第四件 ケーキをいただく
ガサッ
やばい。音を立ててしまった。
高奥が辺りを見回すと、アパートへ向かって歩いて行ってしまった。
クソ。やってしまった。仕方がない。切り替えて高奥のことを追いかけなければ。
動揺が出てしまった。果たして高奥とゆっくんとかいう子供はどういう関係なのだろう?
家族というものだろうか?どうにも理解できない。
僕はそんなことを考えながら、一本隣の道にあるビルに向かって歩いて行った。
何かを探しているのだろうか。キョロキョロと辺りを見回している夫婦がいる。
「もう6日目だぞ。あとは警察に任せた方が、いいんじゃないか?」
「あの子が心配じゃないの?なんでそんなことが言えるのよ!」
こんな田舎でも迷子になるとやはり心配になるな。早く見つかりますようにと心の中で祈りながら、ビルの階段を登り、マンションを見る。
自動販売機で買ったコーヒーを飲むと少し気分が落ち着いてきた。まだ動いていないっぽいな。ここから見るに、やはり高奥は隠し子がいる。僕の時は、家は常に静かだった、高奥は違うようだ。それが正しい形かどうかは正直わからないし、いい父親とは言えないかもしれないが、それでも少し羨ましく感じてしまう。カーテンを閉められてしまう前に遊んでいる写真を撮ると、高岡は冷蔵庫から何かを出してきた。ケーキだ。そしてその上には五本のろうそく。果たして依頼人にはなんて伝えるべきなのだろう。事実だけを述べるか、それとも、そう考えているうちに事務所に着いた。
事務所に入るには少し勇気がいるな。と言ってもまだ依頼人はいないのだが。
「やあやあ、久しぶりってやつかな?」
「あっ、蓮香さん。ようやく帰ってきたんですね」
マジでこの人は、これまた妙なタイミングで帰ってきたな。
「いやー、旧友と盛り上がっちゃってさ。オールしてから家に帰って寝てたらこんな時間に」
「あんた大学生ですか?まあそれは置いておいて、今から依頼人の真相を話すんで、出てってもらってもいいですか?」
「え?何で??私仮にもこの事務所の取締役よ?一番いると言っても過言じゃないんだけど」
「あなたがいるとややこしくなっちゃうんで」
「あっそ。じゃあ事件の概要だけ教えてよ。」
しょうがない。という声は心の中にしまっていくとして、報告書を渡す。僕はこれまでの経緯を説明することにした。
「あー、そーゆーことだったのね。わかったわかった。そして、まだ気づいていない君にヒントはいるかい?」
蓮香は写真を見ていた目をこちらに向けて聞いてきた。
「は?何を言ってるんですか?」
「まだ気づいてないのか。私の助手失格じゃないか。まず一つ目。年齢がちょっと合わないってこと。彼の妻、29歳でしょ?報告書にのってるね。そして、高奥は26歳だ。ゆっくんと言う子は今は5歳。そしたら彼が21歳の時に作ったってことになる。起業中のめっちゃ忙しい時期にね。ちょっと無理じゃないかな。彼、海外にも行ってたらしいし」
と言いながら蓮香はタブレット端末を見せつけてくる。そこには、21歳の時に海外へ行っている写真が載っていた。そして、そこから2年間海外支社立ち上げのために現地にいたと書いてある。
「ようやく気が付いたかな?」
蓮香がニヤリと笑う。
「じゃあ、あの子は一体?」
蓮香が何かに気がついた様子でこちらを見てきた。
「それが誰か、わかった。私、昨日まで警察署にいたじゃん?そんときに見たんだよね、誘拐のポスター」
まだ話が見えてこない。どういうことだ?
蓮香はタブレットを操作する。
画面に表示されたのは、行方不明児の情報。
五歳、男児。
特徴:左眉の上に小さなほくろ。
僕は写真を拡大する。
ゆっくんの左眉の上。
小さな黒い点。
背中に冷たい汗が流れる。
失踪日は、6日前。依頼が来たのが3日前なので、十分に依頼人が疑う時間はあったはずだ。
「まだ依頼人は呼んでないよね?もうちょっと仕事をしようか」
こんなときに頭にとある言葉がよぎる。
誘拐からどのくらいの時間が経ったかは子供の親にとってはデリケートな話題である。と
ほくろ




