはいる…どうやって手懐けた?」

「どうやって、って…胃袋を掴んだ…とか?」

「ふむ、興味深いな…まぁそのことは後にして早速動いて貰いたいのだが」

随分と急だな、事情が事情だから口には出さないが準備くらいはさせて欲しいな。

「昨晩も話したがハ―ピーの件だ」

確か全滅寸前の危険な状態だったな。まずはそれらを率先して助けていくとのことらしい。

とりあえずハ―ピーは魔王が城まで運んでくるらしいのでその間に準備を済ませてしまおう。

リーヤとオーウィンが来たのはむしろ幸いだったのかもしれない。城の庭の一画を借りて調理の準備を行うことにした…といっても食材が無い為買い出しに行かなければ、リーヤの運んできた祠で一度買い物に戻った。


 食材と共に家にあった小鍋や包丁を持って早速調理を始める。

しっかり栄養のあるモノを食べさせたいが、まずは胃に優しいモノから徐々に慣れさせたほうが良いかもしれないと考えた結果、「お粥」…まぁ無難な選択だよな、他に思いつかないし。

少しでも手を加えようと生姜を細かく刻み鍋へ、出汁とご飯と共に煮込む。

最後に鮭の切り身を焼いてほぐして加える。

とりあえず5人分にわける準備をしていると、すぐ傍の地面が突如光輝きだした…円形の模様に見た事のない文字が幾つも羅列しているソレは魔法陣というものだろうか。

まるで光の柱となった其処から魔王が姿を現す。魔力?を消費した為か疲れが表情に出ていた。

「ふぅ、どうやら間に合ったようだな」

「大丈夫ですか?汗とか凄いですけど…」

「心配無い、それよりも食事を頼む」

魔王の足元に横たわるのがハ―ピーなのだろう。人に近い姿だが、その腕には大きな翼、鳥のような両足は細く美しいと思ったが、大きく鋭い鉤爪が猛禽類を彷彿させる。

身動きが無く、呼吸も不安定…どうやら自分で食事をとれる状態ではなさそうだ。

とにかく全員で分担してお粥を食べさせる事に、俺もひとりのハ―ピーの上半身を抱き起こす。

痩せこけた身体は思ったよりも軽い。乾いた唇にお粥を掬い近づけたが反応が薄いのでじゅうぶん冷まして少し強引に口の中に入れた。僅かにもごもごと動き咀嚼…と思いきや、ゴホッとむせた拍子に吐き出されたお粥が顔面に飛び散る。

周りを見渡すと皆それぞれ似たような状況に四苦八苦していた。

袖で顔を拭うと再びハ―ピーと向き合う。

「無理させたか…ゆっくり、少しづつでいいから」

先程より少なめのお粥を食べさせる。口に入ったお粥はやがてコク、コクと少量ながらも喉を通っていく。ひとまず安堵しつつも次のお粥を掬う。

 時間は掛かりつつも半人前分を食した頃ハ―ピーが首を振った。

「もう良いの?」

そう尋ねるとゆっくりと頷く。それまで閉じられていた目が薄ら開かれ俺を捉える。

パクパクしている口は何かを伝えようとしているのだろうか、ただ掠れた声が絞り出されるだけだった。

「無理するなって、何か言いたい事あるなら今度元気になったら聞くから」

頭を撫でてやるとハ―ピーは眠ってしまった。見た限り僅かながらも先ほどよりも回復しているように感じられる。あとはしっかり休ませておいたほうが良いだろう。

「えーと魔王様、どこか休める場所をお借りできませんか?」

「部屋を用意しよう、運ぶのは…手伝って貰えるか」

どうやら先程の魔法陣での移動みたいなものはできないらしい。

食事を終えたハ―ピーから城へと運ぶ。全てが片付いた頃には日も沈みかけていた。

「さて、と……疲れたな」

今日のところはひとまず村に戻っても良いとのことらしい。

「世話になったなコウヘイ」

身支度を済ませると魔王が見送りに来ていた。

「お礼は早いですよ魔王様。あとハ―ピーの食事ですが、お粥は鍋にあるので明日までは大丈夫だと思います」

「…コウヘイよ、私のことは“ラル”でよい」

魔王の名前を軽々しく呼ぶのは気が引けるな。まぁ本人が良いと言うなら…。

「じゃ、じゃあラル。あ、そうだ…良かったらこれ」

材料が少し余ったので1品別に作っておいた。

鮭の切り身と一緒に刻んだ野菜、人参や椎茸、ピーマンを乗せ塩コショウ・醤油で味を付けバターを1切れ乗せてアルミホイルで包み焼く「鮭のホイル焼き」

お粥とは別に炊いたご飯と、野菜の余りを細かく刻んだものを煮込んだコンソメスープ。

それらを魔王、ラルへと渡す。

「…これは?」

「今日は魔力を結構消費してたんじゃないかと思って…さすがにお腹も減ったでしょ、良かったら食べて下さい。今倒れたらそれこそ大変ですからね」

「そうか…心意気感謝する」


 魔王の見送りで城を出る。オーウィンの背に揺られ村へ着いたのは夜。

「旦那ァ!!オカエリナサイ」

出迎えてくれたオーク達の為に夕食作りへととりかかった。

メニューは先程作った「鮭のホイル焼き」。


オーク達の食事で賑わう食堂を眺める。

ふとハ―ピー達の姿が浮かんだ…いざ行動に移すとなるとやはりそう簡単ではない…おそらく長い時間がかかるだろう。


それにリーヤとの約束。


そろそろ本当に覚悟を決めなくちゃいけない時みたいだ。




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