27話 戦いの、終わり。
私は、首を掴まれ壁に押し付けら足が地面から浮く
グールは、私の首を折る為き力を込めていくが、私は彼女の手首を掴む。
「……気安く、触るなよ。 さぁ、死ねよ」
広場に、折れる音が響き渡る。 満月がグールを照らし出す。
だが、折れたのは首ではなく、グールの右手首だった。
彼女の手首が、握り潰されている。
「……は?」
グールは、何が起こったのか分からないような表情をしている。
そして、折れたのが自分の腕だと認識すると、唸り声を上げて私から離れる。
私は、解放され咳き込む。
「ごほっ……‼︎ ごほっ……‼︎」
「お前……私の手首を」
「……」
私は、顔を上げて彼女を見る。
グールが、睨んでいる。
「どうせ、治るんでしょ? なら、無駄口叩かずさっさと来なさい」
私は、エリザヴェータに近づく。
「……無駄口だと? ふざけやがって。 その顔をズタズタにしてやるよ!」
グールは、一瞬で距離を詰める。
彼女の攻撃が、風を切り裂き瞬時に迫る。
私は、迫る彼女の腕を掴む。
「⁉︎ な……何?」
グールは、腕を掴まれたことに驚く。 あの攻撃速度は反応は難しく、仮に掴めても勢いに持っていかれて止めることは出来ない。
だが、その攻撃を易々と止められている。
「……貴女の再生と、私の攻撃。 どっちが上かしら?」
「何を、言っている? ――!」
私は、掴んだ腕を思いっきり引っ張る。
彼女は、抵抗する間もなく私の方に来ると、そのまま彼女の顔面に拳を叩き込む。
私の拳は、彼女の顔を歪ませた。
「……ぶ!」
グールは、遠くに吹き飛ばされる。
彼女は、顔面から血が噴き出し、口からも血が垂れている。
「ど……ど、どうな……てるの? 明らかに……力が強くなってる?」
エリザヴェータは、よろめきながら立ち上がり顔を上げる。
足は、産まれたての子鹿のように震えている。
「次は……これ」
私は、ゆっくりと歩き3歩目で一気に詰め寄っと通り過ぎる。
通り過ぎる瞬間に、彼女の眉間・首元・みぞおちの3ヵ所に打ち込む。
「がぁ……ぁあ…….!?」
グールは、声も出せないくらいの攻撃によろめく。 あれでも倒れないなんて、大した奴だわ。
「あ……う! ま、ま……まったく…………攻撃が見えなか……た」
彼女は、体を少し捻り肩越しに私を見てくる。 私は、そんな彼女を黙って見つめる。
「……」
「くっ! 幽鬼族である私を……」
彼女は、歯を食いしばり、拳を握り震える。 余りにも強く握った拳からは、血が滴っている。
「――見下してんな!」
グールは、振り返りざまに私の顔面を殴る。
広場に重い音が響き渡り、頬に拳がめり込む。
だが、彼女の渾身の一撃を受けたが私はまったく動じない。
子供が、大木を殴ったかの様に攻撃は通ってはいない。
「――!? な、何で? お前は――」
「今まで、沢山の人間達を行方不明にしてきた貴女は今夜……終わるのよ」
「!? なに? !?」
私は、彼女の首を掴むと、拳を握ると力を込める。
グールはなんとか振り解こうとするが、更に力を込めて逃げれないようにする。
このまま、首から上を破壊してやる。
私が、彼女の顔を打ち抜こうとする。
「!?」
突然の、激痛が頭と両目に走った。
「!? 何で……こ、こんな時に」
私は、眼球と頭を両手で抑える。
その痛みは、最初は非常に冷たくも感じたが、今は焼ける様な痛みを伴っている。
特に目の痛みが酷く、燃えた木片が目の中にあるかの様だ。
「あ……が……があぁ!」
私は、片膝を付いて片目を抑え何とか状況を見る。 前方から、足音が近づいてくる。
「――何だかよく、分からないが。 どうやら、運は私に味方したようだな」
そして、腕を振り上げる。 私は、余りの苦痛で全身から嫌な汗が吹き出しており、回避行動も不可能だ。
私が、肩で呼吸をしていると、風が吹き出し汗のせいでとても冷たく感じる。
「幽鬼族に対して、調子に乗りやがって。 まぁ、これで終わりだ」
グールが勝ち誇った表情を見せる。
瞬間、彼女の攻撃が私の顔目掛けて襲いかかる。
激しい痛みに耐えながら、私は顔を動かして攻撃を避ける。
だが、上手く避け切る事は出来ず、爪が口に当たる。
口から右耳付近まで、痛みと熱さが広がる。
血が飛び散り、口に鉄のような味が拡がる。
「! …………ぐっ……!」
右頬の痛みは、眼球や頭痛に比べればまだ耐えられる。
「……まだまだ!!」
「⁉︎ コイツ! まだ、元気があるのか!」
私は、声を上げながら彼女の顔を掴むと、そのまま地面に叩きつける。
この衝撃により、地面は陥没しヒビが走り砂煙が舞う。
この、異常な力には感謝しかない。
「……がっ! クソが!」
グールの怒りが高まっている。
再生して、反撃される前に……攻撃するだけだ。
「……まだ、終わらないわよ」
私は、仰向けの彼女に跨り拳を振り上げる。
グールは、赤く光る瞳をコチラに向けて、血の流れる口角を上げる。
「へっ!……なんて、眼してんだよ。 まるで、化け物だ」
「……化け物は、貴女でしょ」
私は、拳を振り上げる。
後は振り下ろすだけだ。
私が、力を込めて彼女の顔を見ると彼女の口内が明るくなってきている。
そして、熱風が顔に当たった瞬間、彼女は口を大きく開く。
赤い光が強くなり、顔に感じる熱も急激に高まる。
「⁉︎」
爆炎に包まれ、辺りが明るくなる。
そして、炎の発する光がグールを照らす。
グールは、してやったりの表情をする。
「ははは。 バカめ。 奥の手は、最後まで取っておくのよ」
グールは、勝を確信しているが、炎が収まるにつれて表情が無くなる。
私が、燃えるどころか火傷もしていないからだ。
「な? 何でだ? なぜ、私の魔法が効いていない?」
グールは、そう言うしかなかった。
そして、彼女は理解する。
対峙しているエルフには、勝てない事を。
自身の力も、魔法も通用しない事を。
「……面白いモノを、見せてあげるわ」
私がそう言うと同時に、漆黒を生み出す。
今は、暴走する事は無いと確信している。
「なんだ……それ?」
漆黒は、刃の形変えてグールの首に当てる。
グールは、自分がどうなるか理解している筈なのに、笑顔になる。
「糞、食らえよ。 化け物」
その言葉を放った直後、漆黒の刃が首と胴体を斬り離す。
首を斬られたグールは、再生する事なく体は灰の様に変わっていく。
私は立ち上がる。
風によって飛ばされて消えていくグールだった灰を、ただ見つめる。
「終わった……わ」
あの、グールを倒す。
もし、私がただのエルフだっあら狩られていたのは自分だったろう。
「……」
私は、自身の傷の確認をする。
胸元と、右肩の傷が癒えてきている。
この2か所も酷いが、右頬の傷が気になり、恐る恐る手を触れる。
「やっぱり」
頬の傷も、癒えている。
魔獣の時も、折れた足が治っていたからまさかとは思ったけど。
これも、漆黒の力なのだろうか?
「……終わったみたいだな」
「⁉︎」
突然の、声に驚き振り返る。
クラリーチェが、倒れたまま顔だけ私に向けている。
「良かった、生きてたのね」
「あぁ、生きてるよ。 めちゃくちゃ熱かったけど、死を覚悟する程じゃなかったな」
「その状態で言われても、強がりにしか聞こえないわ」
仮に、死を覚悟する程ではなくても、明らかに重傷だろう。
私の言葉を聞いたクラリーチェは、苦笑いをする。
「確かに、この状態じゃあ強がりに見えるな」
笑う彼女は、まだ火傷が残っており殆ど癒えていない。
クラリーチェは、私の方を見てくる。
「そっちこそ、血だらけだけど傷は大丈夫なのか?」
「ええ。 傷はもう癒えてるわ」
「そうか。 それは、良かった」
ここで、疑問が生まれた。
彼女も、私みたいな境遇の筈だ。
だが、なぜか私のように傷を回復をしていない。
「貴女も、私みたいに回復しないの?」
「回復? そう言えば……変だな。 昔、火傷した事あったけど、ここまで傷が癒えるのが遅かったかな」
「……」
私と彼女は、何か違うのだろうか?
私の漆黒が、特別?
考えても、答えは出なさそうだ。
「……!?」
考えていると、遠くから足音が聞こえてくる。
顔を向けると、遠くから兵士達が来る。
彼らは、周りの状況に驚いている。
荒れた広場に、傷だらけのエルフや妖精がいたら、驚くのは無理もない。
そして、1人の兵士が私達の所に来る。
「大丈夫ですか? 物凄い爆炎を見たから来たのですが、何があったんですか?」
爆炎は、グールが放った魔法だろう。
クラリーチェは、兵士達を見る。
「説明しても良いけど、ちょっと長くなるな」
クラリーチェの言葉に、兵士達は顔を見合わせる。
「傷の手当も必要でしょうし、場所を変えましょうか」
「どこに行くのかしら?」
「私達の、王都防衛団の施設です。 そこで
、手当と朝まで休息を取ってから話を聞きましょう」
私達は、兵士達に連れられる。
向かうのは、彼らの防衛施設。




