旅立ち
『イクリス』人間・精霊・魔族などの多種族が存在する世界。それぞれが独立した文化を持ち、他種族との交流・干渉も無かった。だが数年前に人と魔族の間に大きな戦が起こる。その争いは関係の無いエルフや精霊といった他の種族をも巻き込み甚大な被害を及ぼした。多くの命が絶え、土地が枯れ、この世界の衰退が始まっていた。
ついこの間までは普通に高校生活を送っていたというのに、随分と大きなことに首を突っ込んだもんだ。
仙場 孝平。突然家の冷蔵庫が異世界へと繋がり、そこで出会ったエルフの少女リーヤ。彼女が暮らせる土地を探すため一緒に旅することとなった。
朝食を済ませた後リーヤからこの世界、『イクリス』の事を聞いた。探すと言ったがことはそれほど簡単ではないらしい、リーヤも以前村の外へ出たらしいが一面の荒れ地だらけで得るものも無かったそうだ。
とりあえず長期を見越して一度家に戻って準備するかな。リーヤに戻ることを告げようと探そうとしたところ、彼女は俺の家の冷蔵庫と異世界を繋ぐ祠に縄を巻きつけていた。
「…何やってるんだ?」
「ア、コーヘイ!コウヤッテ、祠持ッテ行ク準備」
まるで昔話で見る薪を背負うような格好。大きくはない祠だが、小さなリーヤが背負った姿を見るとかなり不釣り合いだった。
「それ、重くないのか?そもそも何で背負う必要があるんだ?」
「重クナイヨ、ソレに祠無イト コーヘイ移動デキナイ」
失念していた。考えてみれば今のところ『イクリス』を繋ぐ手段が祠と冷蔵庫しかない、いざ旅に出たとして俺の家に帰る為にわざわざ此処まで戻るというのはありえない。リーヤのほうがよっぽど先の事を考えていたようだ。
「リーヤ、お前俺が考えていたより頭良いんだな」
「…ソレ、誉メテル?」
ジト目で睨んでくるリーヤをごまかしつつ準備のため一度家に戻った。




