初陣
朝起きたら、朝ご飯が軽めに準備されていた。昨日同じぐらいの時間に寝たはずなのに、リアはちゃんと朝早く起きて準備をしている。年下とは思えないしっかりした子だ。
「叶翔さん、おはようございます。兄、起きてますか?」と昨日よりも軽やかに挨拶をしてくれた。
「おはよう。レアまだ寝てるみたい」
「まったくお兄ちゃんったら…起こしてきてくれませんか…?」と言われたから俺も苦笑いしながら了承し、レアを叩き起こした。
レアは夢を見ていたらしく、寝ぼけたまま「トップの俺様に何をするぅ!!!」とぽかぽか俺の頭を叩いてきたので、「寝ぼけ野郎にトップも何もあるか」と言って布団を引っ剥がしてやった。
そうして俺らは朝ご飯を食べ、支度をする。
「銃もったな。」とレアに言われ、持った、と返事をした。そして隣で靴を履くリアは初めてあった時の高校生用制服とはまるで違う、いかにも戦闘できそうな動きやすい、かっこよい服を着ていた。
俺は…いつもの私服。しょうがない。これしか無いのだ。まぁ、これもこれで動きやすい、のかな。
そしてレアとリアについていく。連れてこられたのは、知らない、家も少ない、開いた土地だった。
こんなところ、あったんだ。と思う。が、ここは俺の板世界とは違う、ということを改めて感じた。
リアは途中で道を別れた。リアは今から2級の実戦だ。緊張した趣だったが、昨日話したことでリアも少し楽になったのかまっすぐと歩いていく背中が見えた。
俺も、生き残らなければ。
周りを見ると、俺のように意気込んだ人たちが数名、チラホラといた。みんな同じ目的なのだろう。
ちらっと時計を見ると、もう集合時間だ。しかしなにも起こらない。
「銃、用意しとけ」とレアが不意に小声で言う。
そして「俺はあくまで遠くからのいざという時の護衛だから」と言って少し離れた。
レアが遠くに歩いていってから数分、何も起こらない。これが普通なのだろうか‥?そう思ってレアの方を振り向き「レア、さすがにおそいん‥」
と言いかけたその瞬間、
「バンッ」
聞き覚えのあるあの音が聞こえた。俺はさっと体勢を低くして身構える。レアは言ってた。まず銃声の主の位置を大体予想つけておけ、と。
周りを見てみると、やはり同じように皆銃声の主の位置を探っているようだった。
銃痕は見えない。ということは少し遠くから撃ってきたということか‥?それともただ下手なだけか‥‥?その瞬間、もう一発銃声の音がした。
すると、その銃痕は近くの隊員の横をすり抜けていった。
「近づいてきてる」
俺はより腰を低く身構える。どこだ、どこだ。
すると、視界の隅で何かが銃をこちらに向けながら移動するのを捉えた。
俺は勢いよくバッとふりむく。見えた。
しかし相手は走っている。止まっている的とは違う。動きを読んで狙いを定めろ。ためて‥‥‥
今だ
「バンッ」
バタン、という音が聞こえる。命中、そして相手はこちらに銃を向けたまま倒れて、死んだ。
初めて戦って、人を殺した。
いや、殺さなければ殺される。そういう世界だ。
俺は気持ちを切り替える。すると、他の隊員も火がついたのか目をギラギラさせて敵を探しているようだ。すると一気に銃声の音が増える。敵が増えたということは、危険も増す。1人に集中していると1人にやられる。
しかし、先ほど俺はできたのだ。なら今回だっていけるはずだ。
落ち着け。周りを見ろ。敵の数を把握しろ。
銃はすぐそばを通り抜けていく。当たったらけがだけじゃすまない。でもこれが多分敵の最弱の集まりなのだ。ほとんどはこれ以上なのだ。
すると、1人が銃をこちらに向けているのが分かった。俺は振り向いて銃を構えた。しかし、
「‥‥いない」
すると後ろでまた先程と同じ気配がした。
今度こそ、と思い今度は銃だけを先に相手に向け、体をその後で振り向かせて撃った。
しかし、その玉は外れた。
絶対いる。絶対いるのだ。しかし、消える。
なんだ、なんなんだ。
すると不意に後ろから「叶翔!!!危険だ!!そいつは特異技術を持ってる!!!」
と、レアの叫び声が聞こえた。
「と、特異技術‥?!」と俺が叫び返す。
するとレアは「いいからしゃがめ!!!」
という。俺は咄嗟にしゃがみ、敵の位置を把握しようとした。しかし、レアの銃声も聞こえない。
そして再びレアの方を見ると、数々の銃声をさばいているのが見えた。右からのを華麗に避け、撃つ。その次の瞬間左から、上から来る玉をそれぞれバク転で避けたり飛んだりと華麗に避けている。そしてこちらを見ながら苦い顔をしている。
まずい状況なのはひとまず分かった。
多分、レアは強い。だから敵側にも狙われる。
そしてすぐ背後で、あの気配がした。
これ、振り向いた瞬間に殺される。
間に合わない。
一瞬死を感じ取った瞬間。
向けられていた銃口が下に向き、そして落ちた。
そしてガンッ、という鈍い音とともに殴らたような衝動を帯びた後ろの敵が倒れた。
一瞬の出来事だった。
そして倒れた敵の背後には、スラッとした体格の背が同じぐらいの女の子が立っていた。髪はひとつ結びで服の所々にはおしゃれなデザインが施されている。その手はもう銃をしまっており、髪を結わえ直していた。
お礼を言おうと思い、「あの、」と声をかけようとすると、背を向けたまま「邪魔」と言われた。一瞬何を言われたのか理解できなかったが、罵られたことをしばらくして理解した。
「あなた、新人?」その子は冷たい口調でそう言ったので、俺は「え、あ、はい。」と答えた。
「ったく、これだから新人は」と言いながら、彼女は初めてこちらに顔を向けた。その顔はシュッとしてて、小顔、そしてなによりも美人だった。でも、表情は氷の女王のような冷たいものが向けられていた。
すると、遠くのほうからレアが走ってくるのが見えた。「大丈夫だったか、叶翔!!」と心配してくれたので、うん、と頷き返しといた。そしてレアは女の子のほうを向くと、「助かったよ」とお礼を言った。知り合いなんだ。
「もしかしてレアが教育係?」と彼女は言った。
「そうだけど何か?」とレアが返す。
「特異技術も教えてないなんて。指導者として失格じゃない?」
「今回の実戦は下級向けだろ。特異技術のやつが来ることはなかったはずだ」
「実戦なら何事もあり得るっていうのは理解しておくべきじゃないの?」
「そもそもお前がいるなら教えてくれればいいじゃないか」
…本当に今戦闘中なんだろうか…?
周りも気にせず言い合いする二人を見ていると、その後ろからまた敵らしきものが動くのが見えた。
「…あ、危ない!!」と俺がよろめきながらも銃を出し、構えようとしたその時
「ちょっと邪魔」といいながら先程の女の子が一瞬で大きい銃を構えると敵の方を見ることなく一発だけ撃った。すると遠くのほうでうめき声とともに人が倒れる音がした。俺は一瞬のスゴ技に目を丸くしながら彼女の方を見るも、すでにレアとの言い合いに戻っていた。もう何がなんだかわからない。
困惑しきっていたそのとき、後ろから別の声が聞こえた。戦闘中のはずなのに、まるで夢の中にいるような穏やかなトーンの落ち着いた女性の声だった。
「あら、こんなところで2人とも仲良さそうね」




