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探偵蓮香の事件記録  作者: 宴元蒼井


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第三件 ハッピーバースデー

ガッシャーン。

何か音が聞こえる。眠い。

「起きて、起きてってば」

誰の声だ?

僕が目を開けると、そこは知らない天井だった。は?意味がわからない。

ここはどこだ?

目が冴えてきた。

よく見てみるとそこは事務所の天井だ。だが床と壁は知らない。と言うか知りたくない。壁には壊れた本棚が、

床には、、、綺麗にしたばかりの床にはミステリの本が雪崩のように散乱していた。僕の隣には蓮香。いやでも理解してしまう。おおかた、蓮香が壊したんだろう。というか、なぜ事務所で寝ているかは思い出せない。とりあえず最初から思い出してみよう。

〜回想〜

カランカラン 

依頼人が来たようだ。もてなさなければ。

「あれ、二人体制って聞いていたんですけど」

依頼人が不思議そうに聞いてくる。

「あー、今日はちょっと立て込んでて」

また一つ、嘘をつく。けれども、事務所取締役が警察署にいるなんてことは口が裂けても言えない。とりあえず一人で話を聞いてみることにしよう。

伊野会奈保、29歳、今日は浮気調査を依頼しに来たらしい。相手は東谷高奥、大企業の社長。いわゆる成功者ってやつ。

「なんか、最近高お、夫が怪しい場所に行っているんです」

言い直した?何かを隠しているように感じる。

「それは心配ですね。安心してください。

必ず奥様の心配事を解決させて頂きます」

通常、この手の言葉は探偵では使わない。

探偵は稼働時間で料金が決まることが多い。

証拠を掴もうが掴めなかろうが、料金を貰う。だから確定するような言葉は使わないのが普通だ。この事務所は違うが。

「それでは、明日から証拠が見つかるまで、朝7時の出勤から退勤、そして帰宅ですね。承知しました」

青天井か。一人でこなすのは少し難しい案件に感じるな。蓮香が帰ってくるまでどうにかというところか。あと2、3日頑張るか。


「あっ、アイスコーヒーを一つ」

持ってきてもらったアイスコーヒを飲みながら、追尾対象の会社の入り口が見えるカフェに居座っている。そろそろ昼時なので出てきてもいい時間だが。

出てきた。追尾対象から目を離さないうちに一気にコーヒーを飲み干すと、追尾対象の後を追う。ふらりと定食屋に入ると、カレーを頼んでいた。海軍かよと心の中でツッコミを入れつつ、僕も何か注文しなければと思い、サンドイッチを注文した。これまでは何も動きはない。

今のうちにと、さっきまでのことを手帳に記す。

今日は…金曜。

動くなら明日だなと心に置いておく。


まだ日が上りきっていない朝4時ごろ、僕は目をこすり、景気付けに一杯アイスコーヒーを頼むと、高奥が家から隠れるように出てきた。こんな朝早くにどこへいくのかと思いながら、ついていくとそこは、おもちゃ屋さんだった。頭の中にハテナが浮かびながらも入り口を監視していると、大きな袋を持って出てきた。中には、プラモデルが5個入っている。この時、僕は一つの最悪な結論が頭をよぎったが、流石にそんな偶然、あるわけないと思い直し、高奥を追いかけることにした。

鬱蒼とした雑木林を抜けると、少し古びたアパートがあった。

「おじさーん。何それ?」

子どもの頃の記憶が蘇り、胸に鋭い痛みがさす。

「これはね、ゆっくんの5歳の誕生日プレゼントだよ」高奥はしゃがんで目線を合わせる。父親の距離感だ。

僕はいまだに、父親というものを知らない。

あれが家族の距離ということがわかっても、確信が得られなかった。


ハッピーバースデーってやつさ

ゆっくん

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