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氷結石=浅漬け

精霊に導かれた先は何も無い開いた空間が広がっていた。

「…これよ、これが氷結石」

彼女の指し示す先には親指程の小さな氷が転がっていた。

「こんな小さいのか」

手にとってみようとしたが引っ込めた。

「…別に触っても構わないわよ、溶けないんだから」

「それじゃあ、お言葉に甘えて」

手に乗せてみるとなるほど…氷だ。だが、いつまで経っても溶ける様子が無い。

「こんなに小さいんじゃ見つけるなんて不可能だな」

「100年よ」

精霊がぽつりと呟く。

「その大きさになるまで100年かかるわ…氷結石はね生きているの、時間をかけて少しづつ成長するからとても貴重なモノなのよ。それなのに人間は…」

「…お前、人間嫌いなのか?」

「えぇ、嫌いよ。大っ嫌い…自分勝手な生き物、この山にあった氷結石はほとんど採り尽くされたわ、それに魔物と戦争まで始めて…あのせいで多くの仲間が住む場所を失くした…だから嫌い」

なんて言葉をかけたらよいか分からずただ時が過ぎた。

「…それ持って行って良いわよ」

この氷結石のことか?だが、あんな話を聞いた後では「はいそうですか」と言えるわけがない。

「他の人間に持っていかれるのは嫌だけど、アンタなら、良いかな。久しぶりに笑わせて貰ったし」

「だからって…一応命も助けて貰ったわけだし」

「ふーん、やっぱり変ってるわね。それじゃ代わりになるような物を頂戴?できるだけ珍しいものが良いわ」


困った、何にも思いつかない。暫く考え唸っていると「きゅー」と小さな音が聞こえた。

「何よ!文句あるわけ?仕方ないじゃない!アンタがいつまでも悩んでいるからじゃない!バーカ!」

「…まだ何も言ってだろ」

精霊はまだ何か言いたげにこちらを睨んでいた。

「腹減ってんだろ?じゃあ飯作るってのはどうだ?」

「…変なの食べさせたら許さないから」

とはいえまともな準備が無い状況で作れるものなんて限られてくる。一応鞄の中を確認してみると野菜が少々と調味料だけだった。ましてや包丁も火も無い。あれ?これ詰んでないか?

考え抜いた末、千切った野菜を袋へ入れ塩を振りかけ良く揉んだ…そう、浅漬けだ。これしか思い浮かばなかったんだ。

漬かるのを待っている間に辺りを見渡したが本当に何も無かった、あるのは雪と氷のみ草ひとつ生えちゃいない。そこでふと疑問が生じる。

「なぁ、あの薬草、どこにあったんだ?」

「…別にいいでしょ」

「お前の他に精霊っているのか?」

「…うるさい」

「お前」

「うるさい!バカ!」

「…良いやつだな」

「…ふぇ?」

さて、もう良いかな。少し漬けが足りない気もするが待たせ過ぎても悪いからな。

「ほれ、出来たぞ、浅漬けだ」

「何よこれ、形も大きさもバラバラ…」

そう言いながら一口齧る。そのまま何も言わず手を伸ばす。

「美味いか?」

「う、うるさいわね!別に、普通よ!ふ・つ・う! …しゃくしゃく」


「…で、完食して何か言うことは無いのか?」

「まぁ人間の食べ物にしてはやるじゃない」

満足げな顔をして言う台詞じゃないな。この態度にももう慣れた。さて用事も済んだ事だし帰るとするか

「それじゃあ、この氷結石だけど」

「あ…」

持っていた氷結石を精霊に手渡す。

「え?え?コレはアンタにあげるって言ったじゃない!」

「あぁ、だけど俺はお前から薬草貰ったからな、これで貸し借りはチャラ。氷結石はもういらないし食材の保存はまた別の方法を探すさ」

「…格好つけ過ぎ、ホント馬鹿じゃないの」

大事そうに氷結石を抱える精霊に別れを告げ去ろうとして、ある事を思い出し立ち止まる。

「…あのさ、この山を下りるための道教えていただけないでしょうか?」

「…バカ」






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