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8話 1章最終回 前半

一応書いておきますが、後半を書いた後にすぐ2章が始まります。

 必死に回復しようとしているヨーデルを尻目に談笑に花が咲く3人(正確には2人と1体)。


 「ぽんぽんが膨らむまで食べさせたからぁ……あとはへこみ具合と顔色を見て調整していこうねぇ」


肉おにぎりヨーデルのぽんぽんを撫でながらフレナが言う。


こういう時に撫でるべきは頭ではないのか。


ヨーデルの顔色は最初とほぼ変わらない。


むしろ食べさせられすぎて最初より苦しそう。ヨーデル呻いてる。


 「じゃあ今のうちに本題に入るわよ」


フィンがルドモンドのほうを向きながら言う。


 「オマエキライ。プン」


ルドモンドが子どものように横を向く。


「あんた、擬音語まで使いこなして今更それが通じると思ってるの?」


「これは擬音語じゃなくて擬態語だ。人間のくせにその程度の違いもわからぬのか」


「キー!!」


フィンにヨーデルの猿が伝播する。


 「言わせておけばトカゲがっ!」


ルドモンドのもっともな指摘を宣戦布告と受け取ったのか、フィンが弓矢を顕現させようとする。


 「ヤメテオケ」


ルドモンドが初登場の時と同じ不気味な、精神に響く声で言う。


 「なぜ我が余力を残して戦いをやめたのかわからぬわけではあるまい」


「余力残しは伝わるけど、やめた理由はわからないわ」


「我には弱点がある」


「氷でしょ?爬虫類だし。でもそれに引きずられて失敗したのよねえ」


フィンが『やらかしたなあ』と言いたげな表情で言う。てへぺろアルマジロ。


 「男と同じように経験不足だな。もっとも、それは我も同じだが……」


「そもそもあんたほんとは2種じゃないわよね。ちゃんと喋れるもの」


「先ほども言ったが、お前らの基準は知らぬ」


「そうよね。あんたらとの戦いの歴史からなんとなく決めただけだし」


「シラカッタ」


「だから……まあいいわ。次の話だけど、あんたなんでそんなに喋り方がふらふらしてるのよ」


「初対面からやけにこだわるがどういうことなのだ」


ルドモンドが興味深そうに聞く。


「理由はわからないけど、魔族はなぜか上に行くほど喋りが人間に近づくのよ。知能と強さに何か関係があるのかもしれないわね。例外もたまにいるけど」


「同種に見えても会話が通じなかったのはそのせいか」


「逆に種族が違う私たちが会話できるのって、よくよく考えればすごいことかもね」


「戦いを中断した理由はそこなのだ」


「えっ?」


フィンが驚く。これは予想できない。


「どういうこと?」


次はフィンが興味深そうにルドモンドの話に耳を傾ける。


 「久しぶりに会話できて楽しかったから……」


「あんた……その、会話ができる相手を殺しかけたのよ……」


「だって避けられると思ったんだもん……あの時のセリフは嘘じゃないもん……」


もんもん言いながらルドモンドが言い訳する。女の子か。


 「じゃあそもそもなんで攻撃してきたのよ。軽く雑談して『じゃあまたね』でも良かったでしょ」


「ホンノウ」


「その喋りの切り替えはうまいわね」


「ふふん」


トカゲが得意げに言う。かわいい。


「今ので確定したわ。あんたわざとやってるでしょ」


フィンが『やれやれ』と言いたげな表情で言う。


 「あれだな。てーぴーおーというやつだな」


「TPO!タイムポジションオケージョン!」


「ニンゲンコトバムズイ」


「だんだん魔族言葉に地が出てきたわよ! わかっててむずいって略したでしょ!」


「弱いものいじめはつまらぬだろう。『かわいく逃げれば許してやった』というのも嘘ではない」


「急に話を戻すな!


……つまり『戦い』を選んだから『こいつらはやれる』と思ったわけね?」


「そういうことだ。そして我は命のやりとりに興味はない」


「でもヨーデル死にかけてるわよ」


フィンが『そういえば』と思い出したかのように大事なことを言う。ヨーデル雑に扱われてる。


 「我を攻撃した時のスピードならば避けられる程度に速度も威力も調整したつもりだったが、あれほどまともに直撃するとは我も予想できぬ」


「まあ結果的には死んでないから結果オーライよね」


「うむ。死んでなければフレナ殿がどうにかしてくれるだろうからな」


死にかけが横にいるのに呑気な会話を交わす二人。それでいいのか。


 「そして、我は寒さに弱いわけではない」


「え?違うの?」


「うむ。ところでお前は矢に『重量』は付与できぬのか?」


「そこなのよ。『氷が弱点』というイメージに引きずられてたわ。重量を付与してればあんた死んでたかもね」


楽しくかはわからないが、和やかに話してる相手に不穏なことをフィンが言う。やだ……この子自体が氷だよ……。


 「当たりどころと、どれほどの重量が付与されていたかだろうな。


今回は背に当たったが、頭上だったらわからぬ」


「だからあんたそんなにピンピンしてるのね」


「うむ。この程度の傷なら生命活動に影響は出ぬ」


「それじゃあ弱点ってなんなの?」


敵同士でそれ聞く?って会話が繰り広げられるが、最初からこんなだったかもしれない。


 「うむ。弱点というよりは我自身の話になるが……」


「体が大きすぎて冬眠にいい穴が見つからないとか」


「我は熊ではない」


「防寒着着たいけど人間用は入らないとか」


「寒さから離れろ」


「羽を広げたら自分の意思とは関係なくさっきみたいに攻撃しちゃうとか」


「それなのだ」


「えっ?」


冗談の中にまさかの正解があったことにフィンが驚く。


 「先ほどのお前たちの経験不足の話に通ずるが、我も経験……いや、生の経験が不足しておる。それゆえに自制が利かぬことも多々ある。会話に飢えているのもそうだが、あまり運動しないと暴れたくなるとか、勝手に衝撃波が出ちゃったりとか……い、いや、先ほどと同様に自制できる時もあるのだがたまに……」


恥ずかしいのか、だんだん声が小さくなるルドモンド。


 「おねしょみたいに言わないでよ!ヨーデルだから許されてるけど一般人だったら死んでるわよ!」


「許されてはいないと思うんだが……」


ルドモンドが呻くように言う。


「あらじゃあ、あんたも瀕死の状態になる?それでこそイーブンよね」


「イーブンとはどういう意味だ?」


「こここそ『ニンゲンゴムズイ』って誤魔化すところでしょ!」


「これもそうなのだ。我も時々『なんか喋り方おかしいなー』って思うことが……」


「あんた一体どんだけ不完全なのよ! さっきから子供みたいなことばっかり言って!」


「人間はいくつまで子供なのだ?」


ルドモンドが急に真面目な顔になりながら聞く。


 「そうねえ。子供でも色々変わるけど、成人は16歳からよ」


「ならば仕方なかろう。我は覚えている限りではまだ3年ほどしか生きておらぬ」


「私の6分の1しか生きてないくせに『小童』とか言うな!」


明かされる衝撃の事実。ルドモンドちゃん3歳これからどうなる。


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