21話 教育(物理)
おにぎりショップフレナでの晩餐会の翌日、王都へ向かうためにギルドで3人が待ち合わせる。
「おはようヨーデル」
既にギルドで待っていたソーニャちゃんがヨーデルを迎える。フィンもいつも通りヨーデルより早く着いている。
「おはようっす。着替えと金くらいしか持ってきてないんすけど大丈夫っすかね」
「大丈夫だよ。何か必要だったら途中で買えばいいよ。あ、水筒は必要だね」
「水筒って重いのよね、あんた3人分持ちなさいよ。そうすればそのひょろい腕も少しは鍛えられるわよ」
朝からフィンの毒舌が冴えわたる。
「お前、弓矢じゃなくて水筒を顕現できる構成持ってたらこういう時楽だったのにな」
「そんなレジャー向けの構成編み出してどうすんのよ!」
「はいはい。行く前から体力使わないの」
ソーニャちゃんが手を叩きながら言う。もはやお母さん。
「ところで、俺達2人欠けてギルドの戦力大丈夫っすかね。また魔族出たら大変っすよ」
「ギルドにはレイドもいるし、あと二人だっけ、Aの子もいるんでしょ?軍も気にしてるみたいだし
大丈夫だと思うよ」
「レイドさんにはいまだに頭上がらないっすほんと」
「あんたこれまでどんだけ迷惑かけてたのよ……話に出てるだけでもう3人よ……」
事情を知らないフィンが呆れたように言う。
「手間がかかるバカで猿な子ほどかわいいって言うでしょ?そんな感じだよヨーデルは」
ソーニャちゃんが微笑みながら言う。
「なんか俺の知ってる言葉に色々足されてる気がする……」
「じゃあ行こうか。水筒はギルドの備品持っていこ」
椅子に座っていたソーニャちゃんがそう言って立ち上がる。
「まずはソランだね。今から行けばお昼過ぎには着くかな」
「今日どこまで行く予定なんすか?」
「状況次第だね。行けそうならケックラーラまでかな」
「聞いてるだけで嫌になりますね」
「君が出世してお金持ちになってたら馬車使えたんだけどなー」
「うっ……甲斐性なしの自分が憎い……」
「ほんとにそう思うなら皆の荷物くらい持ちなさいよ」
「そうだね。男の子だもんね」
フィンの注文にソーニャちゃんも乗ってくる。
「あーもうわかりましたよ!筋トレしますよ!」
半ばやけになりながらヨーデルが二人のカバンを抱えギルドを出ていく。
こういうちょっとしたことでも迷惑の清算はできますからね。
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ソランへ向けて森を歩く一行。そういえば。
「エルギの旦那はお前に稽古をつけた後どうなったんだ?」
「どうって、帰ってったわよ」
ヨーデルとフィンがエルギについて話をしている。
「これから何かするとか何のために将軍に会いにきたかとか言ってたか?」
「将軍の話は知らないけど、明日帰るって昨日言ってたからもしかしたら私たちの前後にいるかもしれないわね」
「ソーニャちゃんもそうだけど、皆忙しいな」
「私はともかく、軍や国絡みの職業はそんなものだよ」
「そう考えるとギルドって楽っすね」
「その代わり、固定給はないでしょ?生活と時間どっちを取るかだよね」
「ところでソーニャさん?ちゃん?はロームウェルさんに何を?」
「ソーニャちゃんかお姉ちゃんがいいなあ」
「あの頃はともかく、今お姉ちゃんは……おっと」
ヨーデルの足元に、小学校で習う基本構成を少しいじった程度の火球が飛ぶ。
「次は『囲む』よ」
「やだなあ、冗談じゃないっすか」
「『囲む』ってどういうこと?」
フィンがヨーデルとソーニャちゃんのじゃれあいに入ってくる。
「そのままだよ。対象者の周りを炎の柱で囲むの。
無理に出ようとすると火傷するし、そのまま中にいると酸欠になるの。
我慢してもだんだん中の気温も上がるし大変だよ」
何やら怖い説明をソーニャちゃんがする。
「普通に燃やせばいいんじゃないですか?」
当然の疑問をフィンが投げかけるが『燃やす』っていうのもなかなか不穏ですね。
「拷問用なんだよ……っつい!」
先ほどより威力も速度もある火球がヨーデルを襲う。避けきれず、火球が腕の皮膚をかすめる。
「教育用だよ?」
ソーニャが杖を構えながら真顔で言う。
「そ、そうですね。俺も昔よくされましたからね」
ヨーデル怯んでる。
「冗談はともかく、寒い時に周りを囲ったり野営の時に便利なんだよ。
もちろん酸欠にならないように普段は柱の長さを低めにするけど」
「そ、その、ソーニャちゃんは炎系についてどれほど構成の理解を?」
フィンも怯んでる。
「ある程度だよ。だから魔物ハンターじゃないんだよ」
「で、でも明らかに私より強そう……」
「単純な攻撃力の高さならそうかもね。燃えながら生きられる子なんてそういないし」
ソーニャちゃんがこともなげに言う。
「でも、矢だって頭や心臓に刺さればほぼ即死だからね。だから気をつけないとね」
「そうだぞ。今はまだどうにかなってるが、これ以上お前が強くなったら俺が死ぬぞ」
「だったら怒らせるんじゃないわよ!」
フィンがいつものノリで弓矢を顕現させようとするが、今の話で思うことがあったのか止める。
「それに、私は見ての通り武闘派じゃないからね。魔物が出たら二人で守ってね」
ソーニャちゃんが儚げに言う。
それだけ火出せりゃ十分戦力だろ。




