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19話 

 森を歩くヨーデルとソーニャちゃん。組み合わせが決まったみたいですね。


 「君とデートするのも久しぶりだね」


ソーニャちゃんがヨーデルに色気のあることを言う。


 「魔物が出てこなければ楽しい時間なんすけどね」


ヨーデルが特に気にすることもなく言う。


 「君が守ってくれるでしょ?」


「任せてほしいっすと言いたいところっすけど、ソーニャちゃんのほうが多分まだ強いじゃないすか」


「今思えば皆で君のこと甘やかしすぎたかもしれないね……。私も君の戦闘訓練に参加するべきだったなあ」


「ソーニャちゃんまで参加したら誰が一般教養教えるんすか」


「ふふ。私たちの教育がちゃんと伝わったみたいで嬉しいよ。当時に比べたら雲泥の差だもの」


ソーニャちゃんが心底嬉しそうにヨーデルに言う。


 「もう昔のことは言わないでくださいよぉ……」


「フィンちゃんも知らないみたいだったものね」


「おもしろい話でもないっすからね。聞いても気にしないだろうけど」


「あの子、しっかりしてるように見えてけっこう雑に生きてるわよね。君と気が合うわけだよ」


「俺って雑に生きてるように見えるんすか……?」


ヨーデルが衝撃を受けたかのように尋ねる。


 「雑に生きるって悪い意味じゃないんだよ。何も考えなくても平和に生きられるって意味だもの。


昔は一歩間違えれば死ぬ、張り詰めた生活だったでしょ?」


「今も時々死にかけてはいますけどね……フレナに放り投げられたり」


「私まだ見てないんだけど、フレナは更に大き……成長したのかな」


ソーニャちゃんが本人がいないのに気を利かせて言う。ギルドじゃそれっぽい発言は禁句みたいですね。


 「まあ、見ればわかります」


「そうだね。と言いたいところだけど、あんまりいられないんだよね。ロームウェルさんに会ったらまた出かけないといけないし」


「3年前は教えてくれなかったっすけど、ソーニャちゃん今何やってんすか?」


ヨーデルが興味津々にソーニャちゃんに尋ねる。


 「大人になったら教えてあげるね」


「3年前も同じ事言われたっすよ!俺もう大人っすよ!」


「でもまだフィンちゃんに守られてるんでしょ?同い年なのに」


「あいつが強すぎるだけっす。あの年でAにいけるのは才能っすよ」


「君も素早さだけなら当時からBくらいはあったんだよ?あの足の速さは才能……


いえ、境遇で得た後天的なものかもしれないけど、それを活かせればすぐ……」


 「できることなら殺したくないんです。何も」


「うん。そうだよね。強くなるということは殺せる相手が増えるってことだもんね」


普段のふざけた態度はどこへやら。ヨーデルとソーニャが真面目な顔をしながら会話をする。


 「でも、これから先はそんなこと言えなくなるよ」


ソーニャがヨーデルの目を見ながら言う。心なしか、垂れ目が少し上がったように見える。


 「それに、魔物ハンターをやってるのは本当は自分の役割をわかってるからでしょ?」


「それは……」


「ゴブリンやオークだって生きてるんだよ?街の平和を守るために今までたくさん殺してきたでしょ?」


「それは……」


ヨーデルがソーニャから目を逸らし、もごもごする。


 「わかるよ。君は本当はそんなことしたくないんだよね。


君が弱いままでいるのは『強い相手と戦いたくないから』じゃない。


『強くなると殺せる相手が増える。即ち殺す数が多くなるから』


なんだよね。


『強い武器を使わない』のも『構成をちゃんと学んでこなかった』のも同じ理由だよね」


ヨーデルの精神を保護するように見えて、実は攻撃しているソーニャの言葉が続く。


 「う、うう……」


ヨーデルが目を逸らすどころか下を向く。震えている。


 「君がね、なんだかんだ言いながら本当は


『今まで迷惑をかけてきた街の人への罪滅ぼし』


で危険な分野の魔物ハンターをやってるのはわかってる。


たまたまこの街の周辺は平和だから今の強さでもどうにかなってる。


でも本当は魔物も殺したくない。


強くなると軍や国に要請されて、街の周辺以外でも戦わないといけなくなる。


ゴレックのようにね。


君はそうなるのが嫌なんだよね」


優しく言うソーニャだが、言葉一つ一つで殴られている感覚に陥る。


自分でも考えない、考えなくていいように心の迷路の奥底に置いてきた部分をさらけ出されている。


 「でもね、私が今回戻ってきた理由に通ずるんだけど、この森でも魔族が出たんだよね。


今、実は数年前からなんだけど、そういうことが多いの。魔族が増えてきたのか、


なにか目的があって現れたのかはわからないけど、2種どころか1種、更に上まで目撃情報が増えているの」


「そ、そうなんですか……」


ヨーデルが必死に絞り出すように言葉を発する。


 「この前の魔族はたまたま退けられたみたいだけど、そんな魔族がライアックを襲ったらどうなると思う?


言わなくてもわかるよね。


フィンちゃんやレイドだけじゃどうしようもできない事態が起こるかもしれないの。


もちろん軍でもね」


 「はい……」


「『強い奴らから逃げ回ってたら街の人達が死にました。えへへ』って言える子じゃないわよね君は。


強い魔族が来た時に君はどうするの?」


「それは……」


「『応戦して死んだら仕方ねえ。後のことは強い奴に任せる』って、自慢の逃げ足で皆より先にあの世へ逃げる気?」


ソーニャが挑発するようにヨーデルに言い放つ。


「そんなことないっ!」


ここまで下を向いていたヨーデルがソーニャを睨みつけるようにしながら叫ぶ。


 「うん。そうだよね。君はそんな子じゃないよね。


でもね


『君は現在の世界状況を知ってしまった』


だから


『これからどうすべきか』


を考えなさい」


「は、はい……」


ヨーデルが震えながら小声で返事をする。


 「色々言っちゃったけど、私たちの君への教育がまちがってなかったところを見せてね。


それが親孝行……兄姉孝行?だよ」


ソーニャちゃんが少しおどけたように言う。話はこれで終わりという意味だろう。


 「ただ、この話はまだ誰にも話しちゃだめだよ。フィンちゃんにもね。


いたずらに不安を煽るのはよくないし」


「フィンはむしろ楽しそうにすると思うんすけど……」


「あの子絶対皆に話しちゃうタイプよね……」


ソーニャちゃんが困ったように言う。少し話しただけでわかるフィンの性格。


わかりやすくていいですね。






 





















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