15話
猿 (ヨーデル)に導かれライアックの軍の駐屯地へ向かう一行。
「ところで旦那はソランから来たっつってましたけど、将軍に何の用で?」
「ああ。ソランの軍の者が街の周りを見回り中に魔族と交戦してな。その話をしにきた」
「ヨーデル、そういえばこないだあんたがなにかの気配を感じた時、ソランの方を見てたわよね」
「ほう。ソランとライラックは数十キロ離れてるが、お前あの気配に気づいたのか」
エルギが感心したようにヨーデルを見る。
「へっへっへ。こう見えて気配の察知と逃げ……身軽さには自信あるんでさぁ」
ヨーデルが頭に手をやりながら答える。
「あんたやっぱり小物よね。その喋り方めっちゃ似合うもの」
「大物でない奴は皆小物だ。つまり大多数は小物だ」
「また理屈っぽいこと言うし」
「ところでお前たちは軍の関係者ではないな?」
エルギが雑談になりそうな流れを断ち切る。
「ええ。ギルド所属よ。ただ、私たちは魔物ハンター系だから軍とは多少付き合いがあるのよ」
「どこのギルドだ?」
「ロームウェルギルドだけど、違う街の人だから知らないでしょ」
「ほう。道理で」
エルギが何やら得心する。
「あんたロームウェルさんを知ってるの?」
フィンが興味ありげに尋ねる。
「その感じだと知らなそうだな」
「あんたもしかして昔ギルドにいたとかそんな感じ?」
「いや、ここまでの流れでわかるだろうが、俺は軍所属だ」
「でも旦那、軍所属なのにマークついてないっすね」
「それに軍から支給される防具も着けて……あっ」
「ようやく俺のすごさがわかったかびしょ……小娘よ」
「あんたがすごかろうがすごくなかろうが私が美少女なのには変わりないでしょ!
美少女フィンちゃんってちゃんと……むぐ」
まくしたてるフィンの口をヨーデルが塞ぐ。
「すみません旦那。見ての通り小娘なんで大目に見てやってくだせえ」
ヨーデルが場を必死でとりなす。
「い、いや、気にはしてないんだが、お前、Sを怪獣かなにかだと思ってるのか……?」
「そうよヨーデル!Sだろうがなんだろうが男なら美少女に弱くて当たり前よ!」
「お前、そのノリは身内だから許されるってことを自覚しような」
「ムキー!!美少女に身内もクソもないのよ!」
「それには同意するが、自称美少女が『クソ』はないだろう……」
エルギが呆れたように言う。
「自称じゃないの!」
フィンが駄々をこねるように言う。
「ならば自分からは何度も主張しないことだ。本当の美少女は周りが勝手に褒めてくれる」
「そうだぞフィン。美少女は何も言わず俺に口説かれてればいいんだ」
「何も言わなかったらイエスかノーかわからないでしょ!」
そこじゃない。
「お前ら本当に賑やかだな……ギルド全体がそんな感じなのか?」
「募集要項に『無口と根暗お断り』って書いてあるわよ」
「『攻撃的な奴お断り』って書いておかないばっかりに、フィンやシーラみたいなのばっかり……」
「フレナは穏やかでしょ!」
「そのフレナに大怪我させられてんだぞ俺は!『攻撃力の高い奴お断り』も今度追加してもらおう」
「それはあんたが余計なこと言ったからでしょ!」
ヨーデルとフィンの掛け合いが続く。
「というか、ほんとに募集要項にそんなことが書いてあるのか……?」
「そんなわけないじゃない」
「旦那は見た目通り冗談が通じないっすなあ」
「え……?この流れで嘘だったのか……?」
エルギに動揺が走る。
「あんたそんなんじゃうちのギルドじゃ通用しないわよ」
「せっかくのSなんだから早く馴染んでほしいっす」
「なぜ俺がギルドの新人の体で話が進んでるんだ……」
いつの間にやらヨーデルとフィンの空気に巻き込まれるエルギ。
「最近物騒だし旦那みたいなのが一人いると助かるっす」
「そうよ。私がSになるまでギルドにいなさいよ」
「それならもっともてなしの心をだな……」
エルギがもっともらしいことを言う。エルギ懐かれてる。
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そんなこんなで楽しく……エルギが思ったかはさておいて、軍の駐屯地へ着く。
「世話になったな。後日ギルドへ伺わせてもらう」
エルギが詰め所のドアの前で別れの挨拶を言う。
「私あれ食べたい!ぐんまんじゅう」
「俺はしょうぐんアイスくんがいいっす」
「お前らのノリはよくわかった。そんなものは絶対ない。もう騙されないぞ」
エルギ疑心暗鬼。
「しょうぐんアイスくんはないけどぐんまんじゅうはあるわよ」
「ぐんまんじゅうは『軍』って焼印が押してあるからすぐわかるっす」
「ま、まあ確かにそれくらいならありそうだな」
「うそよ」
身も蓋もない、飾りも洒落っ気もないフィンの3文字がエルギを襲う。
「そんなもんあったとしても普通のまんじゅうと絶対味変わらないっす」
思いがけぬヨーデルの追撃。ヨーデルもうエルギに慣れてる。
「挨拶だけのつもりだったが、ギルドへ行った際にはお前らに稽古をつけてやる……。
モルダー将軍直伝の『猛虎猛攻演舞陣』を土産代わりに渡してやろう」
エルギの手をぷるぷるさせながら言う。エルギ怒ってる。
「え?もこもこなに?」
「旦那、いかつい見た目の割に技名かわいいっすね」
「ぐ、ぐぅ……。助かったよ。またな」
エルギがぐったりしたように肩を落としながら詰め所へ入っていく。
「Sランクでもやっぱり人ね。親しみやすい人で良かったわ」
フィンが悪びれもせずに言う。でも絶対フィンに対する心象は悪いと思う。
「でもルドモンドも最初はこんな感じだったしな」
「稽古つけてもらうの楽しみね」
「お前一人でつけてもらえよ」
「何言ってるのよ。こんなチャンスめったに無いわよ。
Sにあんたのスピードが通じるかどうかで今後が変わるわよ」
「まあ確かに、Sに通用すれば特種にも理論上通じることになるからな……」
「逃げ足がね」
「人の決め台詞をとるな!」
逃げ足が決め台詞ってのもなかなかないですね。




