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17話

 「君はいつもボロボロだね。ゴレック相手じゃ仕方ないけど」


ヨーデルの腕に包帯を巻きながらソーニャが言う。


 「あいつだけはいつか殺す」


「ふふ。言い方は物騒だけど、生きる目的ができたのはいいことよね」


ソーニャが複雑そうな表情を浮かべながら笑う。


 「おばさん、あいついつ寝る……いてえっ!」


「『ソーニャちゃん』って呼ぶ約束はどうしたのかなー?」


包帯を強く巻きながらソーニャちゃんが言う。


 「そんななよなよした言い方できねえよ」


「うんうん。じゃあ『お姉ちゃん』でもいいよ」


「おば……ってぇ!!」


包帯の上から傷口を押される。


 「君ね、昔は知らないけど今はいろんな人と暮らしてるんだよ?


もうちょっと協調性を持たないとねー?」


「ぐっ……くぅ……ソーニャ……」


「『ちゃん』は?」


「ちゃん……」


「うーん……。今日のところはいいでしょう」


言葉とは裏腹に、ある程度の成果が出て満足したような顔をしながらソーニャちゃんが言う。


「それよりも、あいつがいつ寝るか教えてくれよ」


「寝てる時でも殺せないと思うわよ。彼はもう少しでS級になれる強さだもの」


「弱いものいじめする奴に強い奴はいねえ」


ヨーデルが吐き捨てるように言う。


「あら?自分が弱いって認めちゃうんだ?」


「悔しいけど、まだあいつには全然勝てる気がしねえ」


「うんうん。男の子としては30点の答えだけど、ちゃんとわかってるのは偉いよ」


「じゃあどうすれば勝てるんだ……?


じじいになるのを待つ……ても勝てる気がしねえ」


「勝たなくていいんじゃない?」


「え?」


「そもそも君は一体何がしたいの?本当にゴレックを殺したいの?」


ソーニャちゃんが優しくヨーデルに問いかける。


 「あいつに認められたい……」


「なら、勝つ以外で認めてもらえる方法を考えるのよ」


「勝つ以外……」


「君の武器は何かな?それを考えればいいのよ」


ヨーデルの治療を終えたソーニャちゃんが薬箱をしまう。


 「まだ時間はあるからゆっくり考えてみなさい。おやすみ」


ソーニャちゃんが自室に戻っていく。


 「武器……?」


・

・

・


 「どうだ。今日こそは俺を殺せるくらい強くなれそうか?」


「お前、よくわかんないけどすごく強いんだってな」


「あ?何の話だ」


「昨日ソーニャ……ちゃんが言ってた」


本人がいないところでは着実に言えるようになってますね。


 「だとしたらどうする?諦めるのか?


泣きながら『ゴレック様にはかないません許してください』


って言えば考えてやるぞ」


 「死ね!」


ヨーデルが隠し持っていた石をゴレックに投げつける。


 「結局その程度か。……うん?」


気づくとヨーデルがゴレックに背を向け一目散に逃げている。


 「てめえなんかの相手をまともにするほうが間違ってた!


俺は逃げる!」


 「……なるほど。だがな」


ゴレックがヨーデル目掛けて走っていく。


 「その程度のスピードで俺に……え?」


「ただ逃げるだけだと思ったのか間抜け!」


ゴレックが落とし穴に落ちそうになる。


 「この程度の罠に引っかかるようじゃギルド筆頭はやれんわ!」


落とし穴に落ちる前に、落とし穴を隠していた土とシートを蹴り回避しようとする。が。


 「え?」


蹴ろうとした土が滑る。


 「くそぼけっ!」


土とシートに油を染み込ませていたのだろう。滑って態勢を崩したゴレックが落とし穴に沈んでいく。


「俺の台詞とるな!でもやったぜ!!」


「甘い!」


完全に落ちる前に、ゴレックが落とし穴の縁に手をかける。


 「逃さねえぞクソガキ!てめえを穴に落としてやる!」


指に力を入れ、ゴレックが穴から這い上がろうとしたその時。


「俺の恨みを思い知れ!」


いつの間にか穴に近づいていたヨーデルがゴレックの頭の上にジャンプする。


 「落ちろ!」


為すすべなく落下するゴレック。そしてもちろん。


・

・

・


 「お前、あんなことしたら自分も落ちると考えなかったのか?」


「てめえに一泡吹かせることだけを考えていた」


ヨーデルとゴレックが穴の底で語り合う。


 「やれやれ。嫌われたもんだ」


「むしろ好かれる要素ねえよ!」


「それはまあそうなんだが……」


ゴレックが頼りなげに言う。ヨーデルが今まで見たことのない表情。


 「今日のところは引き分けにしといてやる」


「足を滑らせて落とし穴に落ちた間抜けが何を偉そうに」


「ところで、俺はこの穴から脱出できるがお前はできるのか?」


穴は5メートルほどの深さだ。普通の子供に脱出は無理だろう。


 「当たり前だろ。脱出できなかったら昨日からこの穴暮らしだったわ」


ヨーデルが土に足をかけ、ジャンプするように登っていく。


 「ほう。前から思ってたが身体能力はなかなかだな」


「ところでよ」


ヨーデルが穴を覗きながら、相手をバカにするような笑顔でゴレックに言う。


 「そんなくだらねー質問するなんてほんとに教養ねえんだなバーカ」


「教養は関係ねえわ!このガキそこでおとなしくしてろ!」


ゴレックがジャンプし、あっさり穴から出てくる。が。


ヨーデルいなくなってる。


 「やれやれ。後はレイドとソーニャに任せるか」


先ほどの怒りはどこへやら。ゴレックは満足そうな顔をしていた。









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