箱にワのウサぎサんタちと共ィぞンのダムとディー
アリスの甲高い叫びとともに転送された先は、無機質な灰色の壁に囲まれた巨大な廃聖堂だった。
転送された2組ーしろうさぎチームの一馬と瑠璃、ダムとディーグループのめるとみおは睨み合いながらアリスの言葉を待った。
「アリスのお茶カイへようコそ。オ茶カイは最後のヒトりになるマでオワらないワ。最後のヒトりは素敵ナ権利を手ニ入れルノ。そレデはよ〜いすたぁト」
「めるを傷つけるやつは……殺す。」
めるへの想いと相手への殺意を隠そうともせずに低く言い放つみお。その手には粗末な鉄パイプが握られ、狂気と依存で真っ黒に染まった瞳を動かし一馬・瑠璃兄妹を視界に入れる。
「みおったら〜気張りすぎ!サクッと終わらせてスイーツバイキング行こーねっ」
「める……勿論。あんな弱そうな奴らすぐ潰すよ……」
その瞬間、みおの身体からギチッ、と嫌な骨鳴りが響いた。
自身の痛覚を麻痺させ、筋肉や靭帯の限界を超えた肉体出力を叩き出す特攻スタイルのみおの超能力だ。
「シッ……!!」
爆風のような踏み込みとともに、みおが一瞬で距離をつめる。目にも留まらない速さで振り下ろされる鉄パイプ。
「瑠璃っ、にいちゃんの後ろに下がってろ!!」
一馬が叫びながら瑠璃を庇うように前に飛び出した。手に持った短剣で鉄パイプを受け止めるが限界突破したみおの異常な筋力に押し負け、一馬の腕の骨が嫌な音を立てる。
「…………っくっ………」
「おにぃちゃんっ…!??」
後ろで瑠璃が顔を青くして悲鳴をあげる。
一馬はボロボロになりながらも、血反吐を吐いてみおの足にしがみついた。
「瑠璃には触ら……せ、ないッ!『偽りの好意』!!」
一馬が発動した精神干渉の超能力が一瞬みおの動きを鈍らせる。だがめるのことで頭がいっぱいで狂乱するみおは力一杯、一馬を蹴り飛ばし、容赦なく鉄パイプを叩きつけ続けた。
「死ね死ね死ね死ね、俺とめるのために死ねっー」
「……くっっ…る、りには指、一本触ら、せない…」
何度も血を吐き、身体を叩き折られながらも、一馬は体を張ってみおの猛攻を一身に受け止める。自分は瑠璃の兄だという矜持だけで瑠璃を守るため盾になり続けた。
そして——
「あ……ぁ……」
目の前で血みどろになって自分を守り続ける兄の姿を見る瑠璃の瞳から正気が完全に吹き飛んだ。
「私の……あたしのお兄ちゃんを……傷つけるなぁぁぁッ!!」
瑠璃の狂気が暴走する。
瑠璃の超能力『リボン操術』。白いリボンが莫大な能力の奔流によって急速に伸び、太く硬質な帯となって空間を埋め尽くした。
「………はっ……!?」
みおが反応する隙も与えず伸びたリボンがみおと…その背後にいためるの2人を逃がさないようガッチリと巻き上げる。
「な、なんだこれっ!めるから離れろッ!!」
みおがリボンを解こうと暴れるが瑠璃の狂気には歯が立たなかった。
「許さない……許さない許さないッ! お兄ちゃんを虐めた奴らなんて……壁のシミになっちゃえぇぇぇッ!!」
瑠璃がリボンが解けてばらついた髪を振り乱しながら両腕を振り上げる。巻き取られたみおとめるの二人の身体が、宙へと高く吊り上げられた。
そして——ブンッ! ブンッ!!と恐ろしい風切り音を立てて、二人の身体は空間を狂暴に振り回される!
「がハっ……!?」
「きゃあああッ!?」
「死んじゃぇぇーッ!!」
瑠璃の絶叫とともに、振り回した二人をそのまま頑丈な廃聖堂の石壁へと全力で叩きつけた!!
ドカァァァンッッ!!!!
激しい衝撃音が轟き、石壁に巨大な亀裂が走る。
「が……ッ……ゲホッ……!!」
壁に叩きつけられ、血を吐いて崩れ落ちるみお。
だが、本当の惨劇はその直後に訪れた。
「つ……あ……っ……」
少し離れた場所で、リボンに巻き込まれて一緒に壁へ叩きつけられためるの身体から、ミシリ、と嫌な音が響く。
めるの超能力は『痛覚・傷の完全共有』。めるはずっとみおが受けるはずだった限界突破の自傷ダメージ、一馬への攻撃による反作用、そして今、二人まとめて壁に叩きつけられた時の衝撃も2人分受けていた。その全てのダメージと痛覚が、一気にめるの肉体へと流れ込んだ。
◆
ぁあ、、やらかしちゃった。めるは薄れてく意識の中でみおのことを考えた。初めて会ったのは13歳のとき。みおもあたしも家に居場所がなくて、路上生活している家出少年少女のグループに入っていた。だけどある冬の日みおがたった1人で雪の中ぼんやりと空を見つめているのを見た時声をかけてしまった。「ねぇー寒いでしょっ肉まんあげるっ」
それからみおとたくさん話すようになって気づいたらみおが自分の中で1番になっててニコイチとか言われるようになっていた。この恋人でも家族でも友達でもないのにお互いのことを1番に考えるような関係が心地よかった。ずっとみおは言ってた。俺がめるを守るってめるを傷つける奴は全員潰すって。あたしも同じこと思ってたよ。みおはあたしが絶対守ってあげなきゃみおが傷ついたらお返ししないと特攻するみおの痛みを半分肩代わりしてあげなきゃって。みおは寂しがりだから本当に心配だけどーーーごめん、みお。あたしみおがいない世界なんて考えられない。あたしが横に入れなくてもみおには生きててほしいーーー
◆
「め……る……?」
血みどろのみおが、かすむ視界でめるを見る。
「ごめ……ね……みお……っ」
めるの全身の皮膚から血が吹き出し、内臓と骨が限界を迎えて砕け散る。
耐えきれなくなっためるの身体が、ドサリと血の海の中へ倒れ伏した。
「める……? 嘘だろ……める……ッ!?」
みおが瓦礫をかき分け這い寄り、動かなくなっためるを抱き起こす。
「めるめるめる。嘘だよね、、俺の傷までめるが引き受けてくれてたなんて、、知らなかったっっ……俺がめるを守るって言ったのに……ッ俺がずっと守られてたなんて……!」
めるは何も言わなかった。そして、がくり、と首が傾ぎ、めるの手が冷たい石畳へと落ちた。
「あああああ……あああああああああああッッ!!!!」
愛する者を守ると誓ったのに守られていたのは自分という地獄と絶望そして惨劇。
みおはめるの遺体を抱きしめたまま、うつろな目でただ立ち尽くす人形となった。
「ウフフうふ、うふふ、ダムとディーチームの負ケね、、片割れを失っタ双子ハどうナルのかシラ??なにワともアレ勝シャはしろうさぎチームっ!」
アリスの歓声が響く中、ボロボロの一馬と、リボンを握りしめて息を荒げる瑠璃。
箱庭の兄妹は、悲惨な勝利を手に次なる地獄へと進むのだった——。




