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第4話 未知なる、異能の覚醒

 私は、黒い靄のかかる薄暗い空の下にいた。 足下には海が広がっている。 私は、夢だとすぐに分かった。

 それと同時に、自分がここに来る前の記憶が蘇る。 魔獣に、体を握りしめられた所までは覚えている。

 私は、そのまま魔獣に殺されてしまい、この場所に来たのではないかと考えていると頭に痛みが走る。 その痛みは、強さを増していき額を抑える。


「いきなり……何なの?」


 まるで頭が割れる様な痛みに、私はまともに立っていられなくなり、片膝をついてしまう。

 そして、目を開けると目の前に巨大な姿が目に入る。


「……!? 大きな……蛇?」


 蛇の様な怪物は、赤い目に鉄か岩石の様な体。 腕にあたる部分は、ヒレか翼か分からないが大きく広げている。

 頭痛でまともに動けない私は、この大蛇に食べられると考えたが、特に何もしてこない。

 そいつは、私を見ているだけだ。


「ハァ……ハァ……。 何よ……何か私に、用があるんでしょ?」


 すると、怪物は、頭を下げて目の前まで迫る。 やつの鼻息で、私の頬を撫でる。


 《――私に、触れなさい――》

 

「!?」


 この時、私の中に何かの声が響く。 否、声というより頭に直接語りかける感じだ。


 《――死にたくないでしょ? 私に、触れなさい――》


 どうやら、こいつは私に触れて欲しい様だ。 だけど、死ぬとはどう言う事なのだろうか?


 《――獣に勝つ力が欲しければ――友を助けたいなら、早くこの私に触れなさい――》


 獣……魔獣の事だろう。 この声を信じるなら、まだ私は死んでいないのだろうか?

 だが、触れるだけで本当に、魔獣に勝てるのだろうか? 信じられないが、このまま死ぬのなら、この声に従っても良いかもしれない。


「はぁ……はぁ。 本当に……助かるなら、触って……やろうじゃない」

 

 私は、恐る恐る手を伸ばして、怪物の口元に触れる。

 すると、視界が真っ白になっていき、体が溶けていく様な感覚になる。



 ――――♢――――


 私は、意識が戻る。

 なぜが、地面に立っており魔獣が吠えていた。

 よく見ると、魔獣の腕が肘から先が無くなっており、血が流れ出ている。

 私は、反射的に腕を魔獣に向ける。 なぜか、分からないが無意識に体が動く。

 すると、魔獣の足下に漆黒の靄が生まれ、そこから鋭く槍の様なモノが何本も現れて魔獣を貫いた。

 黒霧は、自分のイメージした通りにいる動き、攻撃を繰り出している。

 

「これは……私が操っているの?」

 

 魔法が使えないはずである私が、目の前で黒霧を操っている。

 そんな、現実離れの現象が起こっている。


「……それにしても、この力」


 仮に、この力が魔法だとしたら、これは私の知る魔法とは別物だ。

 だが、今は考えている場合では無い。 今は、魔獣を屠るのが優先だ。

 私は、傷の再生をする魔獣を見つめる。

 局所的な攻撃では、再生されてしまう。 なら、再生が追いつかない様に、全体を攻撃すれば良い。

 私を中心に辺り一帯の地面が黒くなり、その黒霧は魔獣の足から徐々に飲み込んでいく。

 魔獣も、激しく黒霧に抵抗するが、黒霧は魔獣の全てを飲み込んだ。

 私は何故か、この黒霧の扱い方を知っている。

 使った事が無い筈だが、身体が覚えているかの様だ。


「……終わったわね」

 

 そして、周囲の地面に広がった黒霧を消そうとした時、

 突然、頭が割れる様な痛みが走る。


「! が! がぁ!」


 私は、膝をついて頭を抱える。 同時に、黒霧は拡大し、周囲の木々が枯れていく。

 青々としていた葉は、茶色く変色していき、枯葉となり散って行く。

 私は、どうにか黒霧を制御しようとするが上手く扱えない。


「このままじゃ……!?」


 私は、クロエの方を見ると、枯れ枝が曲がりいつ折れてもおかしくない状況だ。

 もし、あのまま霧に落ちればどうなるのかは分からない。 


「く……クソ! 治まりなさいよ!」


 だが、ついに枝は折れてしまう。


「!」


 クロエは、そのまま黒霧の中に落ちていった。


「まって! やめろ! 治まれ! 鎮まれよ!」


 今の私は、この黒霧に恐怖など湧いてはいない。 逆に怒りに変わっている。

 この黒霧に対する怒りは、それを制御出来ない自分自身に向く。

 そして一瞬、あの怪物の姿が浮かぶ。


「止まれぇぇぇ!」

 

 叫ぶと、黒霧の勢いは治っていき、私の怒りからなのかは分からないが、黒霧は溶ける様に消えていく。

 落ちたクロエの姿が現れ、私は即座に駆け寄る。

 

 「クロエ!」


 私の声に反応したのか、微かに反応する。

 見たところ、外傷は無さそうだが一度、診てもらったほうが良いだろう。

 私は、周囲を見渡すと黒霧の影響で、草木は枯れており、魔獣は身体の水分を抜き取られたかの様な姿となっている。


「終わった……のよね?」

 

 周りを見渡していると、鼻の上になにか冷たい何かが触れる。


「‼︎ これは……雪?」


 季節外れの、雪が降っている。 吐く息が白くなっており、気温が下がっているのが分かる。

 私が、空を見ていると、後ろから気配を感じて振り返ると、1人のエルフが立っていた。

 その人物を見て、私は驚く。


「!? 狩人長?」

 

 その人物は、アルフレッド・フォール。 村の狩人達をまとめる狩人長であり、クロエの祖父でもある。

 そもそも、狩人長自身が出向くなど殆どなく、大抵は他の狩人が対処する。 狩人長が、直々に来たと言う事は、それだけ今回が重大な出来事だったのだろう。

 狩人長は、空を見る。 そして、枯れ果てた魔獣の亡骸を見る。


 「雪に、干からびた魔獣……か」


 狩人長は、私を睨む。 


 「やはり、黒い霧が目覚めたか」

 「え? 黒い霧? それって、どういう意味でしょうか?」


 私の言葉に反応せず、彼はクロエの方に行くと軽々と担ぐ。 そして、私に背を向けえる。


 「私と一緒に、来てもらうぞ。 変な気は、起こすなよ?」


 変な気? 彼は何を言っているの?

 それに、目覚めたってどういう事?

 そんな思いを抱きながら、私は狩人長の後について行く。

 

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