22話
ヨーデルが荷物を持たされたり燃やされそうになったりしながらソランへ向かう一行。
「ようやく半分くらいかな。一度休憩しようか。川もあるし」
最年長お姉ちゃんのソーニャちゃんが二人に提案する。
「そうっすね。水筒に給水しましょう」
「私も手と足くらいは洗いたいわ。汗でべとべと」
少し先に見える川へ向かう一行。しかし。
「ど、どうしたのヨーデル」
ヨーデルが抱えてた荷物を置き、近くにある一番高い木を駆け上り、木の頂上からソランのほうへ視線を向ける。
「先で誰かが戦ってる」
「エルギさんが言ってたソランで見つかった魔族かしら」
「行くよ二人とも」
ソーニャが駆け出し、フィンもそれに続く。
ヨーデルそれより先を行ってる。
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男と魔族が交戦している。
魔族が伸ばした指から唐突に伸びる爪を避け、魔族の懐に入る。
「これで終わりだっ!!」
男が気合を入れながら魔族の腹にアッパーのように拳を突き立てようとする。が。
読んでいたのか、魔族が男の拳の軌道に合わせるようにジャンプして躱す。
男の頭上に覆いかぶさるような格好になった魔族が、再度爪を伸ばし男の顔に突き刺そうとする。
「ぐぅっ!」
男が身を逸らし避けようとする。が、不安定な態勢だったからか完全には避けきれない。
厚い胸板を爪が滑り、男が切り傷のようなものを負う。
「お前、この前の奴らより強いな。一人なのに大したものだ」
胸を押さえている男を、平然と魔族が見ながら言う。
「ソランでうちの奴らと交戦したのはお前かっ」
「ああ。お前と違って弱かったな。3人もいてあれでは……」
「褒めてくれるのは嬉しいけどなっ……自分より強い奴を褒めても見逃してはもらえんぞっ……」
傷が深いのか、男が辛そうに喋りながら言う。
「ほう。ここまでを見る限り、俺より強いとは思えんが」
「まだ本気を出してはいないからな。見せてやる俺の猛虎……」
「……っ。それは今度の楽しみにとっておいてやる」
はっとしたような表情を浮かべた途端、魔族の姿が消える。
「……なんだ?」
「旦那!大丈夫っすか!」
ヨーデルがエルギに走って近づいてくる。
「ヨーデル……?」
「さっきの奴は?!」
「あ、ああ、逃げたみたいだな……理由はわからんが」
「後ろにフィンとソーニャちゃんがいますからね。その気配を感じたのかもしれないっすね」
「お前……ここは『俺の気配に恐れをなして逃げた』って言うところだろう……」
確かに。
「え?俺なんかじゃ4種でも逃げないっすよ、やだなあ」
ヨーデル自分の実力よくわかってる。
「ふっ。はっはっは。そうだな」
傷を負っていて余裕のないエルギが笑う。
「お前と話してると傷の痛みも吹っ飛ぶ。衛生班に回れ」
「何言ってんすか。男なら矢面に立つべきっすよ。どれだけフィンの矢を受けてると思ってんすか」
「意味が違うだろ。ははっ」
「それより旦那、傷は大丈夫なんすか」
「ああ。包帯かなんかで止血すれば大丈夫だ」
「じゃあ後ろから追ってきてるフィンたちに持ってないか聞いてくるっす」
ヨーデルが今来た道を戻っていく。
「ああ、頼んだぞ」
荷物は川の近くに置きっぱなのでは……。
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「どうだった?」
女が視線を前に向けたまま言う。
「申し訳ございません。気取られたのか、逃げられました」
女の目の前にひざまずいたなにかが現れる。
「ならば大したことはないな。小物か」
「どれほど高く見積もっても『ノーナンバー』下位レベルかと……」
「ならば捨て置け。私の杞憂であった」
女が投げやりに言う。
「先日感じた気配とは違うかもしれませんね」
「うむ。あの空気はその程度の奴には出せん」
スウェンズ卿となにかの無機質な会話が暗闇に響く。
電気くらいつけなさい。




