↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
20/23

20話 行きはよいよい

 ヨーデルとソーニャちゃんが森の見回りを終えギルドに帰って来る。


あの後はいつもどおりだったのだろう。二人の顔に陰は見えない。


 「あ、おかえり」


フィンが二人を迎える。呑気にまんじゅうを頬張っている。


 「お前、旦那と訓練してたんじゃないのか?全然疲れも怪我も見えないけど」


「したわよ。ぼろくそにされたわよ」


まんじゅうの入っている箱を、向かいに座った二人の方にスライドさせながらフィンが言う。


言葉の使い方とは裏腹に、怒りや苛立ちは感じさせない声で言う。


 「なりたてとはいえ私もA級。S相手でも一矢報いられるかと思ったけど全然だめ。


やっぱりSは才能ないと無理だわ」


アーチャーだけに。


 「普段自信満々のお前が珍しいな」


ヨーデルがまんじゅうを掴みながら言う。あれ?


 「『軍』って書いてあるが、ぐんまんじゅうって実在したのか」


「あの見た目で意外とふざけてるのよね。わざわざ焼印作ったらしいわよ。


はんこと同じノリで」


「なぜわざわざそこまで……」


「私たちの驚く顔で、昨日騙されたことをイーブンにしようとしたらしいわ。冗談でしょうけどね」


「軍人なのに親しみやすいよなあの人」


「軍にも色々な人がいるからね」


まんじゅうを小さくちぎりながら食べてるソーニャちゃんが言う。フィンとのしとやかさの差よ。


 「フィンちゃんはSと相対するのは初めて?」


「はい。相性を言い訳にできないほど強かったです」


「やっぱ見た目通り近距離タイプか」


ヨーデルが興味津々にフィンに尋ねる。


 「そう。射る前に目前に来られるからどうしようもできなかったわ。あのタイプは足止めしてくれる誰かがいないと私の良さが活きないのよね。ヨーデルみたいなすぐ逃げる奴じゃなくて」


「ソーニャちゃんの前で俺を無理やり貶すな!」


「それじゃあ訓練にならなかったんじゃないの?」


ソーニャちゃんが話を戻す。


 「ええ、だから攻撃力を見てやるって話になって私が射った矢を見せたり避けてもらったり、戦術論を教えてもらったりして」


「はーん。だから怪我もせず呑気にまんじゅう食べてたわけだ」


「怪我はないけど心は折れたわよ……誰にも見せたことのない『必殺!光速ブラックホール無限崩矢』も避けられたし……」


※どんなのかは各自お好きにご想像ください。


 「すごく適当にそれっぽいこと言ってるだけに聞こえるが大丈夫か?」


ヨーデルが心底呆れたように聞く。


「あんたには絶対見せないわよ。見ただけで死ぬから」


「見るだけで死ぬほど虚弱じゃねえわ!」


ヨーデルのツッコミがギルドを舞う。


 「ところで、ロームウェルさんは帰ってきたのかな」


ソーニャちゃんが話題を変える。


「あ、いるはずですよ」


「そう。君たちと話してるのも楽しいけど、私は用事済ませてくるわね。夜ご飯一緒に食べる?」


 「いいっすね!じゃあ俺の行きつけの店行きましょう」


「あんたの行きつけってあの安酒場……」


「俺がお前を連れてくような店にソーニャちゃんを案内すると思ったのか?俺にもここぞという店があるんだよ」


「へえ。知らなかったわ。どこよそれ」


フィンが乗り気で聞いてくる。普段自分がどんなところに連れてかれてたのかはどうでもいいらしい。


 「おむすびショップフレナだ」


・

・

・


 「ソーちゃんが戻ってるとは知らなかったわぁ。わかってたらもっとちゃんとしたの用意したのにぃ」


「ううん。十分よ。久々にフレナの料理を食べられて嬉しいよ」


フレナとソーニャちゃんが会話に花を咲かす。ヨーデルとフィンはソーニャちゃんとはある程度喋ったので、フレナにソーニャちゃんを独り占めさせるように、会話の邪魔をしないようにフレナの料理を頬張っている。


ただ単に食い意地が張っているだけかもしれない。


 「ソーちゃんが出ていって3年だものねえ」


「そうだね。フレナは私と違って老けないね。あんまり年変わらないのに」


「「えっ」」


 ヨーデルとフィンの手が止まる。


 「あれ?どうしたの?」


ソーニャちゃんが困惑しながら聞く。


「あ、あの……フレ……フレナさんっておいくつ?」


ヨーデルが恐る恐る聞く。


 「女の子に年なんて聞いちゃだめよぉ」


「い、いや、ソーニャちゃんと同じくらいってことはさんじゅう……むぐ」


「ヨーデル、女子論の教育を学び直す?」


ソーニャちゃんがヨーデルの口を塞ぎながら言う。


「そ、そんなの習った記憶ない……」


必死の抵抗をするヨーデル。


 「人は見た目によらないってことねえ」


フレナが気にせずに食事を続ける。


 「そういうことよヨーデル」


「は、はい……」


ヨーデル様々な感情が渦巻いてる。


 「そんなことよりね、大事な話があるのよ」


「なんです?」


ヨーデルがソーニャちゃんに聞く。


 「私明日王都に行くことになったんだけど、ヨーデルとフィンにもついてきてほしいの」


「王都ってめっちゃ遠い……船にも乗らないとならないし」


「行きます行きます!王都見たい見たい!」


ヨーデルとフィンのテンションの落差。


 「ヨーデル、君はもっと世界を見たほうがいい」


「行きはいいっすけど帰りが面倒……」


「なんでライアックに帰ってこられる前提で話が進んでいるのかな?」


不穏なことをソーニャちゃんが言う。


「えっ」


ヨーデル驚いてる。


「冗談だよ」


ソーニャちゃんが事前に切られている肉を更に細かくナイフで切りながら言う。


 「あんな話の後だから冗談に聞こえないっすよぉ……」


ヨーデルが泣きそうになりながら言う。


 「何の話?」


フィンが二人の顔を見ながら聞く。


 「男の子には頑張らないといけない時があるって話」


小さく切った肉をフォークに刺しながらソーニャちゃんが言う。少し意地悪な笑みが浮かんでいる。


 「ロームウェルさんにも許可はもらっているからね。旅とはいえ中継街もあるし最低限の準備で大丈夫だよ。私が管理するけど旅費も気にしないでいいからね」










 

 





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。