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23話 広場の、宿屋

 広場に戻った私は、辺りを見渡す。

 クラリーチェは、まだ広場にいない様だ。


「どうしようかしら」


 また、王都の探索も考える。


「……あ、あの看板」


 1つの看板が目に入るよう。

 ベッドが描かれており、宿屋とすぐに分かった。

 外観は、村の宿屋と較べても立派な造りになっている。


「……」


 今回の宿屋は、ここにしようと考える。

 クラリーチェが居ないが、先に部屋を借りて荷物を置こうと考え宿屋に入る。 武器屋と同じで鈴の音が小さく鳴る。

 屋内は、なんだか薄暗い。

 周りを見渡すと、テーブルや椅子が置いてあり、前の村で見た酒場とは違っており驚く。

 奥に受付があり、私は受付まで行くが誰もいない。


「もしかして、誰もいないのかしら?」


 私は、周りを見渡すとが誰もいない。


「……ん? これは?」


 受付の上に小さな鈴が置いてあり、横に立てかけたボードが設置されている。

 ボードの内容は《受付が無人の場合は、鈴を鳴らして下さい》 と書かれている。


「これを、鳴らせば良いのよね」


 私は、鈴を持つと小刻みに振る。

 透き通る高音が響く。


「……」


 だが、特に反応が無い。 静まり返る空間の中に、私だけがいる様な状況だ。


「? 誰も、来ないわね。 仕方ないわ、他をあたりましょう」


 私は、宿屋を出ようと振り返ると2階に続く階段が目に入る。 よく見ると、薄暗い階段に女性の白い顔が浮かび上がっており私を見ている。


「! ひっ!」


 私は、後退りする。 

 私は、階段を降り近づいて来る女性に警戒していると、女性は頭を下げてくる。


「お待たせして、申し訳ありません。 お客様。 現在、人が少なく私だけで対応しておりまして、遅くなりました」


 人が少ないのは、行方不明事件の影響だろうか。


「いや、大丈夫よ。 それより、ここで泊まっても大丈夫かしら?」

「……はい。 お部屋は空いていますので、問題はありません」


 受付の女性は、淡々と話す。

 市場や、武器屋の店主と真逆だと感じた。


「……2階の階段を上がって1番奥の部屋になります。 こちらは鍵になります。 鍵は、お客様で管理お願いします」

「分かったわ。 ありがとう。 あ、それともう1人居るんだけど――」

「2人分の料金を払って貰えれば大丈夫です」


 私は、料金を払うと、受付近くの階段に向かい2階へ登る。 2階廊、古いのか歩く度にきしむ音が響く。


「――それにしても」


 さっきの受付嬢は、感情がない感じで喋っていた。

 それに、顔は青白く生気も感じられない。

 少し、不気味に感じる。

 そんな事を考えながら、奥の部屋まで歩いていると途中で何か物音が聞こえた気がした。


「……気のせいかしら」


 何か、聞こえた様な気がしたが、私は再び部屋まで歩く。

 部屋の、ドアを開ける。

 ドアは、かすかに軋んだ音を立てながら開いていく。

 室内は、夕方の前の青から色が変わってきている空が見える。

 私は、弓と矢筒を壁に立て掛け窓を開ける。

 心地よい、風が流れ込み私の髪がなびく。

 窓から眺める景色は、とても平和であり沢山の人があるき談笑している。


「人が消えているのが、信じられない程には平和ね」


 私は、部屋を出て鍵を締めると、宿屋を出て再び街を歩く。


 

 ♢


 宿屋から広場に出た私は、どうするか考える。

 空は日が傾いており、余り時間は無さそうだ。

 とりあえず、広場を歩く。

 最初、武器屋から出た頃よりは人が少なくなっている。


「……? あれは?」


 壁に貼られた紙が目に入る。

 私は、張り紙の内容を見る。


 [人を探しています。 情報は、教会又は王都兵にお願いします。 -王都セリオス大聖堂-]


 名前からして、教会が貼ったものだろう。

 行方不明者は、教会関係者と言うのを思い出す。

 私は、更に目を通す。

 探し人の名はセシリー・プレスコット。

 年齢23才と若い様だ。

 髪は茶色く肩までの長さの女性で、泣きぼくろ有りと記載されていた。


「……」


 彼女が、無事なら良いのだけど。

 一体、どこに行ったのだろうか? 王都のどこかに居るのだろうか? それとも――。

 張り紙を見ていると、後ろに気配を感じ顔を向ける。

 そこには、クラリーチェがいた。


「もう、広場に居たから驚いたぞ? まさか、広場から動いていないのか?」

「そんな事は無いわ。 腕自慢の勝負にかって賞金を貰ったわ。 貴女こそ、何か面白い話はあるかしら?」

「私か? 特には無い。 強いて言うなら、人間達の視線が凄かった位だ」

「まぁ、森に住む妖精が居たら、珍しがって見るわね」

「まぁ、確かにそうなんだけどな」


 私も、村を出てから視線を集めたりしたが、人間族と関わりが薄い種族は、その分目立ってしまう。

 そんな会話をしながら、クラリーチェは、私の前の張り紙を見る。


「そう言えば、その張り紙を見てた様だけど、何が書かれているんだ?」

「行方不明になった、人の情報が書かれているわ」


 私は、彼女に説明をする。

 この、王都で今起きている事を話す。


「なるほどな、夜は出歩くのは危険だな」

「主犯と思う奴も、話を聞く限りは人間やドワーフとは違う感じだし、不気味だわ」


 都民が話していた、暗闇で眼が光る生物なんて本当に居るのだろうか?


「まぁ、どんな奴が相手でも私なら返り討ちだけどな」

「……確かに、貴女は強いけど慢心は足元を掬われるわよ?」


 私は、忠告をする。 

 油断は、死に直結する。 虫と舐めていたら、毒虫だった……って、可能性もあるのだから。


「わかってるよ」


 クラリーチェはそう言うと、私の周囲を飛ぶ。


「なら良いけどね。 それより、宿屋に行きましょうか。 既に、受付を済ませてあるわ」

「早いな。 もう、済ませたのか」

「装備を、早く置きたかったしね」


 私達は、宿屋へと向かう。

 空は、青から赤に変わってきている。


 ♢


 夕方、私達は宿屋に戻る。

 今日は、色々とあった。 市場から始まり、路上での拳闘まで濃い1日だった。

 私は、受付カウンターを見る。

 カウンターは相変わらず静かで、受付には誰も見当たらず、ランプだけが輝いている。



「なんだ? 誰も居ないじゃ無いか?」


 クラリーチェは、周囲を見渡す。


「私も、最初は同じ事を考えたけど、人はいる感じね」

「そうか。 じゃあ、奥にいるのか。 それにしても、夕方とはいえ薄暗くて不気味な宿屋だな」

「確かにそうね。 まぁ、休めれば良いし気にしない様にしましょう」


 私は、無人の受付に目をやりながら、階段を登る。 階段の壁につけられているランプの他に、階段上の壁にせっちされている窓からの夕日によって、赤く染まっている。

 階段を登り終えて部屋まで歩く。

 部屋までが、薄暗くて奥がよく見えない。


「部屋は、1番奥よ」

「そうか。 早く、部屋でゆっくりしようか」


 クラリーチェは、奥に飛んでいく。


「そんな、急がなくても良いのに」


 私は、軋む木造の廊下を歩く。

 クラリーチェが、部屋の前に立って私を待っている。

 私は、鍵を準備する。


「――!」


 私は、歩いて来た方に顔を向ける。 今、誰かの視線を感じた。

 だが、壁のランプに照らされているにも関わらず、薄暗く長い廊下には誰も見当たらない。


「気のせい……かしら」


 廊下の奥は、ランプが消えており真っ暗で、吸い込まれそうな感覚になる。


「アリス、どうした?」


 クラリーチェが、私に声をかけてくる。


「なんでも無いわ。 それじゃ、部屋に入りましょうか」


 私は、ドアを開けて部屋に入る。

 クラリーチェも、後に続く。

 部屋は薄暗く、窓も開けたままになっている。


「すこし、寒いわね」


 私は、窓を閉めて椅子に座ると薄暗くなった外を眺める。 

 外は明かりが灯り出している。


「暗くなってきたし、灯りを付けようか」


 クラリーチェがランプに火を灯す。 淡い光が室内を照らし、小さな火が踊っている。


「凄いじゃない。 ランプの使い方を知っていたのね」

「それ、褒めてる?」


 クラリーチェが、睨んでくる。

 私は、火を見つめていると瞼が重くなり目を擦る。


「……歩き疲れかしら?」


 私は、体を伸ばした後にベッドに座ると少し目を瞑り深呼吸をする。


「眠いなら、そのまま横になれば?」


 クラリーチェが、椅子に座って私に声をかける。


「そうするわ」


 私は、横になり眼を閉じる。

 体が軽いと感じると思う中、意識が遠のく。



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