人と魔物
「旦那、着キマシタぜ」
森の中の少し開いた場所、オークの案内により俺達は「オークの村」に辿り着いた。
村、といっても木で建てられた家が数件点在しているだけ…村人らしき人物は見当たらず、ただ乾いた風が寂しく俺達を出迎えてくれた。
「…思っていたより酷いな」
「珍しい光景ではない、今やこの大陸の大半はこんな有様だ」
オーウィンが呟く。そういえばこいつ元々は飛べるんだよな、その時に色々見てきたのかもしれない。
「二、人間…?」
その時、一軒の建物から髭を生やした老いたオークが姿を現した。俺達、というよりも俺を見てかなり驚いているようだ。
「何故、人間ガ村二…」
「爺サマ、俺達ガ連レテキタ」
「何?オ前達、ヨリニヨッテ人間ヲ村二招キ入レルトハ…」
どうやら、あの老オークは人間に良い感情を抱いていないようだ。
「爺サマ聞イテクレ!旦那ハ悪イ方ジャネェ」
「腹ヲ空カセタ俺達二食事ヲ分ケテクレタ」
他のオークが老オークの説得を始める。そんな彼らのやり取りを遠くから眺めつつ、先程から気になっていた老オークの反応…この世界の人間について他の4人に聞いてみた。
「なぁ、今も人間と他の種族って関係悪いのか?」
以前、人と魔物の間に戦争があったのは聞いている。それから関係の改善などの動きは無かったのだろうか?
『…多くの被害が出たからね、それどころではないのだろう』
スミスさんが言うには、その戦争で魔物の数は激減…種を残そうにもこの衰退した環境ではそれもままならず、中にはあとは滅ぶのを待つのみという魔族もいるらしい。おそらくそれは人間側も同じではないか、とのことだった。今は衝突こそ無いもののそういった苦しみから憎しみを抱く者は少なくない、と教えてくれた。
思い返せばスィアやオーウィンも初対面はあまり良いとは言えない感じだったな。今は二人とも仲良くやっている…今は当たり前のその関係が何だか凄く嬉しい。
「何ニヤニヤしてるのよ気持ち悪い」
俺の視線に気付いたスィアが頭の上に飛んできてぺしぺし叩き始めた。あまり痛くもないので特に止めることはしない。
「いや、こうしてみると変な集まりだなって思っただけだよ」
「たしかに変わっているわね、竜まで仲間…ていうより餌付けしてるし」
スィアの言葉にオーウィンがムッとした表情になる。
「あぁそうだな、精霊が人間にこう…」
何かを言おうとしたオーウィンの口をスィアが氷で塞いだ。
「このアホ竜!アンタ今何言おうとしたのよ?」
オーウィンも口の中に熱気を溜め自分の口を塞いでいた氷を溶かす。
「…何をする、たかが精霊ごときが調子に乗るなよ」
互いに睨みあう両者をなだめていると、オーク達が説得から戻って来た。
「旦那、俺ノ家二来テ下セェ」
「あの爺さんは納得したのか?」
見ると老オークは建物の中に戻っていた。オークはバツが悪そうに頭を掻くと、
「爺サマハ「勝手二シロ」ト…」
まぁそう簡単にはいかないよな、とりあえず村へ入るのは許可されたようなので案内されたオークの家に向かった。




