オーク村滞在記3
夕食のコロッケ定食は好評。食事に来るオークの相手をしていると、今朝話したベンズさんがやって来た。
「旦那、例ノ物出来ヤシタゼ!」
彼らが持ってきたのは一畳ほどの鉄板と大きな鍋。大勢の調理を行う上でこれらはかなり役に立つ、彼らの仕事に満足しつつ感謝する。
「ありがとうございます!これで捗ります」
「へヘッ、イヤー鉄モ何トカ足リテ良カッタデサァ」
そういえば結構な鉄が必要だっただろう、一体何処にこれだけの鉄があったんだ?尋ねると恥ずかしそうに鼻を擦るベンズさん。
「…コンナ状況デス。武器ナンカヨリ良イ使イ道ガアルナラ、ソッチヲ優先シマスワ」
俺ができることといったら彼らに食事を作ることだけ、彼らの思いに応える為にも一層頑張らないといけないな。
「アト…コレ、旦那ノヲ見本二シタンデスガ。是非使ッテ下セェ」
ベンズさんが差し出したのは一つの包丁だった。
あらためてお礼を言おうとした時。
「孝平兄チャン!コロッケ揚ガッタヨ!」
「…旦那、何デ ギド ガイルンデスカイ?」
これまでの経緯とギドの思いを話す。それを聞いたベンズさんも他のオークも嬉しそうに笑っていた。
「ソウデスカイ、ソリャア良イ」
そこでふと思いつきギドを呼ぶ。やって来たギドに先程の包丁を手渡した。
「孝平兄チャン…コレ?」
「おぅ、お前にやるよ…これからも頑張れよ。ってベンズさん、勝手にあげて良いですかね?」
「ソイツハ旦那二差シ上ゲタ物デスカラ、旦那ノ自由二シテ下セェ…ギド、良カッタナ」
「ウン!オイラ、モット料理覚エル!」
オーク達と笑い合いながらふと、一つの考えが頭をよぎる。
夕食の片づけを終え、テントに戻る…が眠れず外の空気を吸っていると、
「…コーヘイ眠れないの?」
いつの間にかリーヤが傍に来ていた。
「…まぁな」と曖昧な返事をしつつリーヤにひとつ聞いてみたい事があった。
「なぁリーヤ…もしこのままオークの村が発展したとしたら…お前、此処で暮らすか?」
モンスターとはいえ、ここのオーク達は良い奴ばかりだし…リーヤのことも喜んで向かえてくれると思う。俺の問いにリーヤは少し考え、
「んー、私はコーヘイが居る場所が良い」
そういう事じゃないんだが…
「そっか…さて、寝るか」
「ねぇコーヘイ、もし私の居場所が…」
「ん?」
「ううん…なんでもない、私も眠くなった」
テントに入り皆の寝息を聞きつつリーヤの言葉を考える…さて、どうしたものか。
答えは見つからず、いつのまにか俺も眠りについていた。
朝になり自然と目が覚めたが少し早すぎたようだ。皆を起こさないよう静かにテントを抜けだしオークの村を見て回った。
着いたのはジャガイモ畑、まだ芽が出る前兆すらないがそれなりの広さに耕された土地に自然と期待もしてしまう。
(このままいけば更に畑を拡大できるな…そうすればいずれ多種多彩な野菜を)
…目的を見失うな。一瞬オーク農村で働く自分の姿を想像してしまった。
このまま、なんて暢気な事を考えていた俺に異世界は答えを迫る。
事態が急変したのはその日の朝。休日を利用しオーク達と今後の話をしようかと思っていた矢先。
朝食を終え、昼の仕込みを行っていたところに慌てた様子のオークが駆け込んできた。
「タ、大変デァ! 旦那!旦那ハ!?」
「どうしたんですか?そんなに息を切らせて」
俺を見つけたオークがぜえぜえと肩で息をしながら近づいて来る。
「サッキ、ヨ、呼ンデ来イッテ…」
彼自身頭の整理がついていないのだろう、一旦落ち着かせ言葉を待つ。
「旦那ヲ呼ンデルデス…魔王様ガ」




