一章 エルフと野菜炒め 1
「ただいま…」
へんじがない…ただの留守のようだ、そんなつまらないことをつぶやきつつ家に中に入っていく。手には学生鞄と近所で買ってきた食材の詰まったスーパーの袋。
荷物を降ろし、買ってきた食材を冷蔵庫へしまう。それから「報告」へ行くのが日課だ。薄暗くなった室内、明かりを点けると部屋の隅に小さな仏壇と2つの写真が飾られていた。向かい合うように座り線香に火をつける。
「ただいま、父さん…母さん」
2人とも3年前に交通事故で亡くなった。
一人遺された俺は親戚関係の援助と両親が遺した蓄えもあり不便な生活を送ることはなかった。
「俺さ、やっぱり卒業したら就職しようと思う」
報告を済ませると夕飯の準備で台所へ向かう。米を研ぎ炊飯器の中へ、買ってきた食材と冷蔵庫にあるモノで献立を考える。
「野菜が安かったから思わずまとめ買いしちゃったな、しばらくは野菜炒め生活だな。たしか冷凍してた豚肉がまだ残ってた、はず」
肉を解凍しながら野菜を切っておく、ついでに明日用に少し多めに仕込むか。
ご飯が炊きあがる頃に野菜と豚肉を炒め味を整える。そうして夕食の準備が終わり、翌日の為に小分けにした野菜炒めを冷蔵庫へしまおうした時である。
異変は突如として起こった。
「…おいおい、何だよこれ」
冷蔵庫の扉を開けると「何もない」。愛飲している牛乳、今日のデザートに買っておいたプリン、少し賞味期限の切れた調味料。それら食材だけでない、
冷蔵庫の中そのものが無くなったようにただ真っ暗な空間が開いていた。




