穴からドラゴンが!
『暫く起きる事はないだろう。もうアレとは関わらない方が賢明だね』
テントへ戻った俺達にスミスさんが言った。
『竜と出会った我々全員の命が助かったのは奇跡に近い、本来ならあの場で全員捕食されていたかもしれない』
「竜…って、そんなに危険な生き物なんですか?」
「あたりまえでしょ!この世界でも最上級のモンスターで、遭遇=絶命で有名なんだから」
俺の質問にスィアが答える。
『遭遇すること自体稀だがね、噂では、竜1匹が国を一夜にして壊滅させた話もあるくらいだよ』
二人の話を聞く分に急いで此処を離れた方が良さそうだ。と、出発の準備をしようとした時だった、
『ぐぎゅうるるるる』
「…リーヤ、お前まさか…」
「えへへ、コーヘイお腹空いた…朝ゴハン」
「そんな事言ってる場合!?少しは我慢しなさいよこの腹ペコエルフ!」
確かにリーヤの食欲には呆れるがスィアも言い過ぎなところもある。
「…うー、スィア…」
「ちょっと泣かないでよ!こ、孝平!あんた何とかしなさい!」
どうしたもんか。だがこうして騒いでいたら竜が起きてしまう。朝食くらいなら手間も時間もかからないだろう。
「…はぁ、今から急いで作るからそれまで静かに待ってろ。わかったなリーヤ、スィアもいいな」
「コーヘイ!うんわかった!」
「何で私まで…孝平のばか」
とにかくご飯を炊いている時間は無いからな、確か食パンを買ってあったからそれに合わせて野菜スープとスクランブルエッグ…あとはベーコンでも焼けば十分だろう。
ふてくされるスィアに頼み卵やベーコンを出して貰いつつ、沸騰させたお湯にコンソメを溶かし、刻んだ野菜を一緒に煮込む。ベーコンは軽く焦げ目が付くくらいまで焼き、ベーコンから出た油を使いつつさっと溶き卵に火を加えスクランブルエッグが完成した。
「ほら、出来たぞ。スィアには…ほれ新商品のバニラアイス」
浅漬けから始まり、漬物全般が気に入ったスィアだが塩分の取り過ぎではないかと心配した俺。氷精霊ならと代わりにアイスを買ってきたところこちらも気に入ってスィアの主食となっている。
「ふん、こんなんじゃ誤魔化されないんだから…はむ」
「コーヘイありがとう!早く食べよ」
「そうだな、それじゃあいただきます、と」
本当ならゆっくり食事していたいところだが事情が事情だからな。スープを飲み干し一息つく。
「コーヘイおかわり!」
「はいはい、これ食ったらさっさと出発だからな」
皿にスープを注ぎ手渡す、がリーヤが受け取らない。まっすぐ一点を見つめたまま動かない。
「どうした?」
「…コーヘイ、あれ」
リーヤの視線の先はさっき竜が落ちたあたり…嫌な予感を抱きつつ振り返る。
穴から此方を覗き込むように地面から生えた竜の頭、金色の瞳がじっと見つめていた。




