安息
「…-ヘイ!コーヘイ!」
「ん…リー…ヤ?」
「コーヘイ!?スィア!スミス!コーヘイ目を覚ましたよ!」
『良かった、まだ寝ていたほうがいいよ脱水状態のようだからね』
「ほんと孝平は世話が焼けるわね!」
額には氷水の入った袋、おそらくスィアが用意してくれたのだろう。リーヤも膝枕で介抱して…
「って、ひざまくら!?」
「コーヘイはまだ寝てなきゃダメ!!」
慌てて上体を起こすもリーヤに無理やり寝かしつけられてしまう。
「コーヘイ無理し過ぎだよ、大丈夫だから少し休もう?」
優しく俺の頭を撫でるリーヤ、その状態がとても恥ずかしく額の氷袋で目を覆う。
「あー…、リーヤありがとな」
「…うん」
「ちょっと!何でリーヤだけにお礼を言うのよ!私だって」
「スィアもこの氷ありがとう、すごく気持ち良いよ」
「わ、わかれば良いのよ…ふん」
『おやおや、孝平は愛されているね』
「っ!」「スミス!あんた!」
「すみません、スミスさんにもご心配おかけして…」
『いや構わないよ、私達は仲間じゃないか」
異世界で出会った3人との繋がりがまさかこれほど大きなモノになるとは…嬉しくもある半面、いずれ訪れる「別れ」を想像してしまう。
少し休むつもりがいつの間にか眠ってしまったらしい。膝を貸してくれたリーヤも寝息を立てている。
起き上って体の調子を確かめる…うん、ふらつきも無いし大丈夫だな。
「む?なんだ元気そうではないか」
意外な人物が起きていた。
「悪かったな。さて、お前まだ腹一杯にはなってないんだろ?夕飯のリクエストとかあるか?」
「…『オーウィン』、それが我の名だ孝平」
「オーウィン…か、ん?俺名乗ってないのになんで名前知ってるんだ?」
「そこの奴らがさんざん貴様の名前を呼んでいたのでな」
なるほどな、しかしなんでまた急に自己紹介なんて、
「別れる前に名乗っておこうと思っただけだ」
別れる?オーウィンが何を言っているのか最初は分からなかった。
「確かに腹は満たされておらんがそれなりに満足している…それに」
オーウィンが翼を広げる。正確には片方の翼だけ、もう一方はだらりと地面に垂れ下がっていた。
「落下の際に折れていたのだ、これでは貴様らを乗せて飛ぶことが出来ん」
「おい」
「元から契約など無いの同然、貴様らも逃げるものと考えていた」
「おい」
「まさか本気で竜の飯の事を考える人間がいるとはな」
「…おい」
「楽しませて貰ったぞ孝平、貴様らは喰わずに見逃してやる。ここで別れだ」
「…おい!」
「何だ?さっきから」
言いたい放題言いやがって今度はこちらのターンだ。
「勝手に話を進めるな!飛べない?契約破棄?んなの知るか!お前の腹は今何分目だ!」
「ろ、6、7分目くらい、だと…」
「それならあと1回で満腹になるじゃないか!お前こそ逃げんなよ、お前に一体幾ら掛かったと思っているんだ。ここで別れたら全てが無駄になるんだよ!」
「ぐっ…」
「契約?違うこれは勝負なんだよ俺とお前とのな!ドローとか決めるな!」
「は?」
「飛べないから何だ、だったら俺達を乗せて走るくらいやってみせろ!」
「…」
「あー、すっきりした。とにかくあと1回だ、それでお前を満腹にしてやる」
啖呵を切ったもののオーウィンの反応は無く、小刻みに震えている…怒らせたか?
「ガッハッハッハッハッハ!勝負とな!孝平、貴様は本当に面白い人間だな。よかろう、あと1度…それで我が満腹となれば貴様らを乗せて何処へでも走ってやるわ」
「おう!今度こそ約束だ!」
その時俺とオーウィンにも何か通じたモノが芽生え始めていたのかもしれない…、
「あとついでに荷物持ちと火の番も頼むわ」
「…」
一瞬で消えてしまったがな。




