スライムがなかまになりたそうに…
すぐに調理の支度にとりかかる。スミスさんはあまり大きな固形物は消化しきれないから苦手らしいので味噌汁が良いかな。
少し時間がかかるものの、出来立てを食べて貰いたかったので今回はガスコンロを持ってきてこの場で調理しようかと思う。具材を切ったり炒めてたりしている間もスミスさんは興味深そうに俺の調理風景を眺めていた。
「出来ましたよ、スミスさんにはこれです」
お椀に入れた味噌汁を差し出す。豆腐と油揚げが入ったいたって普通の味噌汁だが喜んで貰えるだろうか。
『これが、味噌汁。君の住む世界の食べ物か』
するとスミスさんの身体の一部が伸び、細いストロー状に変化した。それを味噌汁の入ったお椀の中へ入れると「ズズズ」と器用に飲みはじめた。よく見ると味噌汁が伝って身体の中へ入っていくのが見える。
『…まさかこれほどとは』
合わなかったかな、スミスさんの味噌汁を飲む手?口?が止まった。
『…あぁ、すまない。少し驚いたよ、そうか…これが「美味しい」という感覚なのか…。我々スライムは基本的に捕食した対象の栄養分や水分だけを吸収するからね、味なんてものはあまり関係ないんだ。そのスライムの私でさえこの味噌汁の美味しさ、温かさを理解できる』
「や、やめてくださいよ。これくらい俺の世界なら誰でも作れますよ」
誉められながら食事するのが恥ずかしく、流し込むように夕食を終わらせた。
『さて、今私達が居るのがここかな』
夕食後スミスさんが地面に地図らしきものを書きながら説明してくれた。棒のような人間が2つと丸いのがスミスさんだろうか。
『…ちょうど此処は四方を難所に包まれた特殊な地でね、このまま北に進めば氷精霊などが住まう極寒の雪山、西は広大な砂漠地帯、南は灼熱の溶岩が流れる火山、東は魔物の巣窟、魔王もここに住んでいる』
改めて説明されるとかなり危険な状況だった。というか魔王なんていたんだな。
『住める場所を探すのであれば東の方角以外の難所を抜けるしかないね。どこへ行くにしても1日では攻略できないと思う。それに準備も必要だ。生半可な覚悟で行くのはやめたほうが良い』
「…コーヘイ」
いつの間にか隣にいたリーヤが腕を掴んでいた。その表情は暗く今にも泣きだしそうだった。
『脅かし過ぎたかな。私としては君達には無事に目的を果たして貰いたい。少し厳しいが現実は知っておかなければならないと思ってね』
「いえ、ありがとうございます。知らずに進んでいたら諦めていたかもしれませんから」
『…ふむ、その様子では行くんだね』
「こいつと約束しましたから、最後まで責任とる、って」
リーヤの頭を撫でながらスミスさんの方を向く。表情はあいかわらず読めないが何か考え事をしているように暫く無言が続いた。やがて
『もし君達が良ければ私も連れて行ってはくれないだろうか?あまり役に立たないかもしれないが』
「良いんですか!是非お願いします」
『自分で言っておいてだが本当に良いのかね?私はスライムだよ』
「…?でもスミスさんはこの世界に詳しいし、さっきの話もかなり助かりましたよ」
『君という人は…そうか、ありがとう』
これはかなり頼もしい人が仲間になってくれた。先の見えない不安な旅にも光が見えた。
「さて、片付けてあとは寝るだけかな」
話は終わったが、夕食の洗い物もしなければならない。鍋や油で汚れた食器を持って一度家に戻ろうとした時である。
『ん?孝平どこか行くのかい?』
「ええ、洗い物に」
『ふむ、ではその洗い物少し貸してくれないか?』
そう言うと鍋やフライパン、皿にお椀を次々と自分の身体の中へ取り込んでいく。その様子を暫く観察していると中で油汚れなどが少しづつ剥離・分解されいく光景が。
『…こんなものかな』
スミスから渡された食器達の汚れは綺麗さっぱり無くなっていた。それどころか油で汚れた皿はキュッキュッと音が鳴り新品同然の輝きを放っていた。
『そういった汚れも私にしてみれば貴重な栄養源だからね、雑菌などもいないはずだから使用するのも問題ないはずだよ』
「スミスさん…凄いです。リーヤの何倍も役に立ってます」
「コーヘイ!?」
頭がよく物知り、紳士でおまけに食器洗いまでできるスライム…スミスさんが旅の仲間に加わった。




