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第5話 私の、出生 前編

 狩人長に連れられた私は、議場に通される。

 部屋内にら、3人の影が椅子に座っている。

 御三家の当主、村長を務めるフレデリック・デュモン。  狩人長のアルフレッド・フォール。 そして、巫女のキキばぁことキキ・ユニヴェールが座っていた。

 私は、目の前に置いてある椅子に座ると3人に向き直る。


 「大変な事態になったね。 力が、目覚めてしまった」


 そう言って村長は、机に両肘を立てて両手を口元に持ってくる。 


 「君も、なぜこうなったかは知っているかね?」

 「……いえ。 私は、何も聞いていないですね」

 「では、狩人長。 彼女に説明を」


 村長は、狩人長に目を向ける。

 狩人長は、目を瞑ったまま腕組みをしており、口を開けて話を始めようとした時、キキばぁが待ったをかける。

 

 「村長。 説明は私にさせてくれないかい? 私も今日まで、アリスに黙っていたんだからね」

 「キキ様が言うなら、構わんよ」


 キキばぁは、黙って私の方を向くと、声量を抑えて話し出す。


 「黒い靄を生み出したらしいじゃ無いか。 それは、覚えているかい?」

 「……ええ。 とてつもない力だったわ。 危うく、森が呑まれる程だったわ。 あの霧は何? 魔法なの?」


 私の質問を聞いてキキばぁは、少しの間考えた後に再び話し出す。

 

 「……アレが、魔法か……それとも別の力かは、私達にも分からないんだよ」


 キキばぁも、あの力が何かは分からない様だ。 だが、もし魔法では無いのなら……今まで、魔法など使えなかった私が、突然使えるのも納得できる。

 

 「それに……私達が知っていて、アリスには知らせていないものがあるんだよ。 出来れば、アリスには何も知らずに、良い人生を歩んで欲しかったんだけど」


 キキばぁは、ゆっくりと話し出す。


 「まず、アリスの両親なんだけどね……狩猟中の事故で亡くなったと話したけど……アレは、嘘なんだよ」

 「……嘘?」


 キキばぁは、頷く。


 「アリス。 貴女は、私が森の奥で見つけたのよ。 厳密には、そこで座っている狩人長のアルフレッドも、一緒だったけどね」

 「……見つけた? それって」

 「ああ。 188年前、まだ私が、巫女兼狩人として動いていた時さね」

 「…………」

 

 キキばぁは、詳しく話してくれた。

 それは、十数日も大雨が降るという異常な日が続いた。

 ある日、季節外れの雪が降り出し、キキばぁ達は森へ調査に出向いた。

 森の方から、異常なマナを感じとり、巫女でもあるキキばぁと狩人長が調査に出向いた。


 「異様なマナが、満ちていると考えられた中心地には、雪の降る中で泣く赤子。 アリスがいたのさ」


 そして、キキばぁ達が私を発見したと同時に、大型動物が現れて赤子だった私に飛びつく。 キキばぁは咄嗟の事に助けは間に合わないと思ったらしい。


 「でもね。 結果は、違ったのさ」

 「……」


 突然、赤子の周辺から霧が現れたと思ったら、たちまちソレは黒霧と変わり大型動物を飲み込んだと言う。

 そして、黒霧は赤子を囲み溶ける様に消えていったと話す。


 「これが、真実さ。 雪の降る森で、アリス……アンタを拾った話さ」

 「……」


 キキばぁの言葉に、私は何も言葉が出ない。

 何か、とんでもない話が出るとは思っていたけど、力どころか自身の生まれ自体が特殊だったなんて。


 「あの時、アルフレッドはその力を危険視していてね。 どうするかを話し合ったよ」


 狩人長は、ゆっくりと目を開けて私を見る。


 「あんな得体の知れない力。 場合によっては村を滅ばす可能性がある。 ましてや気候にも影響を与える力を持った危険因子だ。 あの場で、射殺すのが妥当だろう。 まぁ、巫女様は違っていたがな」


 狩人長は、キキばぁを睨む。 キキばぁも、睨み返している。

 狩人長は、更に言葉を発する。


 「実際に育てて見ないと分からないし、巫女様が引き取ると訴えるから、私もとりあえずは今まで黙って見てきたが……今日の出来事で、私の考えは間違っていなかったと証明されたよ」


 言い終わると、狩人長は私を睨む。 その眼は、獲物を仕留めようとする狩人のソレだ。

 

 「証明されたって。 確かに、黒い霧を操って魔獣を倒したけど……村が、危険に陥る事はしてないわ」


 私はそう言うと、狩人長は小さく溜息を吐く。


 「貴様は、危険な事をしていないと言うが……あの霧を制御出来るのか? 今、少しだけ霧をだして見ろと言われて、本当に少量だけしか出さない自信はあるのか?」

 「そ……それは」


 正直、それは分からない。 もし、再び暴走したら、間違いなく部屋の中は惨事だろう。

 

 「……あの時、霧が治まらなかったらどうなっていた? 下手したら、森や村を飲み込んでいたかもしれない。 そうなっていたら、貴様は責任を取って自ら命を絶ったか?」

 「……」

 「自分で制御出来ない過ぎた力など、危険以外何と呼ぶ? この様な者など、粛清か追放した方が良いくらいだ」


 私は何も反論が出来ない。

 キキばぁが口を開く。


 「黙って聞いてると、危険だ危険だって。 アンタの孫娘を救ったのは誰だい? アンタが、危険だと言う黒霧を行使したアリスじゃないか。 駄目な所ばかり見て、良いところは決して見ないんだね」

 「孫を助けてくれたのは感謝している。 だが、一歩間違えれば大惨事になっていたのは事実だ。 そちらこそ、危険と言う事実から目を逸らさないで貰おうか」


 2人の会話がヒートアップして行き、村長が間に入る。


 「まぁまぁ、2人とも。 危険なのは事実だが……実際、何も起きなかった。 コレは、彼女が制御出来る可能性を秘めていると私は考えます。 お互い、思う所があるのも分かりますが、もう少し冷静になれませんかの?」


 「……」

 

 村長の、言葉を聞いて2人は静かになる。

 村長は、話を続ける。


 「霧を、完璧に制御出来れば問題は無いだろうし……彼女が悪用しないのであれば、命を取るのは行き過ぎだと考えるのう。 今まで、見守っていた身からするとその選択は余りにも早計」

 「……だが――」


 村長の言葉に、狩人長は反論しようとする。


 「わかっていますよ。 仮に最悪な事態になった時……その時は、私が決断を下しましょう。 それが、彼女やキキ様にとって残酷な結果になろうと、それが皆んなを守る為なら……ね。 それなら、問題はありませんね?」

 「……」


 狩人長も、キキばぁも沈黙する。 2人の沈黙を肯定を取った村長は、手を叩く。


 「2人からは何も無い様ですし、今日はコレで終わりにしますか」


 村長の言葉を聞いた狩人長は、立ち上がると出口に向かう。 私の横を通る時、一瞬立ち止まる素振りを見せた後、黙って出て行く。

 狩人長が出て行って数秒後、村長は気まずそうに笑う。


 「とりあえずは、何事も無く終わって良かった」


 村長は、そう言うと私を見る。 続いてキキばぁが溜息を漏らす。


 「本当だよ。 アルフレッド以外にもアリスを危険視する者や、不安に思う者が出るかもしれない」

 「そこは、私が説得しよう。 皆んな未知のモノに怯えているだけで、時間が経てば解決するじゃろう」


 2人が話している中、私はある質問をする事にした。


 「ちょっと聞いて欲しいんだけど……良いかしら?」

 「? どうしたんだい?」

 「関係してるか分からないんだけど――」


 私は、魔獣討伐の時に見た夢の話を、2人に聞かせる。

 

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