料理は愛情
「さすがに2人もいると買い物が捗るし助かったよ」
「良いってことよ…まーなんだ孝平頑張れよ、じゃあな!」
夕陽をバックに爽やかに去って行く友人を見送り帰宅。買い込んだ食材を手に冷蔵庫を開けた。
オークの村に戻ってみると既に何人かのオークが集まってきていた。ただ人間である俺やオーウィンを警戒しているのか少し離れた所から此方の様子を窺っている。
「おかえりコーヘイ!」
リーヤ達が出迎えてくれた。準備しておいた鍋にはお湯が、ご飯も炊きあがりを待つばかり。
「よし、じゃあ始めるか」
鍋のお湯の中に顆粒だしを加える、今回味噌汁の具として用意したのは玉ねぎと麩。それらを適当な大きさに切って鍋の中へ、味噌を溶かしつつ沸騰しないよう火の調節を行う。
炊きあがったご飯とは別にお粥も作っておくことにした。ご飯と水を再び加熱、塩で味を整えたら溶いた卵を垂らして完成。できたお粥と味噌汁は動けない者がいる家に他のオークが持っていった。
次に集まって来たオーク用の食事、数は16か。初めは警戒していた者達も匂いに誘われ、また他のオークに促されて少しづつ近づいてくる。
偏見かもしれないがオークにはやっぱり肉かなぁと用意したのは鶏肉。塩とコショウで下味を付ける、熱したフライパンに皮を下にして焼き始める。皮にパリパリとちょうど良い焦げ目が付いたらひっくり返して火を通しチキンソテーが出来た。本当ならタルタルソースも作りたかったが時間も無かった為簡単なモノになってしまったがそれでもじゅうぶんだろう。
ご飯と玉ねぎと麩の味噌汁、チキンソテーが完成しオーク達が用意した器に盛り付ける。
匂いと湯気に満たされ夕食が始まった。
初めは人間の作ったモノに抵抗のあるオークもいたが、他のオーク達の勧めもあり一人また一人と料理に口をつけていく。
一瞬の静寂、『ブヒイィー!!』という歓声?が響き渡る。
とにかくそこからが大変だった。味噌汁やご飯のおかわりが続き、俺達は追加の仕込みに追われた。
落ち着いてきたあたりにリーヤ達に任せ休憩していると、困ったような表情をしたオークが近づいてきた。
「…旦那、爺様ガ出テ来ナイ」
「爺様って、あの昼間の?」
こくりとオークが頷く、人間の施しなど受けるつもりは無いと言っているらしい。
「リーヤ、ちょっと来てくれるか」
「コーヘイどうしたの?」
呼ばれて来たリーヤに事情を話す。
「…というわけで、お前が料理を作って爺さんに持って行って欲しい」
「ふぇ?む、無理だよ!今までだって手伝うのが精一杯だったし、コーヘイみたいに上手にできないよ」
「そんな難しいのを作れと言っているわけじゃないんだが…そうだ、オニギリなら」
荒熱を取ったご飯を水で濡らし塩を付けた手で握る。
「あとはこうして…三角形にしたり、丸くしたりでだな」
リーヤに教えながら見本で幾つか握って見せた。
「んー…んー?…うー」
両手に米粒をたくさん付け眉をひそめるリーヤ、彼女の前には歪な形をしたお米の塊が出来上がっていた。
「…コーヘイ」
「…よし、爺さんの所へ行ってくるんだ!」
「これで良いの!?形酷いしボロボロだよ?」
「いいかリーヤ、俺の世界にこんな言葉がある…『料理は愛情』ってな。見た目よりもそこに込められる気持ちが重要なんだ」
「コーヘイ…分かった!行って来る!」
幾つか形の良いオニギリを皿に乗せ走って行くリーヤ、その後ろ姿を見送りながらふと余ったリーヤのオニギリを食べてみた。ジャリという食感と共に口いっぱいに広がる塩辛さ。
「…味も重要だよな」
今度は味見をすることを教えよう。




