オーク村滞在記2
「―ジャガイモ、作るんですよ」
「ジャ…ガイモ…ッテ何デスカイ?」
畑を耕すために集まっていたオーク達の頭に?が浮かんでいる。
やっぱり知らないか、とあらかじめ取り寄せていたジャガイモの種芋を彼らに見せる。段ボールに敷き詰められ土に塗れたソレをオーク達は手に取る。
「…石?」 「コレ食エルデスカイ」 「ブヒィ」
彼らの疑問も当然か。ここはジャガイモの美味しさを教える為にも夕食はジャガイモをメインにするか、食べ物だと分かれば彼らのやる気に繋がるだろう。
「良いですか、ジャガイモは畑の土が固くても育つし、炭水化物だからエネルギーにも…」
本で読んだだけの知識をオーク達に伝えるがイマイチ分かっていないようだ。
「ア、ハイ」 「(ガリ)…味無イ」 「ブヒィ」
「…とにかく、埋めて下さい。後は毎日の管理だけお願いします」
説明を終えるとそれぞれの持ち場に戻り種芋を畑に埋めていくオーク達。
夕食の仕込みに戻るとオークの子供がひとり誰かを待っているように立っていた。たしか最初に森で会った子供だったかな。俺を見つけると駆け寄ってきた。
「人間ノ兄チャン!」
どうやら俺を待っていたらしい。それにしても人間の兄ちゃん、か。
「孝平で良いよ、それより何か用があったのか?」
「ジャア、孝平兄チャン!…オ、オイラ二モ料理教エテ!」
ふむ、思い返すと今まで自分から料理を作りたいと言ってきたのは初めてかもしれない。思わぬ申し出に少し感動してしまった。頭に手を置き目線を合わせる。
「急に何でまた始めたいと思ったんだ?」
「オイラ子供ダカラ、力仕事モ出来ナイシ…デモ、料理覚エタラ村ノ皆ノ手助ケニモナルト思ッテ」
火や包丁のことを考慮すると子供には少し早いかな?だけど俺達がいなくなった時のことを考えると、この子に料理を教えるのも悪くないかもしれない。
「…よし、やってみるか。ええと…」
「オイラ“ギド”!」
もうすぐ日も暮れそうだ、さっそくギドを調理場に連れて行く。
「コーヘイ遅い!」
腕を組み頬を膨らませたリーヤが出迎える。まぁ怒っているというよりも拗ねているような感じだった。
リーヤが準備してくれていたのだろう。既に炊飯が終わっており、味噌汁用の鍋からも湯気が立ち上っていた。少しづつだがリーヤのお手伝いスキルも上がっているようで俺も嬉しいかぎり、とリーヤの頭を撫でながら感謝の言葉を述べる。
「悪いなリーヤ、準備してくれたのか。助かるよ」
ムフーと鼻を膨らませ満足げなリーヤ。
「あとオーウィンもありがとな、でもお前が自分から火を吐くなんて珍しいな」
それまで何も言わず火を吐いていたオーウィンがギロリと視線をこちらに向ける。
「そこのエルフが仕込みがどうのこうのやかましくてな…おい孝平、次からは早く戻れよ…毎回こう騒がれては傷にさわる」
「でも素直に言うこと聞くなんてお前も丸くなったな」
フン!とオーウィンが火を此方に向ける、
「っ!危な!」
「ククク…何やら聞き捨てならないのでな。それよりそこのガキはどうした?」
見るとオーウィンに怯えたギドが俺の服にしがみつき震えている。そういえばギドは森でのことがトラウマになっているのかもしれない。
「あー…今日から料理を教えることになったギドだ。あとギドもあんまり怯えるな、こんなんでも良い奴だから」
そっと覗きこむギド、それに対しクワッっと口を開けて威嚇するような動きを見せるオーウィン。
「ヒィ!孝平兄チャン怖ク無イノ?」
「…まぁ慣れたよ」
オーウィンの食事でさんざん見てきたからね、慣れって怖い。
と、紹介も大事だが夕飯の仕込みも進めなければ。
「今日はジャガイモ料理“コロッケ”作るからリーヤも手伝ってくれ」
ギドとリーヤを連れて向かうはジャガイモの山。
「まずはジャガイモの皮を剥いて芽を取るんだ。芽には毒があるからなー」
二人に見せるようにジャガイモを処理していく。
「…ど、毒あるの?」
毒と言ったのがまずかったのか二人ともジャガイモに触れようとしない。いや、食べなきゃ問題ないからと説明する。そこへ二人を見かねたスィアがやって来た。
「何もたもたやってるのよ…貸してみなさい」
スィアがジャガイモに手をかざす…氷の円盤状の刃が生成され、スィアはそれを器用に操りジャガイモの皮を剥いていく。見事な氷芸、俺は密かに“アイスエッジ”と呼んでいる。
次々と処理されていくジャガイモ。二人もゆっくりとだがそれに続く。
俺はその間に挽肉を炒め軽く塩コショウをして荒熱を取っておく。
処理されたジャガイモを適当な大きさにカットし鍋で茹でる。本当は電子レンジとか蒸し器のほうが楽なんだけどそんな物ここにはないからね。完全に熱が通る前に火から降ろしザルにあけ水気を飛ばす。
それをまたボウルに移し木の棒で潰していく。炒めた挽肉を加え、塩と胡椒で味を確かめ小判型に成型する。薄く小麦粉をまぶし…溶き卵にくぐらせ…パン粉を付けて準備完了。
鍋には熱せられた油、パン粉を少量落とし温度を確認…ちょうど良い具合だな。
「今から揚げるけど危ないから少し離れてろよ」
油の中に入ると同時に音を立てるコロッケ、徐々に黄色から茶色へと揚げ上がる。
網に乗せ油を切る…軽く熱も取れたあたりでリーヤとギドの二人にコロッケを食べさせる。
ハフハフと湯気を立てるコロッケを頬張り…咀嚼。
「「うまー」」
どうやら気に入って貰えたらしい。さて、そろそろ他のオーク達も来る頃だろう。
スィアが刻んだキャベツとコロッケを皿に盛り付ける。味噌汁の具はジャガイモと玉ねぎ、ご飯もよそって今日は献立はコロッケ定食といったところか。




