11話 ヨーデル入院中 ~フィンズサイド~
ルドモンドと別れて街に帰ろうとするフィン。あ。
「そういえば花を摘んでなかったわよね」
フィンが一人呟く。
ルドモンドの熱波のせいであたり一面焼け野原。大木は折れてるし、ろくなことなかったなこの森。不憫。
「あ、あそこは無事ね」
ルドモンドが現れた側の端のほうに無事な花が少し残っている。こっちは戦場にならなかったもんな。
「……よし、じゃあギルドへ一旦帰りますか」
花を数輪摘んでフィンが森を後にする。ただ問題が。
・
・
・
「え?帰った?そりゃそうよね」
クーリエがギルドにいるかと思ったが、フレナにギルドまで連れてきてもらった後に一人で帰ったらしい。
「また明日も来るかなあ。依頼はまだ果たせてないんだけど」
「家は知らないのか?」
「フレナなら知ってるのかも知れないけど、私は知らない」
「じゃあとりあえず瓶にでも入れておけよ。一日二日なら保つだろ」
「そうね」
フィンがギルドにいた男と話している。
「それよりも、珍しく2種相当がいたらしいじゃないか。お前よく倒せたな」
「私からしたら子供みたいなもんよ。軽く追っ払ったわ」
(年齢的な意味で) 子どもとは言わず、フレナが澄ましながら言う。
「なんだよ倒せなかったのか」
「そんな雰囲気じゃなかったしね。実力的には1種の可能性もあったし、殺し合いだったらどうなってたか……」
「詳しく聞かせろよ」
男が興奮したような面持ちで、椅子に座りながらフィンに聞く。
「仕方ないわね。フィンさんの武勇伝を、しかと目に焼き付けなさい」
「見るわけじゃねえんだからそれは違うだろ」
「ルドモンドみたいなツッコミをするな!」
・
・
・
「で、そのルドモンドとか言うのはただの子供だったと」
男がだんだんテンションを落としながら聞く。期待した話とだいぶ違うらしい。
戦闘自体はあっさり終わったし無理もない。しかもどうせ。
「私だから子供扱いできたのよ!BやC、あ、ヨーデルがまさにCだけど、あっさりやられたって言ったでしょ!」
フィンが自分の活躍をめっちゃ事細かに話したんだろうなあと、ここだけで窺える。
そりゃ聞いてる方はテンションも下がる。
「まあわかるさ。俺達じゃその子供でもどうしようもできなかったってことくらい。
魔族の年齢と強さってあんまり関係ないらしいもんな」
男が言う。フィンの実力はわかっているらしい。
「でも、気をつけなきゃだめだよ。ここらへんにも2種が出る時代なんだから。あと……いえ、これはいいわね」
フィンが言い淀む。ヨーデルが感じた強い気については言わなくていいと判断したのだろう。
「気をつける?もっと頑張るの間違いだろう?」
「グスタフ……あんたヨーデルより弱いのよ?」
「なぁに。すぐに追い越すさ」
「あんたギルドに入った時からそう言ってるわよ。もう2年経ってるのよ」
「俺の努力以上にヨーデルが努力しているということだろう」
「このギルドで一番ヨーデルを評価してるのはあんたかもしれないわね……」
・
・
・
一通り話し終わり、フィンが帰ろうとすると。
「ヨーデル死にかけてる」
「いえ、もうそこは過ぎたかと……」
「え?死んだ?」
「そういう意味じゃなく……」
唐突に会話に入ってくるおじいちゃん。
「フォッフォッフォ」
わざとらしい笑い声が響く。
「ロームウェルさん……もう知ってるみたいですね」
フィンが神妙な表情を浮かべながらロームウェルに尋ねる。
「うむ。大変だったみたいじゃな」
「ええ。子どもたちは森への立ち入りを禁止したほうがいいかも」
「それは軍がもうやっておる。我々が出張る話ではない」
ロームウェルが冷たく言う。自分たちはあくまで民間の立場だとわかっているのだろう。
「とはいえフィンよ。お前は曲がりなりにもA級じゃ。もし魔族が出たら協力するのじゃぞ。
それが昇進した者の責任じゃ」
「はい。わかってます」
フィンが珍しく真面目な顔で言う。手にも力が入っているのか拳を握りしめている。
「お前が手柄を重ねれば、このギルドからもついに討伐部門でのSランク初誕生じゃ。補助金がっぽがっぽじゃぞ」
「狙いはそこかくそじじい!」
フィンが相手が目上であることを忘れツッコむ。
「フォッフォッフォ。金がなければヨーデルの入院費も出せんからのう」
そう言って、ロームウェルがフィンに封筒を差し出す。
「これを後日ヨーデルに渡せ」
「なんです?」
「ヨーデルの性格を考えた上での戒めじゃ」
そう言い残して、ロームウェルがギルドの奥へ、杖をつき腰を叩きながら入っていく。
「相変わらず思わせぶりなことばっかり言って」
「ちょっと気になるな」
封筒に興味津々なフィンとグスタフ。
「明日渡した時に一緒に見るわ。またね」
フィンが封筒を懐に入れ帰っていく。果たして気になる中身とは(10話へ続く)




