魔王のもとで定食屋はじめます?1
日の差し込みで朝の訪れに気付く、こうして無情に過ぎていく時間が今は忌々しい。
ふと横を見るとスィアが眠っていた。
「…ん」と寝息が彼女から零れる。こうして眠っていると人形のようで愛らしいものだ。
「…ふふふふ…おしんこ…たくあん…あーぬか漬k」
だらしなく涎を垂らし眠るスィアに無言で枕を押しつけた。
「―ぷはっ!一体なんなのよ!?」
「…すまん、その…つい、イメージが崩れた気がして」
「何それ!?訳わかんないわよ!」
「俺だってもうわけわかんないんだよ!」
二人でぎゃあぎゃあ騒いでいると部屋の扉が開きスミスさんが入って来た。
『やぁおはよう。孝平、スィア君…ははは、朝から元気だねぇ』
「お、おはようございます」
ベッドに上ってきたスミスさんが俺と向かい合う。
『私はかつて魔王様に遣えてはいたが、今はただのスライム…君の友であると思っている。今回の件君が受けようと断ろうと私は共に。その為の協力を惜しむつもりもないよ』
「…ありがとうございます」
いつものことながら嬉しいことを言ってくれる人だ…スライムだけど。
まぁ色々悩んだ、というか答えを決めかねていただけなんだけど後押しは貰った。
ただ…リーヤにはどう言おうかそれを考えていた。
「さて、とりあえず…行きますか」
頭を掻きつつ二人に呼びかける。スィアが俺の頭に乗りスミスさんの先導で部屋を後にした。
着いた先は昨夜と同じ魔王の私室。スミスさんの入室の後に続く。
「おぉ昨夜は眠れたか…というわけではなさそうだな」
目に入った魔王の姿は…裸だった。
鍛え抜かれた筋肉は美術品の彫刻のように美しく、微笑みは朝日よりも眩しい。
とっさに頭に手を置きスィアの視界を塞ぐ。幸いなことに魔王の見えていけない箇所は日の光の筋が隠してくれた…ナイス日光!心で親指を立て感謝。
「えぇ、まぁ…」
曖昧に応えつつ話を続けた。
「昨日の事ですが、まずはすみませんでした…勝手に出て行って」
頭を下げる、がそれに被せるように魔王が口を開く。
「よい…それで、貴様の答えは決まったのか?」
薄布を纏いつつ魔王が椅子に座る。
「…受けますよ」
言ってしまった。あとには引けないな、これ。
「断られたらと懸念していたが…そうか」
感謝する、そう呟いて安堵の息を漏らす魔王。
「では具体的な話を進めるとして…」
俺達も座って話をしようとした時、轟音と共に城が揺れた。
「えっ!?な、何事?」
スィアが慌てて俺の頭から跳ね上がる、スィアだけでなく俺もスミスさん、魔王も突然の事態に動揺していた。埃が舞い落ちるのが止み始めると同時に再びあの轟音、揺れ、そんな事が何度か続いた。
「―失礼します」
入室してきた黒ローブが魔王の耳打ち。
「…竜?何故此処に?」
魔王の口から出た単語、「竜」…あれ?何だろう嫌な予感がする…いやまさか。
「…背にエルフを乗せているだと?」
あ、両者多分うちの関係者です、って何であいつらが?まさか村に何かあったのだろうか。
とはいえこのままでは被害が大きくなってしまう、そうなる前に急いで門のある方向へ走って行く。
駆けつけた魔王の指示で門が開かれた。その先にいたのはまさに門に体当たりを仕掛けようとしていたオーウィンの姿、その背にはリーヤがいた。
「何やってんだ!スト―――――ップ!!」
慌てて飛び出して二人を制止させる。
動きを止めるオーウィン。
「む、孝平?」
「コーヘイ!?」
俺に気付いたリーヤがオーウィンの背から飛び降りる。とっさに受け止めたが衝撃に負け姿勢を崩す…だが倒れた際の痛みがない。下を見るとスミスさんが俺達の下敷きになっていた。
「…スミスさん、ありがとうございます」
『構わないよ』
スミスさんの上から降りてリーヤに事情を尋ねる。
「コーヘイ達帰ってこなくて…不安になって、それに…」
そうか心配かけてしまったか、慰めるためリーヤの頭を撫でる。
「…お腹空いた「腹が減った」」
リーヤの言葉にオーウィンも続く…不安がどうとか言っているが一番の理由はこれなんじゃないだろうか?そんな事を考えると悲しくなるな。
「コーヘイ本当に大丈夫なの?」
「あぁ心配するな…ただ、少し面倒なことにはなった。悪いなリーヤ」
首をかしげるリーヤ、俺は振り返り発端となった魔王を見る。
「実は、あの魔王のところでちょっと働くことになった」




