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転生、転性  作者: 影宮 広嗣
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悪魔憑き


「悪魔憑き?」


 名前からしてなんとなく想像は出来るけど、この世界にきたばかりの私が知るわけもなく、ユーベル君に説明を頼んだ。


「聞いたのはオイラだからあれなんだけど……兄ちゃん、悪魔憑きを知らないなんて、モグリだなぁ。相当田舎から来たんじゃないのか?」


 ふむ。どうやら悪魔憑きは有名なものらしい。

 取りあえず田舎から来たことを肯定しておいて、説明を促した。


「簡単に説明するぞ。悪魔憑きってのは、その名の通り生まれつき悪魔に憑りつかれてる人間のことなんだ。ほとんどの人間は、内なる悪魔に人格を乗っ取られ、殺戮の限りを尽くす。でも稀に、悪魔を使役できる人間が現れるんだぞ。それが、コイツってわけ」


 少年ノアを指さしながらユーベル君が言うと、少年は無表情だけどどことなく辛そうな表情になってしまった。

 また泣いてしまわないか心配しながら、説明を続けるユーベル君。


 ユーベル君の説明をまとめるとこうだ。


 悪魔を使役する悪魔憑きは、余程人間の人格が以上でない限り、危険性は皆無だそうだ。むしろ普通の人間よりも強く、心強い存在なのだ。

 だがほとんどの悪魔憑きが人格を奪われ暴れまわるため、人々は怖れ忌み嫌うと言う。

 人間は、普通と異なる存在を嫌い排除しようとする傾向にある。つまり、人格を乗っ取られた悪魔憑きの危険性を考え、差別の対象としているそうだ。


 悪魔憑き共通の特徴は、赤い瞳。


 私は特に差別しない性格だし、それに異世界から来たから怖がる必要性はない。変な先入観もないし、現に目の前にいる悪魔憑きである少年は、大人しい。

 人々が怖れる意味が分からない。確かに人格を奪われ人間の姿をした悪魔は、危険だと思う。でも、少年個人は違うじゃない。


「なるほどな。少年が差別を受けていることはわかった。それで、名がない理由はなんなんだ?」

「……怖く、ないの?」

「ん? 何がだ?」

「僕と、ユーベル」


 顔を俯かせ、近くに浮遊していたユーベルをぎゅっと抱きしめた少年。よく見なくても、その身体が小刻みに震えていることがわかった。

 ああ……ユーベルの髪に口を押し当てている少年、可愛すぎだろ!!

 私の中に存在すらしてなかった母性が出現した気がする。ついでに庇護欲も。


「正しい説明を受けたんだ。危険性がないと分かっていて、怖がる必要性がない。……そんなに、不安にならなくても大丈夫だ」


 そっと俯く頭を撫でてあげる。そんで可愛すぎたので、そのまま頭を引き寄せ少年の頭を、私の肩に押し当ててみた。

 撫ぜ撫ぜと頭を撫でていても、少年が抵抗する感じはない。


「大丈夫、大丈夫」

「ッ……うぅ……!」


 おおっと。お姉さんまたショタっ子泣かせちゃったよ。

 こんな幼いのに、声を押し殺して泣くなんて……心配だよ、少年。

 私に身体を預けて泣いているから、少しでも心を許してもらえたって思ってもいいのかな。


「兄ちゃん、人間にしては珍しいタイプだな。オイラ気に入ったぞ」

「そうか? 気に行ってもらえたなら、嬉しい限りだ」


 少年から流れる大粒の涙は、少年に抱えられているユーベル君に少しかかっていたけれど、ユーベル君に気にした風はない。

 少年が落ち着くまで、好きにさせているようだ。悪魔なのに、人間よりも優しいと見た!


「ッ……あの、あの、ね……?」

「うん?」


 一定のリズムで少年の頭を撫で続けていると、涙声の少年が言葉を発し始めた。顔を覗き込みながら首を傾げると、ぐしぐしと涙を拭いながら、少年は言葉を続ける。


「僕、ね。悪魔憑きだから、捨てられたの……拾って、育ててくれた人はいた、んだけどね……」


 真っ赤な瞳と目許が、兎みたいで可愛らしいぞ、少年。

 そしてやはり異端だから捨てられたパターンだったんだね。でも、拾って育ててくれた人がいたなら……なんであんなところにいたんだ?


「ぼ、僕のっ……ユーベルの、力……目当てでッ……! 僕にね、殺してほしい人がいるって……笑いながら、いるって……!」


 ふぅん……最低な奴に拾われちゃったのか。

 悪魔憑きである少年を、自分の私怨を果たすために利用しようとするなんて……といっても、私も少年を弟にしようと裏を目論んでいるわけだけど。

 私とは比べものにならないくらいクズなお願いをしたものだ。


「怖くて、僕っ……逃げ出したんだ……。でも、知らない男の人に捕まって、その時眠くて寝ちゃったんだ……」

「その男、人買いっぽかったから、オイラがコイツを連れて森に入ったんだぞ。その後すぐ、兄ちゃんに会ったんだぞ」


 ふむふむ。成程。事情はわかりましたよ、お姉さん。

 これは少年に名前を付けて私の弟にしろって神様のお告げですよね。名前はもう付けたも同然な状況だけれど。

 ドロドロに甘やかして育てたい!!


「辛かったな……」

「うん、うんっ……でも、ユーベルいたから、大丈夫だった……! でも、あんた……お兄ちゃんに、名前、ッ……嬉しくて」


 いやっふぅぅぅぅぅ!!

 少年から「お兄ちゃん」いただきましたぁぁぁぁ!!

 なんかちょっとシリアス入ってるはずなのにこんなに心の中テンション高くてすみません。お姉さん年下の男の子に弱いのよ。



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